金融そして時々山

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本格的になりそうな相続学会の活動

2015年05月22日 | 相続

先日某大手全国紙の記者から、一般社団法人 日本相続学会事務局(つまり私)宛に、「相続法制改正について、配偶者を優遇する案にご賛成の有識者を教えて欲しい」という依頼があった。

相続法制については、現在法制審議会で議論が進められている。大きな論点は次の3点だ。

・被相続人の配偶者の居住権保護

・配偶者の貢献に応じた遺産分割の実現

・介護などの寄与分の見直し

このような議論が起きている背景には、主な遺産が自宅、という相続の場合、法定相続人が法定相続通りの遺産分割を主張すれば、残された自宅を売却して、売却代金を分割するケースが発生するからだ。この場合生存配偶者は住む場所を失うことになる。

高齢化に伴い、家族の介護負担が増えていることも「寄与分の見直し」の大きな背景だ。

これらの論点について、今のところ学会では論点を整理している段階で、結論は出ていないが、とりあえず「配偶者の居住権保護」支持者を推薦しようと考えている。恐らくその人の意見が新聞に報じられるとそこが議論のスタート点になるだろう。

この問題について私自身はかなり過激な「配偶者優遇策を取るべきだ」という考え方を持っている。ただし自分の意見が相続のあらゆるケースで公平なのか?どうかまで自信はない。多分に自分と自分の家族を前提とした意見、さらに普遍化しても「ちゃんと働いている子どもを持っているサラリーマン経験者の意見」というものだろう。

しかし世の中の家族は多様だ。自営業の方もいれば、親の財産をあてにしている子どもを抱える家庭もあるはずだ。

社会は色々な意味で多様化している。その多様化した社会と家族関係を民法だけでカバーすることは既に不可能になっているのだろう。

たとえば米国の相続法制をチラッとみると、州によりかなり差があるとはいえ、大部分の地域では配偶者は夫婦で形成した財産の半分ないし2/3を自動的に所有するという建てつけになっている。また子どもに法定相続権(当然遺留分はない)はないとされるので、もし「遺言」で、財産は全部配偶者に残すと言われると、子どもは一銭も受け取ることができない。

今話を分りやすくするため「遺言」と書いたが、正確には米国で「生前信託」という形で遺言が残されることが大半だと聞く。生前信託の方が遺言書より、執行が簡単だというのが最大の理由だ。

ところで遺言を残す人が7割程度と言われる米国でも、遺言なしで亡くなる人はいる。その場合どうなるか?というと、「検認裁判所」が数年かけて遺産分割を決めるそうだ。

日本の民法改正がどう進むかは分らない。ただし私はどのように改正されてもそれだけで総ての相続問題が解決するとは思わない。下手をすると話がより複雑になる可能性もある。

とはいえ、まずは色々なケースを考えながら意見を交換することだ。中々面白くなってきた。

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