金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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動物にも人間にも「ひま」は大敵

2015年08月09日 | ライフプランニングファイル

昨日(8月8日)夜BSプレミアムでスイス・チューリッヒの動物園を取り上げていました。この動物園ではオランウータンなどの繁殖が進んでいます。動物にとって住みやすい環境が整っているからです。興味深かったのは、各動物の飼育係りの人が動物がエサを食べるのに手間がかかるように色々な工夫をしている点でした。たとえばチンパンジーの場合、隔壁のある細長いケースにエサを入れておいて、チンパンジーが木の枝をケースの上から差し込んでエサを少しずつ出口に運んでいかないとエサが食べられないという仕掛けが施されています。

飼育係の人は「大切なことは動物を退屈させないことだ」と言っていました。「退屈させない」こはenrichmentと呼ばれていました。Enrichmentは濃縮、強化という意味ですが、このような場合にも使うとは知りませんでした。

飼育動物が簡単にエサを食べられるような給餌方法では、飼育動物は時間を持て余してしまいます。またエサを獲るために工夫・努力することが彼等の刺激になって生活に張りが出ているようです。

これは人間にも共通すると思いました。正確に言うと「ひまが大敵」という点で人間も他の動物も全く一緒なのだと改めて思いました。

ただ人間と柵の中の飼育動物の違いは、人間は「ひま」を「余暇」に変えることができる点なのでしょう。「余暇」にスポーツをしたり、旅行に出かけたり、本を読んだりすることができるから、遊び上手な人はひまを持て余すことが少ないと言えます。

「ひま」を持て余す人はとかく良くないことをする。中国の古典「大学」は「小人閑居して不善をなす」と喝破しました。不善に投機的行為や過度の飲酒などを含めると身に覚えがあり、耳の痛い言葉です。

「ひま」を作らないという上では禅宗の修行僧の暮らし方などは参考になると思います。朝早くから起きて掃除、食事の準備、座禅、托鉢、作務等ぎっしりスケジュールが詰まっているようです。ポイントは「座って考えたり、経典を読む」時間より、体を動かしている時間が長いという点でしょう。禅宗を開いた人たちは、「座って考えている」だけでは健全な思索には至らないことを知っていたのでしょう。

現代社会はお金を出せば何でも簡単に手に入る時代。コンビニエンスストアにいけば、すぐ食べられる食事が手に入ります。

だから「ひま」な時間が増えます。「ひま」を「余暇」やボランティアなどのために使うことができる人は時間を捻出して良いと思いますが、時間を持て余し気味の人は「ひま」な時間を作らない工夫が求められるのでしょう。素材から買ってきて、料理をする。さらには素地そのものを庭先やプランターで栽培するなどという手間をかけることが、生活に張りをもたらします。ということはそれらの活動が人間のenrichmentなのですね。

 

 

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