「ファクトフルネス」はマクロな人口動態について目を開いてくれる。そしてそれは私が常々多少疑問を感じているネパールでのボランティア活動に何かを考え直すヒントを与えてくれる気がし始めている。
「ファクトフルネス」によると20世紀は「人類はあるバランス体系から次のバランス体系への移行時期」だった。
あるバランス体系とは1900年までの数千年の期間人類が「夫婦が6人の子供を産みその中の2人が成人した(他の4人はその前に死んだ)」体系を指し、次のバランス体系とは「夫婦が2人強の子供を産みその子供がほとんど死ぬことなく成人する」体系を指す。
1900年以前のバランス体系下で人類の総人口は15億人で安定していた。それが現在では76億人に達している。これはバランス体系の移行時期に出生率は落ちないが医療の発達などにより、幼児死亡率が低下した時期があり人口が急増したからだ。
ではこれか世界の総人口は伸び続けるか?というと発展途上国を含め全世界的に出生率が低下しているにも関わらずしばらく人口は増え続ける。だが2100年ごろには世界の総人口は100億人~120億人レベルで安定期を迎えるそうだ。
さてこのようなマクロな人口動態とネパールでのボランティア活動である。
我々のボランティア活動というのは、自力で小学校を建設できない村に校舎を寄贈することだった。活動は20数年前に始まった。数年前私が初めてボランティア活動でネパールに行った時、先輩から「村に行ったら子供たちがハダシで走り回っていまっせ(関西弁)」と言われていた。
ところが実際にネパールの村に行くとハダシで走り回っている子供はほとんどいない。皆靴かサンダルを履いている。靴やサンダルを履くことで足を傷つけることが減り、ばい菌に侵される可能性も低下しているようだ。ところが先輩の頭の中からは20数年前の超貧しかったネパールの山村のイメージが払拭されていなかったようだ。
私は現地の人に出生率について聞いてみた。すると最近では子供の数は二人位が多いという。ネパールやインドについては子供を沢山生んで農作業を手伝わせるというイメージを持っていたが、これまた今では幻想のようだと私は感じた。
ボランティア活動の中では女性陣が作った布製の手作りカバンを子供たちに無料配布するというものもある。私もカバンを持って小学校を回ったことがあるが、1,2年生の児童の間ではカバンは歓迎されたが、高学年になると敬遠された。昔は日本の布製カバンというと貴重だったかもしれないが、今では高学年になるとナイキなどのリュックサックが流行していて、手作りカバンはまったく人気がないのだ。
以上の二つのことはボランティア活動を行っている人の認識が昔の経験に留まり、現在のニーズをとらえていないことを示唆していると思われる。
詳しい調査を行っていないが、山村の学校校舎に対する需要も変化しているようだ。これは2015年のネパール大地震の後、村を捨ててカトマンズなど大都会に移住する人が増えていることや少子化で子供の数が減っていることが原因だ。
少子化は数少ない子供への教育投資の増加の増加を意味する。つまり子弟の高学歴志向により高等教育機関がもっと必要になってくる。
だがそうなると規模の小さいボランティア団体単体では支援を行うことはできない。
人口動態の変化は学校支援というボランティア活動の活動内容の変化を促す可能性がある。
もしそのような環境変化にボランティア活動が対応できずに昔のままの活動を行っているとすれば、それは与える側の自己満足に留まってしまう可能性なしともしない・・・