昨日(4月25日)ファクトフルネスを読み終えた。著者ハンス・ロスリング氏の後書を読んで、改めて著者がすい臓がんに侵されながらこの本を通じて世界の読者に伝えたいことの重みをひしひしと感じた。
著者がまず伝えたいことは「10の本能的判断により事実をゆがめて認識することを避け、世界をありのままとらえよう」ということだ。
10の本能的判断というのは、例えば問題が起きた場合深く分析せずに誰かに責任を押し付けるといった「責任押し付け本能」である。
ロスリング氏は明示的には述べていないが、これは概ね思考モードのシステム1に相当する。システム1は直観による情報処理なので脳が疲れない。一方システム2という情報処理は分析的で時間がかかり、脳が疲れる。
人は日常的なことにはシステム1を使い、重要な判断ではシステム2を使っている。ロスリング氏の説明を自分なりに補足すれば、世界を取り巻く問題は極めて重要な問題なので、システム1による直観的な判断ではなく、システム2による分析的な情報処理を行え、ということだ。
世界を取り巻く問題とはどのようなものだろうか?
ロスリング氏は「世界的な疫病の伝染」「金融システムの崩壊」「世界大戦」「気候変動(地球温暖化)」「超貧困」の5つを最も懸念するリスクとしている。
統計学を学び医者でもあったロスリング氏はこれらのリスクをデータに基づき分析的に考えならかつエボラ熱の感染拡大を防ぐためにアフリカで奮闘した。まさに知行合一の生き方だったと思う。
この本を読んだ我々もまた微力ながら世界の一隅でこれら5つの大きなリスクを少しでも緩和してより良い世界を作るために努力を続けることが大切なのだろう。
そしてそのような努力を続けている自分を感じることが直観的(あるいは情動的)判断に身を身を委ねてきた自己を多少なりとも覚者への道に方向転換することにつながるのではないだろうか?