ソフトバンクの孫氏がビットコイン投資で1億3千万ドル(145億円)の損失を出したというニュースが日経新聞などで流れているが、元ネタはWSJである。
145億円というと普通のサラリーマン40~50名の生涯賃金に匹敵する額なので大変なことだが、個人資産2兆円超と言われている孫氏にとっては1%弱なので大した痛みはないのだろう。むしろWSJが述べるように「孫氏はほとんど気が付かないだろうが、この投資の失敗は彼の辛抱強くかつ予言力があるという名声を傷つける」ことの方がダメージだろう。
WSJによると、孫氏は2017年2月に買収したフォートレス・インベストメント・グループの共同経営者ブリガー氏の勧めで2017年後半にド高値でビットコインを買った。ビットコインは2017年12月中旬には2万ドルまで急騰したが、その後急落した。急落後孫氏はビットコインを売却したが145億円の損失を出した。
ソフトバンクはコメントを差し控えているが、WSJは「世界で最も洗練されたそして最も富裕な投資家の一人といえども過熱マーケットには捕まることを示している」と述べている。
まあ、このあたりは常識的なコメント。私はむしろ孫氏が素早く損切りしたことを褒めても良いのではないかと思う。人間の将来の予測には当たり外れがあるものだ。予想が外れた時に損切りできるかどうかが一流とそれ以外の分岐点なのだ。
ところでWSJの記事を読み進むとソフトバンクが買収した米国第4位の携帯電話会社スプリントの苦境が浮かびあがてくる。
先週WSJは「スプリントと第3位の携帯会社T-Mobileの合併話について米司法省が異議を唱えている」と報じている。合併は競争原理を脅かしかねないという理由だ。
合併を希望するスプリントは提出書類の中で「スプリントは非常に困難な状況にあり状況は悪化の一途である。スプリントは持続的に競争を続けられる状況にはない」と述べていた。
以下は私の全くの推測であるが、WSJの記者はスプリントの合併問題を追いかける中で孫氏のビットコイン損失問題を嗅ぎつけたのではないだろうか?
そして予知能力のあるスマートな投資家といえど仮想通貨で大きな損失を出したように携帯電話会社でも損失を出す可能性があると言いたかったのかもしれない。無論T-Mobile・スプリントの合併話がどうなるか分からない中でそのような憶測を書く訳はないが。