日本は面白い国である。
世界最大の紙幣流通国であると同時にコンビニのレジの自動化で最先端を走ろうとしているからだ。
下のグラフはBISのデータに基づきWSJが作成したもので、GDP対比での通貨流通量で日本はダントツの世界一。
2番目はインドだが、そのインドでは先月上旬モディ首相が高額紙幣の廃止を宣言し、混乱が起きている。インドでは高額紙幣は脱税・汚職などの温床になっていたと見られていた。使用不可になる高額紙幣は年内であれば、銀行に預けることができるので、インド政府の狙いはアングラマネーを銀行システムに取り込むことである。
日本ではパナソニックがローソンと協同でコンビニ・レジの自動化に関する実証実験を開始したことが昨日ニュースになっていた。
記事によると「購入した商品の金額計算」と「袋詰め」が完全無人化されることは分かったが、支払をどうするか?という点は読み取れなかった。
少し前にアマゾンが実証実験を開始したAmazon Goでは決済はスマートフォンのアプリを通じて自動的に行われるのだが、パナソニック・ローソンはどうなっているのだろうか?
推測でものをいうと、支払については電子マネー決済以外に現金払いも受け付ける(自動化されると思うが)のだろうと思う。
日本ではまだまだ現金支払いを選好する消費者が多いからだ。街で見る限り若い人が電子マネーの力をフルに利用しているとは思われない。
時々バスに乗ることがあるが、見ているとSuicaやPasomoのチャージ漏れで乗車口で千円札を出してチャージしている若い人を見かける。こんな人が増えるとバスの運行時間に影響するので全くスマートでない。
日本でも高額紙幣が一部の犯罪の温床になっていることは間違いない。それは振り込め詐欺の手口の一つとして、現金をゆうパックで送らせたり、犯人に手渡しさせる方法が流布しているからだ。
もっともこのことが日本で高額紙幣を廃止するほどのインパクトを持っているとは思えない。基本的には銀行ATMからの送金ルートが振り込め詐欺の最大の手口だからだ。
日本の1万円に相当する100ドル紙幣を米国内で目にすることは少ない。昔小売店で100ドル紙幣を提示すると受け取りを拒否され小切手で支払ったことがあった。100ドル紙幣は偽札が多い上、一般的にはあまり使われないので、敬遠される傾向があった。
小切手取引が普及していない日本で1万円が消えることは予想し難い。
しかしコンビニやスーパーのレジが自動化し、支払も電子マネーやクレジット払いが一般的になると高額紙幣の流通量は減っていく可能性は高い。
コンビニやスーパーのレジの自動化は現金払いをカード払いに完全に切り替えることで完結すると思うのだが、流通業界の取り組みはどのようなものだろうか?
電子マネー払いやカード払いを促進する方法は簡単だ。それはポイント還元やキャッシュバックのインセンティブを高めることである。
私は電子マネーは高齢化社会に優しい支払い手段だと思っている。歳をとってくるとレジやバスの入り口で、財布やポケットの中から小銭を探し出すのが面倒になってくる。そこで紙幣を出してお釣りを貰っていると手間がかかるし、財布やポケットが小銭でパンパンになってくる。
その点オートチャージ付きの電子マネーは手軽でスマートだ。
インドなどでは犯罪撲滅が高額紙幣廃止のドライバーになったが、日本ではスマートシニアが高額紙幣削減のドライバーになるのではないか?と希望的な観測を私は持っている。ただし客観的に見るとシニア層の現金指向は強いので、流通業界がよほど思い切ったキャッシュレスペイメントのインセンティブをつけない限り、電子マネー払いは普及しないだろう。
もし流通業界がキャッシュレスペイメントの促進に強いインセンティブを持つとすれば、労働力不足によるキャッシャー確保に悲鳴を上げる時だろう。
米国では2014年から2024年の10年間でキャッシャーの雇用は2%しか伸びないと米国の労働統計局は推測している。全産業の雇用は7%伸びると予想されるのだが。
世界トップクラスのハイテク技術を持ちながら、労働力不足と超高齢化社会に直面する日本の問題を解決する小さな具体策の一つがキャッシュレスペイメントの促進だと私は考えているのだが・・・・