金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「三菱UFJ、全米でネット銀」を読む

2017年02月24日 | ニュース

今日(2月24日)の日経新聞朝刊の記事の中で注目したのは「三菱UFJがインターネットバンキングを使って全米で個人向け金融サービスを始める」という記事だ。

キーワードは「米国」「個人」「インターネットバンキング」だ。

三菱UFJは営業純益の35%ほどを海外部門であげている。その中の約半分は米国からのものだ。人口減少やマイナス金利政策で本邦内では収益をあげ難くなっているので、持続的な成長が期待できる米国市場の重要性はますます高まっている

しかし原材料である「ドル預金」の獲得は十分とはいえず、重要な経営課題になっていたはずだ。

米国で企業からドル預金を集めることは容易ではない。そこで目を付けたのが、子会社ユニオンバンクの銀行免許を使ったネットバンキングの展開だ。

その背景には米国ではスマートフォンを使ったモバイルバンキングなどインターネットバンキングが徐々に拡大していることが上げられる。モバイルバンキングと個人金融取引は親和性が極めて高い。

三菱UFJの動きは他のメガバンクを刺激し、他のメガバンクも米国事業を一層強化するだろう。そのため国内のリスクアセットを削減する動きも高まる。たとえば三井住友ファイナンシャルグループが傘下の関西系地銀をりそなに売却する(大雑把な表現だが)のもこの文脈の中にある。

「風が吹けば桶屋が儲かる」の論法でいえば「トランプ政権が米国の経済成長を加速させると、メガバンクの米国事業ウエイトが高まり、地方金融機関の再編が加速する」可能性が高いのである。

そして再編過程でインターネットバンキング等ローコストオペレーションにどれほど真剣に取り組むかで収益構造が変わっていくのである。

 

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米国株上昇のエンジン、減税はバリュエーションを裏書きできるか?

2017年02月24日 | 投資

昨日の米国株市場はダウが10日連続で続伸したものの、ナスダックは25ポイントダウン。S&P500は微増にとどまった。

ムニューチン財務長官は記者会見で8月までに税制改革を実施し、トランプ政権は3%あるいはそれ以上の経済成長を目指していることを明らかにした。FRBや議会予算局の成長見通しは1.8%だから3%というのは極めて高い数字だ。

トランプが大統領に選ばれて以来、米国株は上昇相場が続いている。大型減税・インフラ投資等ビジネスフレンドリーな政策が好感されているというのが大方の見方だが、足元の企業業績も好調だ。

FactSet社によると、S&P500構成銘柄の第4四半期の収益は前年同期比4.6%の増益で、2016年通期でも前年比増益となる見込みだ。また今年は10%来年は12%の増益が見込まれるという。

もっとも現在のS&P500の予想ベースPERは17.6倍で過去10年以上の中で最高になっている。これは税制改革やインフラ投資などの景気刺激策の実施を織り込んだ数値なのだろう。

仮にムニューチン財務長官が述べるように、米国が3%の経済成長時代に入るとすれば、連銀は政策金利引き上げのアクセルを踏むことになる。とすればトランプ大統領が何をつぶやこうともドル高になることは間違いないだろう。

昨年11月の大統領選挙以降日本の個人トレーダーのドル円証拠金取引が3割方増加しているという。私は現在証拠金取引は行っていないが、米国株はロングポジションを増やしている。

トランプ政権は米国企業業績を押し上げるとともに日本の投資家にも恩恵を与える可能性がある。もっとも減税等の景気拡大策が実施されれば、という条件付きではあるが。

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空き家増加の中で、新築住宅が増える不思議さ

2017年02月23日 | ニュース

昨日の日経新聞(夕刊)によると、28日に発表される1月の新規住宅着工件数は市場予想では前月を上回るということだ。前月を上回るとすれば、7カ月連続のプラスとなる。

昨年1年間の新規住宅着工件数は96万7千戸で3年ぶりの高水準だった。新築物件が増える背景には、低金利の持続と資金運小先に苦しむ金融機関の超積極的な住宅ローンやアパートローン貸出攻勢がある。相続税対策から更地にアパートを建てる人が増えていることも着工件数増加の一因だ。

米国などでは景気先行指標として注目される新規住宅着工件数。着工件数の増加は景気上昇の兆しとして好感されるが、果たして日本でも同様に考えてよいものだろうか?

日本では住宅ストック数(約6,060万戸)は、既に総世帯数(約5,250万戸)を15%以上上回っている。その結果空き家の数は820万戸に達している。撤去される空き家の数は年間10万戸程度と推定されるので、高水準の新規着工が続くと、年間80万戸以上の住宅が純増することになる。

野村総研は約15年後に空き家の総数は、2,170万戸に増加し、空き家率は30%を超えると推計している。このような推計は大規模な天災や戦争がない限り、ある範囲で当たる確率が高い。

空き家が3割にあると言っても全国一律に「3軒に1軒空き家がある」という状態が発生する訳ではない。大都市の交通便利な県内では比較的空家率は低い状態が続くだろう。しかしその分大都市郊外や地方では深刻な空き家問題に直面する。

空き家の増加は地区環境の悪化につながり、当該地域の物件価値を低下させ、物件の市場性を悪化させるという負のスパイラルを生む。

それは行政コストの増加とともに、個人にも国にとっても確実に負の財産になる。

空き家問題については国交省等が施策を講じ始めているが、国全体としては、政策の整合性が全くとれていないと思う。

空き家を減らすにはまず新築物件を抑えるような政策を取るべきなのだ。具体的には「借家を建てると相続税の評価額が大幅に安くなる」といった税制を改正するべきなのである。

日本では新規住宅着工件数はプラスの経済指標ではなく、長期的な経済破綻を示唆する不安指数ではないか?と私は考えている。

 

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【イディオム】Red ocean 過当競争から関西第2地銀が統合へ

2017年02月21日 | 英語・経済

Red oceanは血を血で洗うような激しい価格競争が行われている既存市場のことだ。

Nikkei Asian Reviewはred oceansというサブタイトルで、関西地区の苛烈な銀行間の競争を紹介していた。

報道によると三井住友銀行とりそな銀行は、3月末までに基本合意に達し、両行が出資する共同持ち株会社の下に三井住友系の関西アーバン銀行とみなと銀行、りそな傘下の近畿大阪銀行をぶら下げる案が有力なようだ。

関西地区の地方銀行は1955年の21行から10行に減少しているが競争は苛烈だ。特に地元で貸出先の少ない和歌山の紀陽銀行、京都銀行、島根の山陰合同銀行などが、泉南地区や兵庫県に進出しているので、競争は一層厳しくなっている。

全国的に見ると昨年4月―12月間で上場地銀の内7割が減益となった。減益は人口減少という構造的要因による部分が大きいが、日銀のゼロ金利政策も打撃を与えている。

またAsian Reviewは「トランプ大統領当選以降米国金利が上昇し(米国債価格は下落)、米国債に投資していた地銀が痛手を被った」ことも指摘している。

ドルをマザー通貨とする米国では金利上昇は銀行の利ザヤ改善ということで、大手銀行株は上昇基調が続いているが、日本の金融機関は痛手を被っている訳だ。

仮に3行が統合すると資産規模は11.6兆円に達し、強力なライバルの京都銀行等を抜き、資金量第6位の銀行が誕生することになる。

しかし資金量が増えただけでは、厳しい競争を生き抜くことはできない。当然人員削減やその他経費の削減が迫られる。これからも血の海Red oceanは続くのである。

ところでRed oceanの反対語はBlue ocean。こちらは競争の少ない新規市場を指す言葉だ。海外に資金運用チャンスを持つメガバンクにとっては海外市場はBlue oceanと言いたいところだろうが、こちらも競争は厳しい。

競争相手は伝統的な銀行とは限らない。フィンテックを掲げる新たな業態との競争もあるからだ。関西の第2地銀統合は今後日本の金融界で起こりそうな統合のプレリュードに過ぎないだろう。

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手間のかかる「ゆうちょ」の無通帳化から考えた

2017年02月20日 | 金融

あまり使わない「ゆうちょ」のネットバンク機能だが、ちょっと残高を確認したくなり、ログインしてみると無通帳化のキャンペーンを行っていたので、切り替えることにした。

画面の指示に従って入力を進めたが、行きどまってしまった。それは「トークン」の発行手続きをしていなかったからである。トークンと聞いてすぐ分かる人はネットバンキングに慣れている人か米国等で地下鉄に乗ったことのある人だろう。

トークンTokenは印という意味の他に運賃支払のために使う代用通貨という意味がある。それが転じて「送金用パスワード発生器」という意味で使われているようだが、トークンのままで分かる人は多いとは思わない。パスワード発生器と日本語で書いた方が分かりやすいと思うのだが。

それはそうとトークン発行を申し込んだが、送られてくるのは3週間ほど後とのこと。上記キャンペーンには間に合わない。抽選で2千円があたるというが、当たるのは5千名なので仮に間に合っていても当たるかどうか疑問ではある。

無通帳化は銀行にとって通帳発行コストがなくなるので、抽選などとケチなことを言わずに、無通帳化する人に一律「通帳2冊分」程度のキャッシュバックをしても罰は当たらいと思うのだが如何なものだろうか?

そしてもう少し無通帳化手続きを簡単にできないものか?と考えてしまった。

私事ながら少し前に某ネット専用銀行の依頼を受けた広告代理店から頼まれて、モバイルバンクの将来性について見解を述べたことがある。

私が言ったことは「マイナス金利など資金運用環境が厳しい中、海外運用手段が限られている地銀等の収益環境は厳しい。店舗や通帳発行コストがない分モバイルバンクは有利といえる。ただし現在PCからネットバンクを利用する人は6割ぐらいいるがスマートフォンからネットバンキングを利用する人は2割程度。将来スマートフォンがPCを代替するほど使われるようになる時がくればモバイルバンクは拡大する。その時の決め手は本人認証の安全性の高さと簡便さのバランスだろう」ということだった。

偶々今日関西系第2地銀3行が統合するというニュースが流れた。銀行が統合する場合の事務的なハードルは通帳の統合にある。それは各々の銀行により通帳の仕様が異なっていることが多く、端末の印字システムを変更する必要があるからだ。

この際統合する銀行が思い切って普通預金等の無通帳化に踏み切ると面白いと思うのだが、如何なものだろうか?

金融機関の目線でいうと、無通帳化が進んでも、通帳利用者が少しでもいる限り、コスト削減効果は限界的だ。なぜならATMや端末に通帳記帳機能を残さないといけないからだ。現在無通帳化はネットバンキングとセットになっているケースが多いと思うが、「ネットバンキングはやらないが通帳をなくしても良い」という預金客はいるかもしれない。個人口座数は少ないが当座預金は元々無通帳で銀行が月1回異動明細を顧客に送っている。同じ方法を取れば、ネットバンキングを希望しない顧客の無通帳化も図れないことはないかもしれない。

このような無通帳化は顧客の利便性を損なうものという声も聞こえそうだが、日本以外の国では無通帳は一般的だ。無通帳化のコストメリットを銀行が享受するだけでなく、送金手数料等各種の手数料を引き下げることで、顧客メリットを訴求すればある程度納得性のある話だと思うのだが如何なものだろうか?

 

 

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