ワード・エクセルといった定番アプリケーションとメール・予定表を担うOutlook、それに社内やグループ内のコミュニケーションを担うTeamsやSharePointを統合したマイクロソフトのサービスはMicrosoft 365の名前で広く企業で使われています。
特に新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い、テレワークが増えたことなどから365を導入する企業が増えていると思います。
私の顧問先でもメールプロバイダーのサービス打ち切りに伴い、メールサーバをExchangeに変えて、合わせてMicrosoft365の本格的導入を図ることにしました。
ところで365導入のため、1年位前にサービス内容を調べたことがあるのですが、その時の記憶ではSharePointという一種のデータベースを使って、「社内の決裁や事務の流れをデジタル化する」ワークフローの構築が一つの売りだったのですが、最近の解説本を見るとTeamsというチャット・オンライン会議システムやOneDrive for Businessというオンラインストレージ機能が目玉商品として、全面に出てきているような気がしました。
推測するに私は主に3つの要因で、提供サービスの打順が変わっていると考えています。
第1に新型コロナ対策で、リモートワークを始める企業の裾野が急拡大したことがあると思います。これらの企業の中にはコンピュータネットワークに不慣れな先もあるでしょうから、SharePointのようにやや手間がかかる機能は敬遠して即効性の高いチャットやオンライン会議から利用しようというニーズが高いと思います。
第2にZoomやSlackとの競合です。ビデオ会議のZoomやチャットのSlackは単品サービスを提供しています。
リモートワークでビデオ会議やチャットが脚光を浴びたので、Teamsの打順をあげた面があると私は考えています。
ZoomやSlackとマイクロソフトの関係は例えていうと、サイズの決まった固定スパナとフリーサイズのモンキースパナのようなものではないか?と私は考えています。つまりMicrosoft365は色々な機能があってそれなりに便利なモンキースパナだけれど、ボルトを締める点では単品のスパナにかなわないということです。
第3の理由としては、日本の企業は決裁ルートが複雑でSharePointのような汎用ツールでは、ワークフローの構築が困難だ、ということが考えられます。
Microsoft 365が生まれた米国では決裁ルートは単純で階層もそれ程多くありません。権限移譲が進んでいるので、担当者はボス(直属上司)のOKを貰うとほとんどのことが完結するという仕組みなのですが、日本ではそうはいきません。関連部署への協議があったり、中間決裁者からの差し戻しがあったりと大変です。そんな複雑なワークフローを作っても日本以外ではまず需要がありませんから、マイクロソフトはSharePointにそこまでの対応力を持たせていません。
ということでおしゃべりやテレビ電話を担うTeamsは格が上がり、ワークフロー構築などを担うSharePointの立場は少し弱くなったのではないか?と私は考えています。