本日(6月11日)発表されたデータによると、中国の5月の輸出は前年同月比26.4%減少した。4月の輸出は前年同月比22.6%下落だから下落幅は拡大している。一方輸入の下落幅は輸出より若干少なく、前年同月比25.2%の下落だった。
このデータについてファイナンシャル・タイムズはCITIC証券のエコノミストの分析を紹介している。「世界経済は底打ちしたが、回復には時間がかかる。私は回復には1年から3年程度時間を要すると思う」
一方中国経済についてみると、輸出依存体質が批判されてきたが、輸出依存度が低くなってきたことがデータからも分かる。国家統計局の発表によると道路、工場等の固定資産投資は今年の5ヶ月間で前年同期比32.9%増加している。ニューヨーク・タイムズはゴールドマン・ザックスのSongエコノミスト氏の推計を紹介しているが、それによるとインフレ調整後で5月の固定資産投資は昨年同月比5割増。これは史上最大の伸びだ。
中国のメディアによると今週金曜日に発表される中国の5月の小売売上高は15.2%の増加となる見込みだ。小売売上高を牽引している一つの要因は政府補助金のおかげで売上が伸びている自動車だ。今の瞬間は中国は米国を抜いて、世界最大の自動車販売台数を誇っている。
中国の内需拡大は世界のコモディティ価格を押し上げている。コモディティ価格の上昇はコモディティ価格と相関性の強い豪ドルを上昇させているので、豪ドルロングに賭けた個人投資家の中には一儲けした方もいるだろう。
今中国は色々な目的から原油、鉄鉱石、大豆などのコモディティの在庫を積み上げている。積み上げている理由について私は中国政府の景気刺激策としてのインフラ投資などを見越して、政府や民間企業が在庫積み増しを図っているのではないか?と考えている。
だが中国の在庫積み増しによって、活況を呈したアジア・欧州の鉄鋼・卑金属業界についてムーディーズはネガティブな見方をしている。曰く「中国の戦略的な在庫積み増しと品質の低い国内製品を品質の高い輸入製品に置き換える動きはここ数ヶ月の卑金属のラリーを牽引してきたが、米国・欧州・日本等の主要経済圏が景気回復するまで需要の持続的な好転を見ることはないだろう」
中国の内需拡大策は無論歓迎するべきものであるが、息切れを起こす前に先進国経済が回復軌道に乗るかどうかが課題だ。今の株式市場はファンダメンタルを越えてやや上昇速度が速いと見ているので、中国経済の持続性は気になるところだ。