今日(6月12日)の日経新聞朝刊に投資信託に関する二つの記事が出ていた。一つは一面に出ていた「投信への資金流入5千億円」という記事。5月の資金流入額は5,049億円と1年5ヶ月振りの高水準ということだ。株式相場のラリーは3月頃から始まった。この時は相場が底に近いと信じたボトム・フィッシャーや短期の鞘取りを狙った投機筋がメインプレーヤーだったが、堅調な株式相場を見て個人資金が流入し始めたようだ。ただ相場の上昇速度が速すぎるので、少しコレクション(水準訂正)があるだろうと私は見ている。
もう一つの記事は「個人投資家は今」という囲み記事の中にあったセゾン投信が運用・販売する「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」が07年3月の設定以来27ヶ月連続で資金流入が続いているという記事だ。今日の本題はこちらの方。私もファンド設定以来毎月給料の5%程度を自動積立方式でこのファンドの投資にあてているので、このファンドのことを少し説明してみたい。
まず設定以来のパフォーマンスである。設定以来の基準価格の騰落率は5月末現在でマイナス25.7%。もし設定時にこのファンドを買ったしたら4分の1損失を抱えているということだ。損失の一番の原因はドルとユーロが対円で下落したこと。設定時のドル円為替が117円でユーロ・円が155円だからドルが約18%、ユーロが約13%円安になっている。
だがこれは設定時に総ての投資を行った場合の話で、毎月一定額の投資を続けると円高の時(例えば今年1月末のドル円為替レートは89.55円)に投資を行うこともあるから、為替の平均持ち値は設定時から低下している。この結果私の場合、このファンドの騰落率はマイナス5%程度となっている。この程度であれば為替が少し円安に振れるとプラスに転じるレベル(無論円高に振れると損失が拡大するが)と見ておいて良いだろう。また世界的な株式市場のラリーが続くとすると遠からずプラスに転じるという予想も成り立つ。
損失を抱えながらもこのファンドを推奨する理由は「不確実な時代は分散投資に限る」という信念があるからだ。株と債券の分散。さらに地域・通貨は米国、欧州、日本に分散する。このファンドは為替ヘッジを行わないので為替リスクはある。だが為替リスクを取るか為替リスクを回避して日本にとどまり、高齢化で活力を失う日本経済のリスクを取るかという究極の選択を選ぶなら私は前者の方が良いと判断しいてる。
このファンドは株式と債券に対する資産配分を50:50として、株式の半分弱を米国のパッシブ・ファンドに3割弱を欧州のパッシブ・ファンドに、残りを日本株や新興国株式に投資する。債券については米国4割、欧州4割弱、日本国債2割弱という資産配分だ。
このファンドの良い点は「ノーロード(販売手数料がない」「信託報酬が0.77%と低い」「信託財産留保額が0.1%と低い」点だ。また上記のような資産配分を概ね維持するので、自動的にリバランスが行われる点だ。リバランスとは債券・株式の時価が変動して、当初定めた資産配分比率から比率が変わった時、配分比率を上回った資産を処分して配分比率を下回る資産を取得することだ。こうすることで自動的に割高の資産を売却して利益を確定しながら、割安の資産を買うことができる。
まあ、余程資産運用が好きで自信のある人でない限り、この手のグローバル・バランス・ファンドを毎月購入するというのは長期的に資産形成するのが良いだろう。人生には資産運用以外にやるべきことが沢山ある。また資産運用の世界に絶対に儲かる方法がないことを考えると運用コストをできるだけ抑えた世界分散投資は、ベストかどうかは分からないがベターな方法であることは確かだろう。