金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

酒は百薬の長、ほんとなの?

2009年06月17日 | うんちく・小ネタ

タバコは健康に悪いが、適量の酒は体に良いということはかなり多くの人が信じるところだろう。だが今日読んだニューヨーク・タイムズにAlcohol's good for you? Some scientists doubt itという記事が出ていた。「酒は百薬の長? 科学者の中には疑問視する人もいる」という話だ。かなり長い話なのでが、結論からいうとまだ決定的な結論は出ていないということだ。この記事を読んで印象深かったことが二つある。一つは「広い世界の中には色々なことを真剣に研究する人がいるのだなぁ」ということ。もう一つは「因果関係と相関関係の区分は難しいなぁ」ということだ。

酒と健康の相関関係が最初に発表されたのは1924年のこと。ジョン・ホプキンス大学のレイモンド・パールという生物学者が飲酒量と死亡率についてU字型のカーブを発表した。U字カーブの両端には大酒飲みと酒を飲まない人がくる。真ん中は適度にお酒を飲む人。このU字カーブは大酒飲みと同様お酒を飲まない人の死亡率も適度にお酒を飲む人より高いことを示している。その後の研究も同様の結果を示しているということだ。

ところが最近これらの研究成果に対して批判があがっている。批判者は「酒を飲まない人」の選択に問題があるという。つまり「酒を飲まない人」の中には「以前酒を飲んでいたが心臓病等の理由で飲酒をやめた人」や「高齢化して飲酒をやめた人」が含まれている可能性があるというのだ。

また「適度に酒を飲む人の集団」と「酒を飲まない人の集団」では人々の性格が異なるので、比較はできないという批判者もいる。「適度に酒を飲む人」はより健康でより豊かでより教育水準が高くより良い医療サービスを受け、さらには歯もそろっている。そして「適度にお酒を飲む人」は社会的に有利な立場にいる。

別の言い方をすると「適度にお酒を飲む人」は「健康な人」と同じ傾向を持つということで、そこには相関関係はあるが、お酒を飲むから健康だという因果関係は見出せないという訳だ。

なるほど。適度な飲酒を楽しむ人はヘビードリンカーと違って他にやることがあるから、お酒を節制することができる。また健康であるから適度にお酒を飲むことができるという訳だ。ということで酒が百薬の長であるかどうかを科学的に証明することはかなり大変ということだ。

ところで酒というと若山牧水の次の短歌を思い出す。

世の中に楽しみ多ししかれども酒なくしてなんの楽しみ

一升酒を飲み続けた若山牧水は肝硬変のため43歳でこの世を去った。楽しみのもとの酒を長く飲み続けるにはやはり適度に飲むということが必要なのだ。

私の好きな牧水の酒の歌に「考えて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏の夕暮」という歌がある。少し涼しくなった夏の夕暮れにチビチビを飲む酒は美味い。結局牧水はこの日も二合で酒を止めることはできなかったのだろうか?などと私は答のでない問いに想いを巡らしている。

コメント
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