金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

シマノ、走る

2009年06月30日 | 株式

個別株の話はあまりブログに書かないが、例外的に自転車部品メーカーのシマノについては今年の2月に「走れ!シマノ」という題でシマノを推奨した。世界的な株安は優良銘柄を購入する絶好のチャンスだったからだ。そのシマノが走っている。当時2800円程度だった株価は1000円上昇し、3800円まで上昇してきた。今日の日経新聞朝刊の「時価総額、相次ぎ逆転」という記事では「自転車部品のシマノが二輪車メーカーのヤマハ発動機を(時価で)しのぐのは、消費者の環境意識や低価格志向の高まりを映す」と紹介しれていた。もっとも環境意識の方は良いとして「低価格志向」の方は的外れな評価だろう。

シマノは「自転車のマイクロソフト」と呼ばれる自転車部品では世界的な寡占メーカーだが、低価格商品を作っている訳ではない。かって競技用自転車のパーツはカンパニヨーロというイタリアのメーカーが独占していたが、シマノ製品がツール・ド・フランスを連覇して以来シマノは品質と価格で優位に立っている。価格で優位に立っているとはいえ、競技用のシマノの部品は安いものではない。「低価格志向」でシマノが売れるのではなく「高品質志向」でシマノは売れるのだ。

昨日テレビのニュースを見ていたら「オランダの強豪チーム・スキル・シマノから日本の北京五輪代表の別府選手がツール・ド・フランスに出場する」と報じていた。スキル・シマノが活躍すると、シマノの株価もまた上がるかもしれない。もっとも短期的な値上がりを狙う人からみるとシマノのような株は地味な株だ。自己資本比率8割で抜群のシェアを持つシマノのように安定した企業の株は、短期的にそれ程高騰するものではない。しかし環境と健康志向のクロスロードに位置するシマノは確実に成長を続ける優良企業であり、株価も着実に伸びるだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界同時不況よりも深刻な高齢化問題

2009年06月30日 | 社会・経済

6月25日のエコノミスト誌は「現在の世界同時不況よりも高齢化による財政悪化の方がはるかに深刻」というIMFの報告を紹介していた。IMFによると今回の不況対策でG20の財政状況は2008年にGDP対比で8%悪化する。しかし2050年まで視野を広げると、今回の経済危機による財政悪化は高齢化の影響の1割に過ぎないという。

現在世界の69億人の内、60歳以上の人は11%弱だが、2050年には90億人に拡大する世界の人口の22%が60歳以上になっていると予想される。先進国に限れば3人に1人は60歳以上だ。エコノミスト誌のグラフを見ると、高齢化がGDP対比で財政赤字に与える影響が最も大きいのは、スペインで米国、英国、ドイツと続き意外なことに日本が一番少ない。どうしてスペインや米国の影響が大きく、日本の影響が小さいのか説明はないが「日本ではある程度公的年金等の事前積立が出来ている」ということなのだろうか?それとも日本の公的年金の水準が低い(先進国で2番目に低いという記事を最近見かけた)ので、公的負担が少ないということだろうか?

その少ない日本にしてもIMFの予想によると、2050年まで支出の現在価値の合計をみると、GDPの200%つまり1千兆円を超える規模になっている。米国ではGDPの500%の財政赤字が予想されている。

高齢化の第一の原因は長寿化が進んでいることだ。20世紀初頭の平均寿命は世界全体で30歳、先進国で50歳弱だったが、現在は世界全体で67歳、先進国で78歳。しかも平均寿命は伸び続けている。高齢化の第二の原因は少子化だ。現在世界平均で婦人一人当たりの子供の数は2.6人(先進国では1.6人)だが、国連は2050年までに世界平均で子供の数は2人にまで減ると予想している。

では我々は何をするべきか?IMFは「今回の金融危機が財政に与えるインパクトは(年金等)社会保障の見直しの緊急性を高めた」と述べ「先進国の人々は年金給付が増えるとか健康保険の給付が良くなるなどという期待を持ってはいけない」と警告する。そしてエコノミスト誌はオバマ大統領の「良い危機を無駄にするな」という演説を引用して記事を締めくくっている。

IMFの予想を見て政治家(見ているかどうか疑問だが)やオピニオン・リーダーと呼ばれる人々はどのような政策を掲げるのだろうか?

エコノミスト誌が以前から主張していることは「皆健康に長生きしているのだから退職年齢を引き上げることでGDPを維持するとともに、社会保障費用を削減するべきだ」と主張している。定年を延長したくないというのは雇用する企業の論理だが、雇用を増やすことで一国の消費レベルを維持しないと結局個別企業の将来も暗いものになる。

自民党でも民主党でもどちらでも良いが、高齢化と財政赤字問題についてマヤカシや小手先でない対策を掲げることはできないものだろうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする