金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

物故者データから考える

2009年11月25日 | 健康・病気

以前勤めていた銀行のOB会報に過去1年間の物故者リストが出ていた。お世話になった人の思い出を偲んだ後、このデータが意味するところはなにかあるのだろうか?と考えてみた。

一年間の物故者数は22名。余り大きな銀行ではないので物故者の数は多くない。このデータを死亡年齢順に並べた後、まず平均死亡年齢を出してみた。平均死亡年齢は71.5歳。無論このことは母集団である某銀行の勤務員の推定平均年齢が71.5歳ということではない。ただ単に「ある調査期間における亡くなった人の平均年齢は71.5歳だった」ということに過ぎない(つまり80歳や90歳で元気に暮らしている方のデータはカウントされていないからだ)。

次に中央値(つまり死亡年齢順に並べて真ん中に来る人の年齢)を見ると68.5歳。平均値より中央値が低いということは、若年で死んだ人が多い可能性を示唆している。

年代別の死亡数を見ると50代が1名、60代が10名、70代が5名、80代6名だった。物故者は一様に分布するのではなく60代に多かった。物故者リストに死因は出ていないが、50代、60代でお亡くなりなった人はガンの方が多かったようだ。

この少数のサンプルから結論を出すことは乱暴だが、ガンなどで60代に死亡することがなければある程度長生きする可能性が高いという推定は成り立ちそうだ。実際このサンプルの平均年齢以上(73歳以上)の物故者の平均死亡年齢は81.4歳だった。

もっともこのような推論が正しいとしても、何かの役に立つのだろうか?運よく70過ぎまで生きた場合に「俺はかなり長生きする可能性がある」と思い、更なる将来に備えて質素な生活を送る・・・という覚悟を決めるヒントになるかもしれないが。

そしてそのような質素な暮らしがまた長寿につながるのかもしれないが推測の域をでるものではない。

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中国は発展途上国 or 先進国?

2009年11月25日 | 社会・経済

今朝ワイフが「中国では余り電気自動車は売れないとラジオが言っていた」というので、その理由を聞いてみると「中国では電気は盗んで使うものという意識があるので、わざわざお金を払って充電することはない」とラジオが解説していたということだ(「盗電して充電すればよいのではないか?」という疑問が残る回答である)。

そのラジオ放送が面白半分の放言をしていたのか根拠のある話をしていたのか確かめる術(すべ)もないが、我々の深層心理の中には「中国は未開な国ではないか?」という意識があり、それが刺激されるとある種のカタルシスを感じる傾向がありそうだ。ラジオのコメンテーターはその辺りをたくみにくすぐったのだろう。

確かに中国では盗電は多い。もっとも盗電が多いのは中国だけではなく、インドなどその他の発展途上国では盗電は多い。では盗電や海賊版ソフトの横行をもって中国を発展途上国というべきなのか?そもそも発展途上国と先進国の線引きとは何だろうか?

発展途上国と先進国の線引きについてフィナンシャル・タイムズの中国スペシャリスト・James Kynge氏は「先進国と発展途上国に二極化する見方は政治地政学的な策略で、ある種の幻想を起こす」と述べている。

Kynge氏は幾つかの分野で中国が既に世界のトップの位置にいることを示す。

  • 中国は米国の最大の債権国である
  • 中国はGDPで今年または来年に日本を抜き世界第2の経済大国になる
  • 中国はドイツを抜いて世界一の輸出国になった
  • 中国のA株の時価総額は今年6月に東証を抜きニューヨークに次ぐ世界第2位になった
  • 中国はインドを抜いて世界一の金の購入国になった
  • 中国は世界は世界一の二酸化炭素排出国であるが、同時に世界一の再生エネルギー利用国になろうとしている

Kynge氏は中国のアフリカに対するコミットメントにも注目している。世界貿易に占めるアフリカのシェアは1983年の4.6%から2007年の2.6%に低下している。その中でBric諸国のアフリカ貿易は2000年の223億ドルから2008年の1,660億ドルに大幅に拡大している。この中で中国は約3分の2を占めている。現在のところアフリカの最大の貿易相手国は米国で今年前半の貿易額は394億ドルだ。同時期の中国の対アフリカ貿易額は371億ドルと肉薄している。Kynge氏は5年以内に中国が米国を大きく抜いて、アフリカの最大のパートナーになると予想している。

☆   ☆   ☆

このように見ると中国を「発展途上国」と分類することは確かに判断を誤らせるものだろう(もっとも中国も自分の都合で「発展途上国」になったり「アメリカと対等な国」になったりするが)。

また歴史的な観点からも中国(およびインド)を「発展途上国」と分類することは「失礼なこと」というべきかもしれない。日本が日清戦争で勝利したのは1984年今から115年前のこと。また初めて中国が列強に屈したアヘン戦争は今から170年程前の1840年のこと。これらの戦争より前は中国は世界一の大国と思われていたのだ。中国数千年の歴史から見ると百年や二百年の停滞は大したことではないのかもしれない。後世千年単位で歴史を振り返ると「19世紀の中頃から百年程夷狄の侵略を受け、その後暫く経済的低迷が続いた時期があったが、21世紀前半に中国は再び世界一の大国になった」と記述されるかもしれない。

と考えると中国には「ほめ殺し」作戦の方が良いようだ。つまり「あなた達は世界一の大国なんだから、特許権や著作権の侵害を取り締まるべき立場なんですよ」と。

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みずほ、最悪の自己資本比率2%

2009年11月25日 | 金融

この話題は昨日ロイター・ニュースで読んだので、昨日エントリーしたかったのだが、プロバイダーのサーバー停止で掲載する機会がなかった。

さて本題である。格付機関S&Pは月曜日に世界のトップ45の銀行について、Risk-adjusted capital (RAC) ratioを発表した。これはS&Pが独自の基準で銀行の資本や負債の調整を行った「自己資本比率」で、来年早々にも導入が予定されている新自己資本規制の先駆けをなすものだ。

S&Pによると45行の平均RACベースの自己資本比率は6.7%で、3分の2の銀行は平均以下だ。自己資本比率の低さが目立つ銀行はCiti(2.1%)、UBS(2.2%)、一番自己資本が低い銀行はみずほで2%である。

一方自己資本比率が一番高い銀行はHSBCで9.2%。これにゴールドマン(8.3%)、カナダのトロントドミニオン(8.3%)が続く。モルガンスタンレーも8.1%と高かった。

RACでは優先株等ハイブリッド・キャピタルを中核自己資本から控除しているため、ハイブリッド・キャピタルの比率が高い邦銀は総じてRACベースの自己資本比率は低くなり、反対にカナダやベネルクス諸国の銀行の自己資本は高くなっている。

自己資本比率問題はいつも邦銀を苦しめる。オリンピックで日本勢がメダルを取ると次回から自分達に有利になるように、競技ルールを変える発想と共通するところがあると思わざるをえない。

しかし不満はさておき、国内に収益拡大の機会が少ないメガバンクは、海外展開を図らざるを得ないので、新自己資本規制を強く意識した資本政策や投融資政策を取ることになる。

特にS&Pで最低の自己資本比率と決めつけられたみずほの動きには要注意だ。

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