私のブログを金融サイド(つまり「山」側からではなく)から見ている人にとっては、ここ1年ほどの間ブラジル投資が群を抜くパフォーマンスを上げていることはご存知(あるいは高いリターンをエンジョイされている?)ので多くは語らない。しかし気になるところは「その勢いがどれ位持続するか?」というところだろう。最近では大きな停電があったようにインフラ面の不備なども気になるところだ。
だが今週のエコノミスト誌の記事Brazil takes off「ブラジルは離陸をする」を読む限り、当面失速のリスクより加速の期待が大きいようだ。もっともエコノミスト誌は「ブラジルのリスクは成功に自惚れることだ」という警告を発するが。
ブラジルの経済成長は5%に復帰。エコノミスト誌は深海油田の開発とアジア諸国の旺盛な食糧と鉱物資源の需要で更に経済成長は向こう数年間加速すると予想する。そしてかってゴールドマンザックスが予想したより速いペースでブラジルは世界第5位の経済大国になると予想する。
BRICsの他の国と比較した場合、ブラジルの強みは次のようなものだ。
・中国と違い民主主義国家である
・インドと違い暴動、民族的・宗教的対立がなく、敵対的な隣国もない
・原油と武器輸出に依存するロシアと違い輸出品が豊富でかつ外国人投資家を尊重している
また洗練された社会政策で内需を拡大している点も中国より優れた点だ。中央銀行の独立性や国営企業の民営化が進んでいる点もブラジルの強みだ。
だがエコノミスト誌は「新しいブラジルの実力を過小評価するのが誤りであると同時に弱点をかばうのも誤りだ」と指摘する。例えば政府予算は全体の経済成長より速いペースで拡大している割に、民間部門・公共部門とも固定資本投資が少ないという弱点がある。また最近改善されつつあるものの、教育やインフラ面で中国または韓国に遅れている点も弱点だ。
新しい問題はレアルがドルに対して昨年末来5割近く上昇していることだ。輸入品が安くなったので生活水準は改善しているが、輸出業者は苦しくなっている。ブラジル政府は先月短期資本の流入に税金を課したが、レアル高が止まる見込みは低い。特に海底油田の採油が始まるとレアル高は続きそうだ。
エコノミスト誌は現在のルーラ大統領は大変ラッキーな大統領だという。何故なら前任のカルドーゾ大統領の時期に成長路線が引かれていたところに、世界的なコモディティ・ブームが来たからだ。
話はそれるけれど、ちょっと調べたところこのカルドーゾという人は、米国のスタンフォード大学やフランスのパリ大学などで教鞭をとったことのある著名な社会学者ということである。一方現在のルーラ大統領は働きながらようやく小学校をようやく小学校を卒業したという貧農の生まれで学歴については天と地ほどの開きがある。それでも大国ブラジルの舵取りをこなすのだから、政治的能力は学校の教育で得られるものではなさそうだ。
エコノミスト誌は最後に「ブラジルの最大のリスクは成功体験に自信過剰になることだろう」と警告を発し、次の大統領(来年選挙がある)は、ルーラ大統領が「無視しうる」として残した問題に取り組むことになるだろうと書いている。そして大統領選挙の結果は経済成長のペースに影響を与えるだろうが、成長そのものは大丈夫だろうと述べている。
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今ではボベスパ連動型上場投信(東証上場)という便利な商品ができたので、日本時間に気軽にしかも大きなコストをかけずにブラジル株(インデックス)に投資することが可能になった。無論簡単に投資できることと投資成果があがるかどうかということには関係はない。ただ投資のチャンスが広がったことは歓迎するべきだろう。