11月9日(月曜日)のニューヨーク市場ではダウが203ポイント上昇し今年の高値を更新した。週末開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議で低金利政策の持続が継続されることがはっきりしたことを素直に好感して株やコモディティが買い進まれた訳だ。一方G20で米ドルをサポートする話は出なかったことや、先週のFOMCで連銀の低金利策継続がはっきりしたので、投機筋はドル投資を止めて、さらにはドルで資金を調達するドルキャリートレードで、リスク資産への投資を高めたと見てよいだろう。
先週末に発表された米国の雇用統計では失業率は26年ぶりに10.2%と高いレベルに達したが、市場の関心事はとりあえず低金利政策の持続と積極的な財政政策の持続を歓迎したというところだろう。
今後の米国の失業率の見通しについて最近目にしたところでは弱気・強気の二説がある。失業率が更に悪化するという意見を示しているのは、グラスキン・シェフ・アンド・アソシエーツのチーフエコノミストのローゼンバーグ氏でブルンバーグ・ラジオのインタビューに「失業率は最悪13%に達する可能性がある」と回答している。
一方エコノミスト誌は失業率統計のメカニズムを分析して、雇用状況は改善するのではないかと示唆している。
エコノミスト誌の論旨は次のとおりだ。「過去2ヶ月の雇用者数の減少は合計9万人上方修正された(つまり実際の減少幅は当初発表より少なかった)。このような上向きの修正の後にしばしば雇用市場の底が来る。」「臨時雇用者数は3ヶ月連続で増えている。これは通常正規雇用者が増える前触れである(2002年に例外あり)」「ここ数週間失業保険申請者数が減少してる」
エコノミスト誌はさらに「GDPは増加しているが、企業は景気回復の初期段階では雇用を増やす前に労働強化を行う。第3四半期の労働生産性は年率9.5%の割合で増加しているが、これは持続可能なレベルを超えているので、売上の増加が続くと企業は労働時間を増やすか雇用を増やすか、あるいは双方の対策をとる」と述べている。
また統計方法にも失業率統計が実体経済の回復より遅れる理由があるとエコノミスト誌は述べている。どういうことかというと、雇用統計は労働者の約3分の1をカバーする事業所を対象として行われるが、総てのデータが揃う前に発表され、その後データが揃う度修正されるからだ。
エコノミスト誌の判断が正しいかどうかは別として、市場の専門家は統計データをこのように読んでいるということは参考にして良いだろう。
エコノミスト誌の記事は米国の潜在的失業率(働く希望はあるが仕事を探していない人、パートタイムで働いているけれど正規雇用を希望してる人を失業者に含んだ失業率)は17.5%に達し、リセッション(2007年12月に始まった)前に比べ9%近く増えていると告げている。
ところで日本の潜在的失業率について、野口悠紀雄氏は14%程度と推定している。米国の完全失業率と潜在的失業率の差は7%強、日本のそれは8%強。もし野口教授の説が正しいとすると、日本の雇用市場の最大の問題は潜在的失業者の問題かもしれない。
潜在的失業者が減らないと可処分所得は増えず、消費の回復がままならないからだ。