昨日米国のモーゲージ・バンカー協会は第3四半期の住宅ローンの遅延状況は同協会が1972年に設立されて以来、最悪になったと発表した。
1回以上住宅ローンの返済が遅れている人と競売に付されている人の割合は14.41%、つまり住宅ローンを借りている人の7人に1人が遅延状態だ。この内競売に付されている人の割合は4.47%で、これは1年前の2.97%の5割り増しだ。同協会のエコノミスト・ブリンクマン氏は「明らかにこの変化は雇用状況の悪化に起因する」と述べている。
これまでの不況時には、職を失っても住宅価格が下落していなかったので、住宅ローンを借りている人は自宅を売却して別の都市で仕事を探すか少なくとも賃貸物件に入居するなどライフスタイルを変えることができたが、今回は住宅ローンの残債よりも自宅の価値が下がっているので、そのような選択肢がない。
住宅の競売は失業よりも遅行するので、モーゲージ・バンカー協会は、競売のピークは2011年になるだろうと予想している。
ところで日本の住宅ローンでも遅延が増加しているだろうと思い、少し調べてみたが簡単には包括的な統計データが見つからなかった。少ない情報の中で東京地裁のデータによると、2008年の競売申し立て件数は3,669件と2007年の2,636件の4割アップになり、日本でも競売が増えていることを示している。ただし絶対数で見ると米国の競売数は2百万件を越えるから比較にならないほど少ない。
次に全国銀行協会の個人情報センターの事故情報の割合を見ると2009年3月は2.3%で1年前より0.4%増加していた(これは住宅ローン以外のローンの事故も含む数字)。
07年のピムコの日本の住宅ローンのデフォルト率に関する記述を見ると「住宅金融公庫で0.1%から0.2%で、民間銀行では0.2%程度」とある。今回の不況でデフォルト率は上昇しているはずだが包括的な統計を見つけることはできなかった。
それにしても米国の住宅ローンの遅延者が7人に1人とは!これはサブプライム・ローンの問題ではなく、完全にプライム(優良)な住宅ローンの借り手が返済遅延に陥っていることを示している。米国の個人消費が復活するには時間がかかるだろうと改めて思わざるを得ない。