金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

【クイズ】日本が世界1位(および2位、3位)のものは?

2011年05月31日 | ニュース

何でもないキャッチフレーズがいつまでも記憶に残っていることがある。昔滋賀県の坂本で「鶴喜そば」という蕎麦の老舗にいったことがあった。鶴喜そばは大通りから三軒目で、一軒目は「日吉そば」という店だった。その大通りの角で鶴喜そばの案内のおばさんが大声で叫んでいたのが次のキャッチフレーズ。

「味は一番、電話は二番、店は角から三軒目」

今日(5月31日)ムーディーズが、日本国債の格付(Aa2)を引き下げ方向で見直しすると発表した時、ふと思い出したのが「味は一番」のフレーズだった。

日本が世界で一番のものは?というと国債つまり国の借金の大きさだ。二番は直ぐに思いつかなかったけれど、三番はGDPつまり経済規模の大きさで、米国、中国について世界第3位。

少し考えて二番は他にもあるかもしれないが、労働時間の長さにした。OECDによると有償・無償の労働時間の長さで日本はメキシコについて2番目http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110527-00000024-rcdc-cn

なお有償の労働時間では日本が一番。

「借金一番 働き二番 経済規模は三番目」 これが今日の日本のキャッチフレーズ。だが経済規模はやがて、経済成長率や人口増加率が高い発展途上国に追い抜かれていくだろう。そのことを残念がる必要はない。ただし一人当たりGDPが低下し続けることは懸念するべきだが。

他に日本が世界一のものというと、平均寿命の長さ(ただしこれはある程度の規模以上の国の中の話で、モナコやサンマリノなど小さい国を入れると日本の平均寿命は世界5位)

日本の更にもう一つの世界一は、広義の通貨量の多さだ。広義の通貨は預貯金の形で金融機関に預けられている金を含むので、国債が国内で保有されていることと表裏一体の関係にあるともいえるのだが。

「借金一番(貯金も一番) 働き(時間)二番 経済規模三番」のキャッチフレーズから何が見えるだろうか?

世界で二番目に長く働いて、ほとんど利息もつかないのに世界で一番預貯金をして、国はその預貯金を当てにしてシコタマ借金して問題の先送りをしている国。国の借金というのは、国民の将来(あるいは将来の国民)に対する負担の先送り。つまり現在のツケを後世に残すということ。これでは若い人が将来に希望が持てなくなる。

まずは一度膨れ上がった国の借金と預貯金の両建てを見直して、もう少し「現金払い」を増やす(つまりプライマリーバランスを改善する)必要があるだろう。

その点では社会保障改革集中検討会議が「消費税の段階的引き上げ」を提案することは正しいのだが、問題は菅内閣にそれを本気でやり抜く本気度が欠如していることだ。だからムーディーズなど格付機関は、日本国債を引き下げ見直ししようと考えている。早く(もう相当遅いが)手を打たないと「寿命だけは一番だが、経済的に貧弱で夢のない国」になってしまうのではないだろうか?

その時のキャッチフレーズだけは考えたくない。

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原発廃止を宣言するドイツと動けない日本

2011年05月31日 | ニュース

今日(5月31日)のネット版ニューヨーク・タイムズを見ると、「2022年までに原発を廃止するドイツ」という記事と「原発依存を推進する日本の文化」In Japan, a culture that promotes nuclear dependencyという記事がたまたま並んでいた。

ドイツ政府は今週月曜日に、17の原発(8つは停止中)を11年間で段階的に廃止し、再生エネルギーへの依存度を高めると発表した。現在ドイツの原発依存度は23%で、再生エネルギーへの依存度は13%。これを2020年までに35%に高めるという計画だ。もっともドイツ産業界からは反対の声もあがっているから、この青写真のとおりことが進むかどうかは分からない。またドイツの場合は、原発推進国のフランスから電力を輸入することができるので、バッファーはある。

ところで日本に関する記事でタイムスは、「日本の原発のある地域は電源三法により補助金を受けているので、草の根ベースで廃止運動を起こすことは難しい」という分析を示している。

記事が最初に取り上げるのは、島根県松江市(旧鹿島町地区)の原発建設の歴史だ。40年以上前、中国電力が最初に島根原発の建設を試みた時は、漁民の激しい反対に会いほとんど計画を廃止しそうになった。その20年後中国電力が3号炉の建設を計画した時は、今度は町は賛成に大きく傾いた。

記事は鹿島町の180度方針転換の理由を理解するには、「深田運動公園」http://sports-map.jp/28646を見るに如かずと述べる。運動公園には野球場やテニスコートが完備している。これらの運動施設は、3号炉の建設の見返りとして提供された公共事業の一部に過ぎない。

タイムズは「中央政府は気前の良い補助金や雇用機会の提供により、原発建設に対する支持または少なくとも黙認を地元から得ることができた」と解説する。経済産業省によると、2009年だけで中央政府は、原発の地元に11.5億ドルの公共事業を提供している。また地元は補助金、固定資産税や法人税、個人補償等の見返りを受け取っている。

この枠組みに対して、これは麻薬のようなものだという批判がある。イージーマネーの流入と高い賃金の仕事(原発関連の)は、農業・漁業という地元の経済基盤を急速に変えた。

この枠組みの根幹になっているのが、田中角栄元首相の時に制定された電源三法だ。原発に対する補助金の特徴は、一度原子炉を建設すると次々に新しい原子炉の建築を促進する仕掛けが組み込まれていることだ。原発補助金は最初の稼働時が、一番高く段々と減少していく。一度補助金を受け取り、贅沢になりまた産業構造が変わった地元は、補助金が減少すると新しい原発の建設を受け入れざるを得ないというプレッシャーを受ける訳だ。タイムズは福島大学の清水教授の「1974年以降福島原発の地元は約33億ドル相当の補助金を受け取ってきた」という言葉を紹介している。

福島原発の地元の双葉町は、巨額の補助金を受け取っていたにもかかわらず、原発事故の4年前までにほとんど財政破綻状態に陥っていた。双葉町の解決策は、東電と中央政府に更に二つの原子炉建設を要求することだった。

☆  ☆  ☆

タイムズの記事はかなり長いが紹介はこのあたりで止めよう。

記者の意図は読者に「どうして世界唯一の被爆国であり、今世紀最大の原発事故が起きた日本で、原発廃止の強い動きが起きないのか?」ということを事情を知らないアメリカの読者に知らしめることだろう。

この話は日本では広く知られているところだろうが、余り議論されない「不都合な真実」のようだ。ではどうすれば良いのか?という問題に明快な答は持ち合わせないけれど、原発を作り続けないと地元経済が破綻するという仕組みはおかしいといわざるをえない。

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