ドルがユーロや円に対して強含んでいる。ドル指数は昨年9月以降で最高値だ。ユーロは1.33を割り込んで1.328レベル、これは昨年9月来の安値だ。円は103円後半レベルまで売り込まれている。
ドルが強含んでいる理由は、日米欧の景気動向と中央銀行のスタンスの差が明確になってきたことによる。
市場参加者が注目しているのは、今日ジャクソンホールで行われる中央銀行総裁のスピーチだ。一番注目されているのは米連銀のイエレン議長だが、彼女の話は後に回して、イエレン議長の後に発言する予定のECBのドラギ総裁については、景気が低迷して、インフレ率が危険水域と思われる0.4%まで落ち込んでるユーロ圏でどのような金融緩和策を取るかが注目ポイントだ。今月初めにドラギ総裁は、デフレ対策としてABSの購入や量的緩和など非伝統的な政策も視野に入れるといっているので、市場参加者は更に踏み込んだ話を期待している。
そして更なる緩和策が打ち出されるとそれはユーロ安の材料になる可能性が高い。
日銀の黒田総裁の発言も注目されている。日銀は4月の消費税引き上げの影響は、一時的なものだと言い続けているが、第2四半期のGDP成長率が年率1.7%の収縮を示したことで、市場参加者は黒田総裁が景気の弱さを認めるような発言をするかどうかを注目している。日銀総裁が景気の弱さを認めると追加的な金融緩和が行われると判断されるので、円売りの材料になるからだ。
米連銀については、先日発表されたFOMC議事録などからハト派と目される人もタカ派と目される人も米国の労働市場については相当改善が進んでいる、という点では認識が共通していることが明らかになってきた。もっともタカ派は金利の正常化(ゼロ金利の解除)について今すぐに話を始めるべきだと主張するのに対しハト派は時期尚早だという違いはある。ただその違いはそれほど大きくないかもしれない。
その中で注目されるのがハト派と目されてきたイエレン議長の発言だ。もしイエレン議長が大方の予想よりもタカ派よりの発言をする場合、ドルは相当強含む可能性があると私は考えている。もっとも同議長が予想よりもタカ派寄りの考え方を持っているにしても、今日のスピーチでそれを占めすかどうかは分らないが。