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山好き金融マン(OB)のブログ
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形だけ管理職・ノー残業代、オバマ大統領が是正を指示

2015年07月03日 | ニュース

日本の国会で法案成立の見通しがはっきりしない「脱時間給」法案(労働法改正案)。この制度は米国のホワイトカラー・エグゼンプションという制度を輸入しようというものだが、本場アメリカで対象者の年収を引き上げるように、オバマ大統領が指示を出したことがニュースになっていた。

米国では現在年収23,660ドル(週給455ドル)以上の管理職は、たとえそれが名目上のものであっても、残業代が払われないことになっている。ところが年収23,660ドルというのは、4人家族の貧困所得ライン24,250ドルより低い。

ホワイトカラーエグゼンプションの年収基準の年収全般の上昇に伴う見直しがされてこなかった。このため1975年には「残業代が支払われる正規従業員」が全体の62%いたが、現在では8%に減少しているという(エコノミスト誌)。つまり9割以上の正規雇用者が残業代が支払われないホワイトカラーエグゼンプションになっている訳だ。

オバマ大統領はホワイトカラーエグゼンプションの年収基準を50,440ドルに引き上げるように指示をだしたという。労働省のファクトシートによるとこの基準引き上げで4割の雇用者に残業代が支払われることになる。

この指示は「大統領指示」と呼ばれるもので、議会の承認を必要としない。ただし公聴会で意見を聞くことになっているので、外食産業等の反発を受けることは間違いない。

また仮にホワイトカラーエグゼンプションの年収基準が引き上げられたとしても、現在「脱時間給」になっているマネージャーが、残業代を受け取ることで、年収が増えることになるかどうかは疑問だ。週40時間を超える残業については通常のサラリーの1.5倍の残業代が支払われるので、事業主はマネージャーに残業代を支払うより、パートタイム従業員を増やすことを選択する可能性が高いと考えられる。

そして現在のマネージャーが退職した後は、低賃金の従業員で代替させるので、結局「中間層」の年収は増えず、低賃金労働者が増えることになるかもしれない・・・という懸念を幾つかのマスコミが指摘している。ワイトカラーエグゼンプションの年収基準引き上げは、雇用の底上げ面では、効果を発揮する可能性があるが、全体の賃金上昇面での効果は未知数かもしれない。

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