今日(7月23日)日経新聞朝刊に出ていた「日本郵政が資産運用で攻勢」という記事。昨日日本郵政は三井住友信託銀行、野村HDと資産運用会社を共同設立して来年2月から1500拠点で投信販売を行うと発表した。
「攻める日本郵政」という訳だが、攻める対象は何なのだろうか?攻める相手が、先行する証券会社や銀行であれば構わないが、攻める相手がゆうちょ銀行の顧客であるとすればたまったものではない。
資産運用から得られる収益は2つに分けられる。一つは投資家が得る収益でもう一つは資産運用会社や販売会社が得る収益だ。資産運用から得られるトータルの収益を一定とすれば、運用や販売に携わる金融機関の取り分が増えると投資家の得る収益はその分減少する。
運用や販売に携わる金融機関がトータルの収益でプラスを生む貢献(アルファ)ができれば良いが、アルファを生み出すことができなければ、介在する金融機関に手数料を支払う分、投資家の手取りは減少する。
長期的な分析の結果、銘柄選択等で市場平均を上回るリターン=アルファを得ることは難しいということを機関投資家や賢い個人投資家は知っている。だから彼等は資産運用の柱としてはアルファを得ることよりも、コストを極小化する行動を取る。
この介在する金融機関へ支払う手数料を最小化する投資方法は「インデックスファンド(投信)を販売会社を経由せず直接購入する」というものだ。投信委託会社の側から見れば「インデックスファンドの直販」である。
実は投信に詳しい個人投資家はこの低コストのインデックスファンドを選んでいる。
今年1月に日経新聞が発表した個人ブロガーが選んだ投信1位は「ニッセイ外国株式インデックスファンド」で2位は「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」で3位は「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」でいずれもローコストのインデックスファンドだった。
ゆうちょ銀行はセゾン投信に出資し、販売提携を行っているが、セゾン投信は直販方針を保っているので、投信販売手数料はゆうちょ銀行に入らない。そこで資産運用会社を共同設立して郵便局ネットワークで投信販売を強化することにしたのだ。
ゆうちょ銀行の長門社長は「シンプルで分りやすい貯金似た投資信託と投入する」と言っているが、その中身はどんなものなのだろうか?
仮にそれが元本確保に近いストラクチャーだとすれば、元本確保にはオプション購入等のコストがかかる。投資家にとって「見た目」は良さそうだが、実は運用収益の大きな部分をそちらに費やした商品になる可能性が高い。
私はシンプルで分りやすい投資というのは、株式インデックス運用であると考えている。日経平均連動であれ、TOPIX連動であれ、S&P500連動であれ、新聞やテレビを見ていれば誰でも値動きが分るからだ。
郵便局員が投信を販売するためには、研修やフォローアップ体制が必要であり、大きなコストがかかる。そのコストは誰が負担するのか?というとそれは一般の個人投資家である。
つまり攻められているのは個人投資家なのである。