今日(7月15日)に日経新聞に「相続手続き、専門家が頼り 書類多く書式も複雑」という記事が出ていた。
主旨は
1)戸籍謄本集めは大変だ。
2)不動産の名義変更で法務局に提出する登記申請書は専門性が高い
3)預貯金の名義変更も大変だ
4)相続税の申告手続き以外の手続きを20万円前後で提供する司法書士や行政書士が目立つから専門家の活用を考えよう
5)社会保険の手続きは自力でも大丈夫だろう
というものだ。
でもこれは本当だろうか?
実は最近名古屋で行ったセミナーでこれには反対するようなことを述べた。
それは「登記等の諸手続きをDIYで」というものである。DIYつまりdo it yourselfである。例えば住宅ローンを借りていた人なら完済時に金融機関の抵当権を抹消する登記手続きがある。これは司法書士に依頼するとやってくれるが当然手数料がかかる。自動車の所有権移転登記も行政書士に依頼するとやってくれるが、手数料がかかる。これらのことを自分でやってみようというのが私の提案だった。色々な手続きを自分でこなす訓練ができていると、相続に関する手続きもかなりのことは自分でできるはずだ。
「時間はあるから、お金をセーブするために自分で手続きをする」という人に実はかなり行政機関は親切になっている。法務局にはOBがいてボランティアで、登記手続きを指導してくれる場合がある。陸運局の窓口も意外に親切だ。
また登記申請書のひな形はネットで入手することも可能だ。つまり「やる気」になればかなりのことは自分でできるのである。
マイナンバー制度が普及すれば、将来的には戸籍謄本も簡単に入手することが理屈の上では可能なはずだ。行政がどこまで素早く対応するかは不明だが。
ただ年を取るにつれて、新しいことに取り組むのが億劫になる。そこで元気なうちから、色々な手続きを自分で行って慣れておこうというのがセミナーでの私の提案だった。
もっとも20万円程度ですむのであれば、人生に1度か2度のことだから専門家にお任せしようという判断を間違っているとは思わない。また年を取ってあちらこちらの窓口に出向くのが大変になれば私も専門家にお任せするかもしれないと思っている。
上に列挙したことは総て「事務手続き」である。つまり手際の良し悪しはあっても、誰が行っても同じ結果がでるものなのだ。だから金銭的に余裕があれば誰かに代行して貰っても良い。
だが代行して貰えないものがある。それは「意思決定」である。相続の場合は「遺産分割の内容」である。これは専門家にお任せすることはできない。アドバイスを聞くことはできるが、最終的には自分(達)で決めないといけないのである。
そして自分(達)で決める時、決めたことを実行するにはどれ位のプロセスが必要で、どれ位の時間がかかるかを頭に入れておく必要があるだろう。そのためにもDIYの訓練は必要だ、と私は考えている。