金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

バランスの悪い人が山歩きで疲れる理由

2015年07月28日 | 

色々な人と山に登っていて、「この人は体力はあるはずなのに意外に早くへばるなぁ」とか「華奢だけれどタフな人だなぁ」と感じることがあります。山登りでへばる・へばらないの違いは、基礎体力やペース配分によるところが大きいと一般に思われていますが、それに加えて「歩き方の巧拙」が大きく影響すると私は考えています。

では上手な山の歩き方とはどのような歩き方でしょうか?

第一に「一定のリズムで歩く」ということです。平地や緩やかな登りで早足になり、急な登りになるとスローダウンするのはいけません。緩い登りも急な登りもできるだけ一定のペースであることが望ましいと思います。

そのためには「小さな足場を丁寧に拾い、小刻みに登る」ことが必要です。山歩きに慣れていない人は大きな足場を求めて大股で登る傾向があります。だがこれは疲れる歩き方なのです。探せば大きな足場の前に小さなステップがあることは多いので、その小さなステップを拾ってできるだけ、膝以上に足をあげないで登るのが疲れない歩き方なので。

降りになると歩き方の巧拙の差が一層はっきりします。降りは登りよりも使える足場が少ないので、より「目で降る」ことが重要になります。

第二に「できるだけ手を使わず足で登る」ということです。手の筋肉は足の筋肉より疲労し易いので、急な岩場やガレ場で手に頼って登っていると早く疲労してしまいます。鎖や残置ロープなどはできるだけ使わずに登るのが好ましいと思います。特に岩場の多い北アルプスの険路縦走を目指す人は「できるだけ鎖やロープに頼らず、三点支持を励行して足で登る」クセをつける必要があります。腕力は最後の最後まで取っておく必要があります。険路のでの滑落事故は疲労からくる注意力の低下と腕力消耗が原因になることが多いからです。

第三に特に降りですが「バランスの良い歩き方をする」ことです。体幹を意識して前後左右にぶれの少ない歩き方をすることです。体にぶれがでるとそれを補正するために、余計な筋肉を使い足腰への負担が大きくなり疲労を早めます。

以上のようなことを意識してリズミカルでバランスの良い歩き方をすれば、筋肉の疲労を抑えることができます。

第四に、これは少し上級編ですが、雪山や沢登りなど自分でルートを見つけて登る必要がある山登りでは「最良ルートを確認して登る」ということです。足で登る前に眼で登るのです。ルート選択の巧拙が登山速度や疲労度に大きな影響を与えるからです。

私が相対的に自信を持っているのは、このルートファインファインディング力です。相対的というのは「山仲間の中で優れている」という意味と自分の幾つかの登山能力~例えば非常に難しい岩場を登る登攀力など~の中で、ルートファインディング力に自信を持っているということです。逆にいうと登攀力等には人並み以上といった自信がありません。ルートファインディング力とは自己の登山能力と山の難しさを冷静に見極める力といっても良いと私は考えています。そしてある程度このルートファインディング能力を実社会生活にも活かしていると思っているのです。

しかし昔の会社の大先輩のFさんとお酒を飲むと時々「お前は本当に世渡りが下手だからなぁ」と言われることがあります。Fさんとは会社を離れても山のお付き合いをして、Fさんがへばった時は黙って荷物を担いであげたりしているのですから、この評価には多少不満が残りますが(笑)。

もっとも山のルートファインディング力やバランスの良い歩き方が必ずしも実社会で活かされると考えるのが間違いかもしれません。

無刀取りを編み出し剣聖と言われた柳生石舟斎に「兵法の舵を取りても世の海を渡りかねたる石の船かな」という句があります。

剣を取っては無敵と言われた石舟斎ですが、戦国末期の乱世の中、柳生の里に逼塞せざるを得ませんでした。柳生家が将軍の剣術師範になり更には目付となって大名の末席に連なるのは、息子の柳生宗矩の時代のこと。宗矩の剣技は石舟斎には遠く及びませんでしたが、世の海を渡る上では宗矩は石舟斎を大きく越えていました。

垂直の岩壁に一条の登攀ルートを見いだし、激流の中にただ一つの渡渉ルートを発見するルートファインディング力があっても、組織の壁を登り、清濁渦巻く人の世をうまく渡れるとは限らないようです。

話が本題から逸れてしまいましたが、退職して自儘な身になれば、渡る世も少なくなります。畢竟不得意な世渡りを考える必要もありません。

自分のリズムとバランスを大切にして、自分の足でゆっくり着実に歩いて行けば良いのです。そしてそれが私は疲れない歩き方だと思っています。

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最近出版した電子本

「海外トレッキングで役に立つ80の英語」

「インフレ時代の人生設計術」 B00UA2T3VK

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強過ぎる中国は困りものだが、弱い中国も困りもの

2015年07月28日 | 投資

中国は中々厄介な国だと思う。経済状態が良くて国力が伸びてくると、世界中の資源を買いまくり、世界的な食糧・コモディティ価格の上昇を招く。力を着けると軍事的なプレゼンスが高まり、日本を含む近隣諸国と島嶼問題で緊張が高まる。強過ぎる中国は厄介だ。

しかし世界で2番目の経済大国になった中国の経済成長が急減速すると世界経済に与えるマイナス影響はかってないほど大きくなっている。

昨日中国株(上海市場)は8.5%下落した。1日の下落幅としては、2007年2月以降の大暴落だ。直接の原因は当局が証券会社による証拠金取引へのチェックを強化したことによると報じられているが、背景には中国経済の成長鈍化に対する投資家の懸念がある。

参加者が中国人に限られている上海市場は思惑で動く市場だ。中国株は6月初旬に高値を付けたが、市場を押し上げたのは「中国株は割安だ」という国営メディアの報道を信じて株式市場に飛び込んできた個人投資家だった。そして彼等は今大きな含み損を抱えている。

先週末発表された購買マネージャー指数は15カ月ぶりの低い水準だった。もう一つ信頼感に欠ける中国の経済統計の中で、購買マネージャー指数は比較的信頼できるデータだろう。株価の急落が実体経済にじわりと影響を及ぼし始めている。

中国株の下落を受けて昨日の日経平均は1%近く下落。米国でもダウは0.7%以上下落した。この地合いをうけてシカゴ日経平均先物は200ポイントほど下落しているから、今日の東京市場も少なくとも寄り付きは弱いだろう。

だが中国の景気減速は悪い話ばかりではないだろう。これ以上の景気減速を懸念する中国政府が日中関係の改善を急いでいるという観測がある。日経新聞によると先ごろ北京を訪問した谷内国家安全保障局長は大歓迎を受けた。中国政府には事務レベルのみならず、首脳レベルでも関係改善の歯車を回そうという動きがあるようだ。

一方日本では安保関連法案の国会通過を巡って支持率が急低下した安倍内閣も中国との関係改善で支持率回復を狙う可能性があると私は考えている。だがそのあたりのことがはっきりしてくるのは、8月に予定されている安倍首相の戦後70年談話とそれに対する中国の反応など少し先になりそうだ。

中国の景気減速を日中の政治家はうまく利用できるだろうか?

日本の株式市場は当面中国の動きと米連銀の利上げ観測、米国企業の決算発表などを見ながらもう少し下げると私は踏んでいる。

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