ブルンバーグは今日行われる予定のギリシアの国民投票は賛否拮抗していると報じている。
Greece is divided right down the middle heading into Sunday’s referendum on European bailout proposals.
Divide down the middleが今日のイディオム。「二分する」という意味だ。Split down middleも同じ意味だ。
ブルンバーグによると、債権者団が提案する財政緊縮策に反対する国民は43%、賛成する国民は42.5%でまさに拮抗している。また世論調査によると、国民は8割はユーロ圏に留まることを希望している。
「ユーロ圏に留まりたいが、債権者団の提案する財政緊縮策の受け入れには反対」と考えている国民は、チプラス首相の国民投票は有利な交渉条件を引き出す方策という戦術を信じているのだろう。だがギリシア国民がノーと言った場合、債権者側が財政緊縮案の緩和と支援継続に応じるかどうかは不明だ。
今朝の日経新聞には賛成多数なら「日本株とユーロは上昇」反対多数なら「日本株は1%程度の下落ユーロは133~134円に下落」というエコノミストの意見を載せていた。だが私は話はそれほど単純ではないと考えている。
一つは賛成にしろ反対にしろ、どれ位の差がつくか?という点だ。仮に賛成派がかなり多数を占めた場合、チプラス政権は倒れ数週間後に総選挙に向かうことになるだろう。その間欧州中銀がギリシアの商業銀行に流動性を供給できるかどうかがポイントだ。
仮に僅差で賛成派が勝つ場合は、チプラスが直ぐに政権の座から降りるかどうかは不明で混迷は深まりそうだ。
一方反対派が勝つ場合は、ユーロ圏からの離脱の可能性が高まる。だが既に市場は相当ギリシアのユーロ離脱の可能性を織り込んでいるので、株とユーロの下値は限られているかもしれない。
ギリシア問題の本質は「ギリシアが硬直化した年金や雇用システムを改善し、生産性を高めることができるかどうか?そのために債権者側が血を流す覚悟があるかどうか?」に関わっていると私は考えている。いずれにしても1週間の考慮期間しかない国民投票では、国民の判断は感情的なものにならざるを得ない。国民投票の結果がイエスでもノーでも、ギリシア問題の根本的な解決にはならないだろう。だがギリシアがユーロから離脱するかどうかは欧州経済や世界経済に与える影響は小さい。市場が「これはギリシアだけの固有の問題で、他のユーロ諸国に波及することはない」と判断するかどうかが、市場が不安定になるかどうかの鍵なのだろう。