最近発表された日本のインフレ率は2%で、生活実感に近い生鮮食料品を含む総合物価指数でも2.5%です。これはアメリカの8%台に較べるとかなり低い数字です。また政府や日銀は長年デフレを脱却してインフレ率2%を目指すことを標ぼうしてきたのですから、本来は慌てることはないはずです。しかし今月行われる参院選挙では、物価上昇問題は大きな論点でしょう。
なぜ今日本でインフレが大きな問題になっているのか?
それは政府も家計も企業もみな心の中では「インフレなんて簡単にはこない」と高を括りインフレ対策をとってこなかったからです。
個人の金融資産を考えると長いデフレ時代に慣れて現金と預金が一番安全という習慣がこびりついているのです。しかしインフレ時代はゼロ金利の預金に寝かせておくだけで資産の実質価値は目減りしていきます。
デフレの時代に多くの人は「お金の時間価値」というものを考えない悪弊に落ち込んでしまいました。悪弊というのは長い人類の歴史の中でゼロ金利などというのは極めて例外的な現象だからです。
例えば少し前に「老後資金に2千万円必要」ということが話題になりました。でもこれはインフレ率ゼロで単純計算した話です。
2千万円の根拠は確か「平均的な家計では国の年金だけでは毎月5万円の赤字になる。その赤字が死ぬまで続くと単純計算すると2千万円になる」といったような話でした。しかし仮に2%のインフレがずっと続くとすると赤字の累積額は2,305万円になります。また仮に3%のインフレが続くと赤字の累積額は2,753万円になります。
仮に退職時に無事に2千万円のお金を銀行口座に入れておくことができても、インフレが持続する場合は数百万円の資金不足が生じることになります。
また国の年金がマクロスライド制によりインフレ時に物価上昇に追随して上昇しないことも問題です。その分赤字が膨らむ計算ですからインフレになるともっと資金不足が生じることになるでしょうね。
どうすれば個人でインフレ対策を取ることができるか?ということは大きな課題です。しかしインフレ対策だけがシニアライフの課題ではありません。むしろインフレは、長い人生を生きていく上での色々な問題の一つに過ぎないでしょう。だからインフレ問題はライフプラン上の一つの問題として可視化しながら考えていくことが重要だと思います。
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