7月10日投票予定の参院選が始まった。過去の選挙に較べて今回の選挙は経済政策、外交・安全保障面で論点が多いと思う。
消費者物価の上昇など選挙民にとって目先気になる問題が多いので、選挙民の支持を得やすい公約を掲げている党もある。
だが考えてみると「痛みを伴わない改善策」など世の中にある訳がない。早い話が我々の健康問題だ。幾つになっても元気で動き回ることができる健康な体を維持したいというのは、多くの人が望むところだが、そこそこの努力をしないと実現することは難しい。例えば1日7千歩歩くとか、スクワットなど筋トレを欠かさないとかだ。
政策も同じだ。減税は耳ざわりが良いが、減税で国家の収入が減った分、どの支出を減らして帳尻を合わせるのか?を説明できないような公約は政策ではない。単に子どもが願望を述べているに過ぎない。
例えば幾つかの野党は消費税の引き下げやガソリン税の減税を公約に掲げている。だがそこで失われる税収をどうカバーするのか?という議論は一面には出ていない。
実はアメリカでもガソリン価格の高騰による消費者や企業の負担を軽減するべく、ガソリン税の徴収を3か月間見合わせようではないか?という政策提言が起きている。提言を行っているのは野党ではなく、バイデン大統領だ。
だが与野党や経済界から反対の声が高く、実現する可能性は低そうだ。
反対の理由は、ガソリン価格の高騰は需給のアンバランスから来ているのでガソリン税を一時的に免除しても問題の本格的改善にはつながらないというものだ。
今のアメリカの消費者物価の上昇率は8%を超えていてガソリン価格が高止まりするとしばらくこの状況が続きそうだ。これに対し連銀は今月0.75%引き上げた政策金利を物価上昇が続くなら更に来月も同じ幅引き上げる可能性があるとタカ派の姿勢を示している。連銀の姿勢はインフレ抑制は最重要課題であり、そのために起きる一時的な景気後退はやむを得ないというものだ。
つまり景気後退という痛みを甘受してでも物価上昇を抑えるという姿勢なのだ。
これに較べて日本の足元の物価上昇率は2%強である。2%というのは政府や日銀が長年目標にしてきたレベルで「漸く目標を達成した」という見方もできない訳ではない。インフレ率が2%になったからといって大慌てするのは実は物価が2%も上昇する時代なんて当面きやしない、と高を括っていたからだろう。
高を括っていたのは政府や日銀だ。だから国の年金にマクロスライド制などという一般国民に分からない制度を導入して、物価が上昇する中で年金の支給額が減るという高齢者の生活を直撃するような政策が取られているのだ。
話が長くなったが、結論をいうと政策でインフレを抑制することはできない。何故ならインフレは世界的な要因で起きている部分が多く、日本の政策でコントロールできるもは極めて少ないからだ。
だからインフレ対策は物価上昇率に見合って収入を引き上げるような経済主体の動きを支援するものでなくてはならない。
具体的には企業の賃上げを促進する税制などの導入と年金の物価上昇完全スライド制の導入(復活)だ。このような政策を採らないで目先の痛みを抑える鎮痛剤を処方していると体がダメになってしまうことは間違いないのだ。