昨日(8月15日)の米国株は下落した。S&P500は1.2%、ダウは1%、ナスダックは1.1%下落した。
株価が下落した一つの要因は昨日発表された7月の小売業売上高が前月比0.7%アップしたことだ。これは1月以降で最も大きな伸びだ。これを受けて10年物国債金利は一時4.264%まで上昇した。国債金利が上昇すると「株式益利回り」Earnings yield(PERの逆数)との差が縮まり、株式への投資魅力が薄れるから、株を売って債券を買う人が増えるので株価が下落する。
株式益利回りと国債金利の差が「エクイティ・リスク・プレミアム」と呼ばれるものだが、アメリカの株式市場ではこのプレミアムが減少していることで、株価の動きが重たくなっているのだ。
さてもう一つ米国株の上値を重くしている悪材料がある。それは中国の景気低迷だ。
WSJは中国の景気問題を頻繁に取り上げているが、それは中国の景気がアメリカの景気や株価に影響を与えるからだ。これに較べて日本の経済ニュースが取り上げられることは少ない。これは日本の景気動向がアメリカの経済に与える影響が中国に較べるとはるかに小さいからだ。
さて景気が低迷基調にある中国は2つの対応策を取った。
一つは中央銀行(人民銀行)が政策金利を引き下げたことで、もう一つは統計局が「16歳~24歳の失業率」の発表を中止したことだ。16~24歳の失業率は6ケ月連続で上昇し、6月には21.3%に達していた。
エコノミスト達は、7月には新卒者が雇用市場に加わるので失業率は上昇すると予想していた。
ところが統計局は「新卒者を統計上どうとりあつか検討中なので失業率の公表を中止する」と発表したのだ(先進国では求職中の新卒者は失業者にカウントするようだ)。
マーケットは統計局の説明を真に受けず、中国政府が都合の悪い経済統計を隠蔽しようとしていると受け止めた。そしてそれこそ中国経済の実態が公表データより悪い証拠じゃないか?という見方もでている。
個人的な経験では、国際与信審査業務を統括していた四半世紀ほど前に中国を数度訪問したことがあるが、その時はインフレが大きな問題だった。ある時現地事務所で採用していた現地社員がこっそり「中国の物価統計はあてになりませんよ。たとえば卵の値段が著しく上がった時は政府はこっそり卵を物価の構成要素から外しているのです」と教えてくれたことがあった。
それから20年以上の年月が経ち、中国は日本を超える経済大国になった。
世界第2位の経済大国にのし上がってきた中国が、世界の投資家の信頼を得られるかどうかは、統計データの透明性を確保することなのだが・・・・
残念な話である。事実とすればだが。