江戸時代の儒学者にして医師の貝原益軒の養生訓に「身体は日々少しづつ労動すべし 久しく安座すべからず」という教訓があります。労動というのは体の部分や器官を動かすことで現代風にいうと「毎日体を動かしなさい。じっとしていてはいけません」という意味です。益軒先生は「朝晩体を動かしていると消化や血液循環が良くなり、針や灸に頼らなくても健康を維持できる」と続けています。養生訓には腹八分目や運動のすすめなど今日の医学から見ても生活習慣病の予防や改善に貢献する教えが色々書かれています。もっとも中には現代の医学の知識から見ると的外れなアドバイスもありますが・・・
このことは現代の医学の知見の中にも、後世的外れだったというものがありうるということを示唆しています。
しかし「運動が健康に良い」ということは、益軒先生の頃から現代まで変わらない教えですし、これから先も健康寿命を伸ばす上で最も重要な対策の一つであり続けるでしょう。
ただ健康を維持するのに、どれ位の運動量が必要か?ということについては、色々な研究が行われています。そして健康維持のための運動量のガイドラインも時々変わっています。
早稲田大学等の研究によると「1日5,000歩~7,000歩歩く運動量が死亡リスクを低下させ、それ以上歩いても死亡リスクは減らない」と結論つけられています。5,000歩歩く時間は40分程度だから厚生労働省が推奨する「+10(プラステン)」の65歳以上は1日40分体を動かそうという運動とも平仄があっています。この研究結果が正しいとすれば、1日1万歩も歩く必要はないということになりますね。
また米国の保健福祉省が推奨する「身体活動に関するガイドライン2018年」では、成人に対し1週間に150分以上の中強度の有酸素運動(または75分以上の高強度の有酸素運動)および週2日以上の中強度の筋肉トレーニングを推奨しています。
フレイルの予防には歩くだけではなく、筋肉トレーニングも必要でしょうね。
ところで日々の運動を阻害する要因がありますね。
第1はこのところの猛暑です。私はスポーツジムのトレッドミルの中でジョギングをしていますが、自宅からスポーツジムに通う間が暑く、猛暑の日は二の足を踏みます。
コロナの感染防止でジム内のアクティビティが制限を受けていた時もジムに通う人は相当減っていましたから運動不足に陥っていた人は多かったのではないでしょうか?
熱中症やコロナ感染は予防できたけれど、運動不足でフレイルになるリスクは高まっているかもしれませんね。