金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ジェロントロジ―(老年学)の箴言集②「老いて学べば、則ち死して朽ちず」

2023年08月19日 | ライフプランニングファイル
 今回のシンポジュウムでは、寺島実郎さん(日本総合研究所会長)がジェロントロジ―について基調講演を行う予定です。寺島さんは「ジェロントロジ―宣言」~「知の再武装」で100歳人生を生き抜く(NHK出版新書)の中で次のように書いています。
  • 「第二の人生」は「第一の人生」と変わらないほど長い。これまで学んできた知識や、仕事で身につけた技術やキャリアがそのまま通用するほど甘くはない。
  • 意識して学び直す「知の再武装」で世界に対する視野を広げ、自分の立ち位置を理解する必要がある。
ここで思い出すのは、江戸後期の儒学者佐藤一斎の「老いて学べば、則ち死して朽ちず」という言葉です。この言葉は「少にして学べば、則ち壮にして為すことあり。壮にして学べば、則ち老いて衰えず」に続いています(言志晩録60条)。
 現代風に読めば「学生時代にしっかり勉強しておけば、社会人になった時立派な仕事が仕事ができる。社会人としてしっかり勉強しておけば、リタイアした後も衰えることなく、ボランティア活動などで活躍することができる。リタイアした後も意識して知の再武装に務めるなら、残された人に好印象をもたらすような人生の幕引きができる」ということです。
 つまり「老いても学び続ける」必要があるのは、超高齢社会だから始まった話ではないのです。
 ところでシニアは何を学ぶべきなのでしょうか?
 私は大きく分けて2つあると考えています。一つは「情報通信技術」や「健康」「終活」などに関わる具体的で目に見える技術や知識の習得です。これをきちんとやっておくのとやらないのでは、後々大きな差が出てきます。
 もう一つは「自分とはなにか」「自分はこの先なにをやるべきなのか」という人間の根幹にかかわるいわば哲学的な思索を深める学習です。
 おそらくここをある程度整理できると死に臨んで必要以上にあたふたすることはないでしょう。逆にこの問題を避けてばかりいると、心の平静を得ることが難しいかもしれません。
 道元禅師は正法眼蔵の中で「仏道をならふというは、自己をならふ也。自己をならふというは、自己をわするるなり。自己をわするるというは、万法に証せらるるなり」と述べています。
 現代風に解釈すれば「仏道(哲学)を勉強するということは、自分を勉強するということなんだよ。自分を勉強するということは、既成概念でガチガチになっている自分を一旦忘れ、素直な眼でモノゴトを見ることなのだよ。素直な眼で現実を見る時、色々なことが自ずから教えてくれるのだよ」ということでしょう。
 こう考えていくと勉強することは沢山ありますね。それをやりがいと感じるか負担と考えるかが最初の分岐点でしょうが。

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マネーマーケットファンドへの大量資金移動も米国株安要因

2023年08月19日 | 投資
 昨日(8月18日)はダウは若干上昇したものの、S&P500、ナスダックとも下落し、8月の株安が続いています。
 米国株のアノマリーに「8月末に買って12月末に売ると利益がでる」というものがあります。8月に株価は下落し、秋から上昇していくという現象を利用した利益狙いの方法ですね。統計データも夏場は株価が下落し、秋から上昇に転じることが多いことを示しています。
 それに加えて、現在の株式市場には2つの大きな逆風が吹いています。一つは中国最大の不動産会社恒大が米国で破産申請を行ったように、中国の不動産業界の不調による中国経済の悪化です。中国経済の停滞はやがて米国経済の足を引っ張るので警戒感が高まっています。一方米国経済そのものは、リセッション入りの懸念が後退し、堅調なのですが、インフレの鎮静化が進まず、連銀が9月のFOMCで政策金利を引き上げるのではないか?という予想が高まっています。
 金利上昇予想は債券金利の上昇すなわち債券価格の下落を招いているのですが、恩恵を受けているのは、投信会社が提供するマネーマーケットファンドです。WSJの記事によるとバンガードなどが提供するファンドの利回りは5%を超えているため、個人投資家など投資家の資金を集めています。記事によると先週360億ドル(5.2兆円)の資金がマネーマーケットファンドに流れ込んだということです。ほとんどリスクくフリーで5%のリターンが得られるので、資金が株式市場に向かわずにマネーマーケットファンドに向かうのも納得できますね。
 インフレに苦しむアメリカですが、インフレに対抗する手段があるのもアメリカ。それはマーケットが生きているからです。それに較べて日本のマーケットは基本的には死んでいます。日本株は少し前まで活況を呈していましたが、2つの大きな問題を抱えています。一つは日銀によるETFの購入や公的年金による大量の株式購入です。これらの資金が相場を持ち上げているので、もしこれらの資金がないとすれば、相場は3割は下落すると推定する人が多いようです。もう一つは米国株高でリスクテイク余力がついた海外投資家が日本株を買っていたことです。
 ほとんどリスクのないマネーマーケットファンドで5%のリターンを得られるなら日本株のエクスポージャーを増やす必要はないと考える投資家も増えるのではないでしょうか?
 いずれにせよ生きているマーケットは色々な投資チャンスを提供するので消費者にもメリットが大きいといえるでしょう。
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