金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

雨具を買い換えた

2010年03月27日 | うんちく・小ネタ

先週は雨が続いて寒かった。その雨の中を登山用の雨具を買いに恵比寿のモンベルに行った。10年以上使っていた雨具はこの前の安達太良山登山の時、かなり防水性が落ちていることが分かったので、買い換えることにした。

古い雨具には愛着があった。夏沢登りに行くと昼間の天気が良くても、夕立にあうことが多い。そんな時は雨具を着てむずかる焚き火の世話をする。だから僕の雨具には微かに煙の臭いがしみついている。ゴアテックスの雨具は雪山でも活躍した。残雪期の山では風を防ぐアウターとして活躍した。僕の雨具には白馬岳・金山沢の胸のすくような大滑降など沢山の思い出が詰まっている。

二代目の雨具もモンベル製にした。モンベルを選ぶ理由は二つある。一つは値段が海外メーカー製より少し安い。本格的な登山用の雨具はゴア・テックス社が特許を持つ防水性と透湿性を兼ね備えたナイロン生地を使っている。いわば一昔前のウインドウズ・パソコンにおけるマイクロソフトのOSのようなものだ。つまりゴアテックスの生地を使っている限り、メーカー別の製品差はそれほどない。

もう一つの理由は日本人の体格に合わせたサイズで縫製している点だ。海外メーカーのものは、手足の長い人には向いているが、私のように胴長短足系には不向きだ。

久し振りに雨具を買いに行って三つのことに気がついた。一つは雨具が上下セットになっておらずバラバラに買うことができるということ。次に雨具がかなり軽くなり、小さく丸めることができること。そして最後はかなり松竹梅ができてきたことだ。

上下セットでない理由は幾つかあるだろう。まずファッション性。一昔前の雨具は上下お揃いで色はブルーなど地味な色が多かった(因みに僕のブルーグレーの雨具を着ていた)。だが「今は上下別々の色が主流です」とモンベルのお兄さんが教えてくれる。そこで僕も写真のように上下別々の雨具を買うことにした。

Goa

上はレッドブリックつまり赤レンガ色で下はブラック。「レスキュー隊みたいで格好良いですね」とモンベルのお兄さんがおだてる。

上下別々の選択ができるもう一つの理由は、上と下で違うサイズの雨具を揃えることができるからだ。僕は上はMで、下はL-Sにした。L-Sというのは、ウエスト周りはLだけれど長さはSつまり短いというサイズだ。こういうサイズが揃っているということは、僕のように手足の短い中高年の登山者が増えている証拠なのだろう。

他のメーカーがこのようなサイズを揃えているかどうかは知らないが、モンベルが胴長短足系のアウトドアマンに優しいことは確かだ。

雨具の上下を別々に揃えることができる最後のメリットは上下で雨具の松竹梅を変えることができる点だ。僕の定義では梅の雨具は「ゴアテックスを使っていない雨具」、モンベルを含めて幾つかのスポーツ用品メーカーは独自開発した生地で雨具を作り売り出している。これらの生地は試験数値ではゴアテックスに比べ、防水性で劣るが、使う目的では十分実用的である。つまり軽登山に万一の雨に備えて持っていく程度の雨具であれば「梅雨具」で良い。

竹と松はゴアテックスの中の生地の厚さ・薄さや伸縮性の違いである。

さてこの松竹梅と雨具の上下がどう関係するかというと、一般に雨の影響を大きく受ける上には、松や竹の雨具を選び、それ程影響は受けない下は値段の安い梅雨具とする手があるからだ。

で今回どうしたか?というと、僕は竹雨具にした。つまりゴアテックス生地の中でパフォーマンス・シェルというポピュラーで安いものだ。残雪期に使うことを考えると「梅」では少し不安が残るからだ。それでも上下で2万5千円程するから登山道具は安くない。

モンベルの店を出た時も強めの雨が降っていた。ふと僕は「この新しい雨具を何年位使うのだろうか?」と思った。10年使うと僕は70歳になっていると思うと少し背中が寒くなった・・・・・。

その夜、自宅のパソコンに大学山岳部の大先輩からメールが届いていた。曰く「3月初めに大腸ポリープを取ったが、この前テストを兼ねて中央線笹子付近で8時間程山を歩いた」。この方は70歳代後半とお聞きしている。

そうなんだ。精進を重ねていればまだまだ山を歩くことができる。新しい雨具を又買い換える積もりで山に登ろうと僕は今考えている。

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「此処彼処(ここかしこ)」を読んでいる

2010年03月25日 | 本と雑誌

「此処彼処」は川上弘美さんの自伝的エッセーだ。ブックオフで偶然見つけたので、会社の行き帰りに読んでいるところだ。このエッセーは数年前日経新聞の日曜版に連載されていた。時々読んでいたが内容はすっかり忘れていた。

川上さんの小説(「センセイの鞄」など)は読んだことがないが、エッセーは文庫本で読んだことがあった。川上さんのエッセーには春霞のような透明感があると僕は思っている。あるいはトイカメラで撮った写真のように、周辺がぼやけて、でも優しくて、レトロな味がある。

「此処彼処」の中に246号というエッセーがある。246号は国道246号のことだ。「お母さんづきあい」がうまくゆかなかった日、川上さんは車を運転して、どこだったか分からないけれど神奈川県の246号を入ったところの農家に出合った。そして農家の裏手の小さな空き地で、真珠ぐらいの小さな白いものを拾った。

それは臼歯だった。

川上さんは臼歯を持ち帰り、今も紅茶の空き缶に入れて持っている。

エッセーは「臼歯を見つけたあの瞬間のぞっとするような違和感を思い出したくて、わたしはときどき空き缶を振ってみる。空き缶の壁に軽く当って、臼歯はからりと音をたてる。人づき合いは、今も下手だ」と結んでいる。

これって本当にあった話なの?と思ったりする。この臼歯について川上さんは「色は少し褪せているが、虫歯の跡のまったくない、手入れの行き届いた、たぶんヒトの、臼歯」と書いている。

普通ヒト(つまり他人)の歯なんか拾って持ち帰り、長く手元に置くものかしら?気持ち悪くないかなぁと疑問に思ったりする。

でもこのちょっとした異様さが「人づきあいは、今も下手だ」と呼応している。臼歯を大事にしているような人は人づきあいにはなじまないような気がする。

恐らく僕は川上さんほど人づきあいは下手ではないだろう。少なくとも家族や友人はそう思っているだろう。だが時々一人の時間を楽しみたいと思うことがある。恐らく大部分の人と同じように。

そんな時僕は神代植物園や奥多摩の山を歩いている。臼歯を見つけることは無理だろうから、「此処彼処」をポケットに入れて行き、小さなベンチか切り株の上で読んでみようかなと考えている。

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元が決済通貨になる日

2010年03月25日 | 金融

今日(3月25日)の日経新聞朝刊に「日本のインキ最大手のDICが日本と中国の間の貿易決済で初めて人民元建ての決済を行った」と報じていた。中国政府は人民元の国際化に向け昨年7月、貿易決済に人民元建てを一部解禁した。

ご承知のとおり人民元は一部の例外を除いて、他の通貨と自由に交換することができない。このため決済通貨として利用されることはなかった。だが中国の台頭と米ドルの緩やかな低落が予想される中で、人民元はやがて主要な決済通貨になると予想されている。

その時期は何時頃なのだろうか?

少し前に読んだWhen China rules the world(中国が世界を支配する時)は、この問題について以下のように述べている。

「人民元の兌換性は5年から10年の間に改善し、2020年までに人民元は完全に兌換性を備え、米ドルと同様に売買することが可能になる」

「その時までに総てではないにしろ、多分日本も含めて、大部分の東アジアは人民元システムの一部分となるだろう」

「中国が東アジアの主な貿易相手国であることを考えると、人民元建てベースの取引を行うことが自然であり、東アジア諸国にとって自国の通貨をドルにペグするより、人民元にペグする方が自然である」

そして同書は人民元が完全に兌換性を備えた時、人民元は米ドル、ユーロとともに、主要な準備通貨となるだろうと論じている。その時期については恐らく20年から30年以内に起こる可能性が高いと見ている。

☆   ☆   ☆

20年というと先の話に見えるが、中国4千年の歴史を尺度とすると、瞬きをする間の時間だろう。もし中国の指導者達が、人民元を決済通貨にするメリット~米国はドルを決済通貨としたことで莫大なメリットを得てきたが~を理解していて、そのために何をしないといけないかを把握しているとすれば、目先の人民元安問題に目くじらを立てる必要はないのかもしれない。

むしろ日本は人民元が東アジアの決済通貨になる時、どのような影響を受けるのかを考える時期なのかもしれない。

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三菱UFJとモルガン・スタンレーのJV難航

2010年03月24日 | 金融

FTに三菱UFJ(MUFG)とモルガン・スタンレーの証券ジョイントベンチャーの交渉が難航しているという記事が出ていた。私はこのディールそのものに詳しくなくそれ程の関心もなかったのだが、三菱UFJについては多少関心があるので、記事の内容を紹介したい。

私が三菱UFJについて多少関心があるのは、3つの理由があるからだ。まず僅かながら同社の株を持っている。残念ながら含み損になっているが。これは同行の業績がぱっとしないというよりは高値で株を買った私の見識不足ゆえなのだろう。

次に三菱銀行出身の末吉竹二郎氏(当時支店長)と昔ニューヨークで一緒にディールを取り組んだことから(正しくいうとディールに誘って頂いたから)、同社にある種の親近感を持っている。末吉氏は「みのもんたの朝ズバッ」などで金融・環境問題コメンテーターとしてご活躍中だ。

最後に私のブログの読者の中に同行の方がいらっしゃり、時々ためになるコメントを頂く。

さてFTの記事に話を戻すと情報源はモルガン・スタンレーのようだ。

リーマン・ショックの最中、モルガン・スタンレーは2008年10月、MUFGに株式持分21%を90億ドルで譲渡した。両行は今年の5月に日本で証券業務を始めるため、二つのジョイント・ベンチャーを発足させる予定だが、条件交渉が難航している。

何故「二つ」のジョイント・ベンチャーを作る必要があるのか理由は分からないが、FTはregulatory issues resulted in the creation of two joint venture companiesと述べている。とまり「元々の合意事項は両行の日本にける証券業務を統合するというものだが、規制上の理由により二つの会社を設立結果となった」という訳だ。

二つの会社の主たる株主はMUFGだが、二社の内の一社はモルガン・スタンレーの現在のオペレーションを引き継ぎ、モルガン・スタンレーがコントロールするという。

両行の従業員を統合する唯一の部門は投資銀行部門だが、モルガンのインベストメント・バンカーは引き続き、モルガン・スタンレーに採用され、ジョイント・ベンチャーに一時的に配置換えされる。両行は別々のキャピタル・マーケットやセールス・スタッフ、トレーディング・チームを持ち、情報システムの統合も行わない予定だ。

素人意見ながらこれでは何のためのジョイントベンチャーなの?という気がしてくる。

事情通によるとモルガン・スタンレーはこのディールに以前ほど熱意を持っておらず、三菱側はディールを有利に運ぶ上でプレッシャーを受けているということだ。

☆   ☆   ☆

私事になるが、この10年強の間、会社の合併やジョイントベンチャーへの参加、あるいは会社の譲渡などを経験してきた。会社の存続に危機感を覚える時は、関係者は小異を捨てて大同を求める。しかし危機が去ったと思うと色々な意見が噴出し、合併の効果を刈り取ることが難しくなる・・・ということを体験した。

MUFGやモルガン・スタンレーという一流の金融機関にしても、このような法則?から逃れることはできないということだろう。いや一流であるが故により主張が対立したり、丁々発止の駆け引きが展開されるというべきだろうか。

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米国の医療改革法案は出発点に過ぎない

2010年03月23日 | 国際・政治

先週日曜日(3月21日)米国の医療改革法案が僅差で下院を通過した。今日にもオバマ大統領が法案に署名するといわれているから、法案が成立することは確実だ。この法案に民主党側は「1960年代の公民権法に匹敵する出来事」と評価する一方、共和党は一丸となって反対している。また世論調査では消極的反対を含めると反対意見が多い。私にはこの法案について色々分からないことが多い。何故分からないことが多いかというと、この法案そのものや成立過程に、アメリカ人の医療や社会保険に関する考え方、議会の仕組みなど知らないこと、分からないことが沢山詰まっているからだと思う。

また医療保険制度そのものが分かっていないことも大きな問題だ。医療保険制度というものは自国の制度についてもよく分かっていない。例えば日本に長期入院などで医療費が高額になる場合、一定の自己負担限度額を超えた額が払い戻される高額療養費制度http://www.sia.go.jp/seido/iryo/kyufu/kyufu06.htmという制度がある。この制度は数年前入院するまで知らなかった。

このことから類推するに、恐らく「今回の医療改革法案で何が変わるの?」ということについて大部分のアメリカの消費者はよく知らなかったのではないだろうか?そして漠然と「全員加入の健康保険になると保険料が増えるあろう」と考えていたのではないだろうか?

だからニューヨーク・タイムズに出ていた「消費者のために保険制度の変更点を明らかにする」For consumers, clarity on health care chagesというような記事の閲覧件数が多いのだと私は考えている。

【医療保険改革、何がどう変わるのか?】

まずはっきりしていることから幾つか例を上げよう。まず子供の保険加入年齢制限が引き上げられる。現在の健康保険(すべて民間)では、概ね子供の加入年齢は18歳か19歳までになっているが、これが26歳に引き上げられる。若者の非就業者が増えているので、助かる家族は多いと思われる。

次に法律が発効して3ヶ月以内に、慢性病等で保険会社から保険加入を拒絶されていた人は、「高リスク保険プログラム」に加入することができる(高い保険料は補助の対象となる)。

2014年から所得税の課税対象になる以上の所得がある人は、保険に加入する義務が発生する。保険に加入しない人には95ドルまたは所得の1%(いずれか高い方)の罰金が科せられる。これより所得の低い層で65歳以下の人は連邦政府の保険制度であるMedicaidに加入することができる。Medicaidは従来からある制度だが、対象者が「貧困レベルの所得の133%または約2万9千ドルの所得」に拡大した。

これよりやや所得の高い層(貧困レベルの所得の133%から400%)は、公的支援を受ける「保険取引市場」で補助金を受けて、保険に加入することができる。

【変わらないことは?】

大企業に勤めて、会社が手当てする健康保険に加入している人々には大きな変化はなく、保険料や保険範囲が異なることはない。会社を辞めて個人で保険に入る場合など、慢性病による謝絶を受けるリスクがなくなるのでプラス面が多い。

【改革で負担が増える人は?】

改革で負担が増えるのは、富裕層だ。例えば年収25万ドル以上の家計は「投資収入」に対して3.8%の税金を課せられる。また2018年からは従業員に「高額医療保険」(従業員個人に10,200ドル以上か家族込みで27,500ドル以上)を付与してる企業は超過保険料に対して40%の税金が課せられる。

【では総医療費は増えるのか抑制されるのか?】

ここが一番分からないところだ。分からないのは私だけではない。専門家も分からないと言っている。タイムズはThe legislation won't quickly bend the cost curve for medical care or insurance premiums-no one has yet found a surefire way to do thatと言っている。

タイムズは中期的に見て医療費削減の有力な武器は「高額医療保険」に対する課税措置だと論じる。つまり金のある企業が従業員に高額な保険を付与する。従業員は自己負担がほとんどないので、医者にかかった時高額な治療法法を選択する(あるいは医者が高価な治療法を推薦する)。しかし企業が課税を避けるため高額な医療保険を抑制すると、患者や医者は、もっとコストを考えて治療法を選択するようになるという訳だ。

連邦議会予算事務局(超党派)は、今回の法改正で向こう10年で9,400億ドルのコストがかかるが、それは収入で相殺され、向こう20年では1兆ドルの赤字削減効果があると主張している。

しかしこの推計には反対意見も多い。エコノミスト誌は共和党議員Ryan氏の「医療保険改革は財政のフランケンシュタインで、10年間のコストは9,400億ドルではなく、2兆4千億ドルだ」という主張を紹介している。

重ねて言うがこの法案について私には分からないことが多い。いや将来に医療費がどうなるかを中心に分からないことが多いから、米国で議論が二分するのである。

「この法案の長所は保険対象者を拡大することにあるとすれば、弱点は医療コスト抑制効果である」とエコノミスト誌は総括する。民主党寄りのタイムズも「医療改革法案はゴールではなく、出発点に過ぎず、保険料と医療費抑制は今後の努力による」と述べている。

☆    ☆    ☆

個人的な経験を一つ述べると私は米国で勤務していた時、腎臓結石を超音波で砕く治療を受けたことがあった。腎臓結石は渡米する前から患っていたが、当時の日本では「超音波療法」は健康保険外の治療で100万円かかるといわれていたので見合わせていた。渡米後結石が再発したので、医者に行くと早速「超音波」ということになった。会社が提供する保険制度に入っていたので余り大きな負担がなく、治療を受けたことを思い出した。

民間保険制度が医療費を押し上げていることは確かだが、医療技術の進歩や痛みのない快適な生活に貢献~日本にいた時は結石が痛むと痛み止めを飲んでいた~も事実だ。

今日本では保険診療と保険外診療の混合=混合診療http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B7%E5%90%88%E8%A8%BA%E7%99%82を解禁しようという主張が目立ってきた。

米国が「国民皆保険」に向けて一歩踏み出す時、日本が混合診療解禁に向かうと両国の制度は正常化に向かう・・・と私は思うのだが・・・・

コメント (2)
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