昨日(3月15日)のFTによると、米国で130名の国会議員がガイトナー財務長官とゲイリー・ロック商務長官に「来月の為替政策報告書で中国を外為操作国に指定するべし」という文書を送った。「これはかって見たこともないほどの国会議員の超党派的意気込みだ」とある議員は述べている。
この米国議会の意気込みに冷やし玉を入れているのが、エコノミスト誌のYuan to stay coolという論説だ。エコノミスト誌は「元高を促進するため、米国の政治家ができる最良のことは、冷静さを保つことだ」と主張する。
主旨は次のとおりだ。
- 人民元のドル・ペグを速やかに終わらせることは、中国とともに全世界にとって経済的に意味がある。より強くてフレキシブルな通貨により中国はインフレと資産バブルをコントロールすることがより容易になるだろう。元高は中国の消費者の購買力を高め、内需を拡大し産業界の過大投資を抑制するだろう。その結果中国経済は輸出依存から内需依存へバランスを修正することになるだろう。
- だがこれは中国にとってもそれ以外の国にとっても特効薬ではない。中国のリバランスには、強い通貨とともに税制から企業統治に至るまでの大きな構造変革が必要だ。強い元はたちどころに米国に数百万人の職を復活させるものではないだろう。米国は中国から輸入しているものをもはや国内生産はしていないので、元高は最初は消費者に対する税金のように作用するだろう。
エコノミスト誌は「9.7%という高い失業率が続く中で、中間選挙を迎える米国ではチャイナ・バッシングの声が起きている」と指摘する。しかし議会の動きはプラスの効果は生まないだろうと予想し、「米国は二国間でゴタゴタを起こすより、G20で他の大国にも中国に人民元高を要求するように同調を求めることがより良い結果を生むだろう」と結論つけている。
選挙が近づくと、選挙民に受けの良いアピールを行うことはどの民主主義国家も同じこと。ついこの前までは、大恐慌の崖っぷちにいたので、中国に景気回復の先導者になってもらうことを期待してチャイナ・バッシング論は影を潜めていた。しかし米国の景気回復が鮮明になるにつれ、バッシング論が再び勢いを盛り返してきた。
うがった見方をすると、それだけ経済の先行きにユトリが出てきたということだろうか?