昨日中国は2010年度の名目GDPを発表し、日本を抜いて世界第2位の座についたことが明らかになった。世界のGDPランキングの次の関心事は「いつ中国は実質GDPで米国を抜くか?」ということだろう。
日経新聞は米国ピーターソン国際研究所の試算では中国の購買力平価(PPP)ベースのGDPは既に米国を越えているというコメントを紹介している。
だがこれは少し極端な見方ではないだろうか?米国のCIAがインターネットで公表しているWorld Fact Bookによると、中国の2010年のPPPベースのGDPは9兆8540億ドル(2010年推定値)で、米国の14兆890億ドル(2010年推定値)の66%である。
この数値を信頼する場合、中国はいつ米国に追いつくか?ということを簡単に計算してみた。
中国の今後の経済成長率を10%、米国の成長率を3%とした場合、6.1年後に両国の実質GDPは17兆63百億ドルで拮抗する。また中国の経済成長率を9%(米国はそのまま)とすると、拮抗するのは7.1年後だ(これらの計算はエクセルのゴールシークで直ぐできる数字の遊びだが)。つまり中国の今後の経済成長率を9-10%、米国の成長率を3%とすると、中国が実質ベースのGDPで米国を抜いたと認識されるのは7,8年後という一つの推計が成り立つ。
ところで中国の足元の経済成長率とインフレ率について。
FTによると中国の2010年最終四半期の成長率は9.8%だったが、通年の経済成長率は10.3%だった。一方インフレ率については、通年で中国政府がターゲットとする3%を上回る3.3%。インフレを牽引したのは食料品で年間7.2%上昇。
12月のインフレ率は過去2年で最高のインフレ率となった11月の5.1%から4.6%に低下した。しかしアナリストは比較対象の前年の物価レベルが既に高かったので、インフレコントロールは必ずしも効果をあげていないと評価している。
インフレを牽引するもう一つの要素は人件費だ。広東州は最近最低賃金を18%から26%引き上げると発表している。しかし香港を拠点とするある支援団体は「今回の給与引き上げは労働力不足の解消には不十分ではないか」という見解を述べている。
このような状況下、株式市場は中国政府がインフレ抑制のため、金利引き上げを行なうという観測から大きく売り込まれた。
中国経済が大きくなるに伴い、世界の株式市場に与える影響も大きくなっている。