金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国が実質GDPで米国を抜くのは7-8年後?

2011年01月21日 | 社会・経済

昨日中国は2010年度の名目GDPを発表し、日本を抜いて世界第2位の座についたことが明らかになった。世界のGDPランキングの次の関心事は「いつ中国は実質GDPで米国を抜くか?」ということだろう。

日経新聞は米国ピーターソン国際研究所の試算では中国の購買力平価(PPP)ベースのGDPは既に米国を越えているというコメントを紹介している。

だがこれは少し極端な見方ではないだろうか?米国のCIAがインターネットで公表しているWorld Fact Bookによると、中国の2010年のPPPベースのGDPは9兆8540億ドル(2010年推定値)で、米国の14兆890億ドル(2010年推定値)の66%である。

この数値を信頼する場合、中国はいつ米国に追いつくか?ということを簡単に計算してみた。

中国の今後の経済成長率を10%、米国の成長率を3%とした場合、6.1年後に両国の実質GDPは17兆63百億ドルで拮抗する。また中国の経済成長率を9%(米国はそのまま)とすると、拮抗するのは7.1年後だ(これらの計算はエクセルのゴールシークで直ぐできる数字の遊びだが)。つまり中国の今後の経済成長率を9-10%、米国の成長率を3%とすると、中国が実質ベースのGDPで米国を抜いたと認識されるのは7,8年後という一つの推計が成り立つ。

ところで中国の足元の経済成長率とインフレ率について。

FTによると中国の2010年最終四半期の成長率は9.8%だったが、通年の経済成長率は10.3%だった。一方インフレ率については、通年で中国政府がターゲットとする3%を上回る3.3%。インフレを牽引したのは食料品で年間7.2%上昇。

12月のインフレ率は過去2年で最高のインフレ率となった11月の5.1%から4.6%に低下した。しかしアナリストは比較対象の前年の物価レベルが既に高かったので、インフレコントロールは必ずしも効果をあげていないと評価している。

インフレを牽引するもう一つの要素は人件費だ。広東州は最近最低賃金を18%から26%引き上げると発表している。しかし香港を拠点とするある支援団体は「今回の給与引き上げは労働力不足の解消には不十分ではないか」という見解を述べている。

このような状況下、株式市場は中国政府がインフレ抑制のため、金利引き上げを行なうという観測から大きく売り込まれた。

中国経済が大きくなるに伴い、世界の株式市場に与える影響も大きくなっている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガーラは一日雪でした

2011年01月20日 | インポート

1月20日ガーラは一日雪で時々吹雪いていました。午前中は圧雪されていない斜面に挑み、昼からはスキースクールで回転前の谷足荷重による回転練習を繰り返しました。これができるとスキーが走ります。4時前に新幹線駅まで滑り込み、温泉に入って、5時3分の新幹線に乗るという慌ただしさ。 情緒はありませんが、効率的にスキーをするということではガーラにまさるところは少ないでしょう。写真は午後4時半のガーラ(新幹線駅の横)の写真です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の5つの神話(1)~共産党支配は永続するか?

2011年01月19日 | 国際・政治

胡錦濤主席の米国訪問を前に色々なメディアで中国論が紙面を賑わしている。外交専門誌Foreign PolicyにはFTの前北京支局長のRichard McGregor氏が「中国の5つの神話」という記事を書いていた。

その一番最後がThe party can't rule forever「共産党支配は永続しない」というタイトル。このテーマに対して、McGregor氏はYes it canと答える。つまり少なくとも予見可能な将来において共産党支配が続くというのが同氏の意見だ。

その理由は台湾や韓国と違って、中国の中産階級は西洋式の民主主義に対する要望を持って登場していないということだ。韓国、台湾、日本という極東の隣国は異なる時期に民主化しているが総て米国の保護と指導の下で民主化が進められたと同氏は解説する。

もっとも日本の場合、第二次大戦の前に「大正デモクラシー」という時期もあったから、McGregor氏の意見は少々大雑把かもしれないが、それは主要な論点ではないので脇に置いておこう。

同氏は中国の都市部の中間層にとって漠然とした民主主義という概念よりも、自動車、不動産という形の消費の自由の方がより魅力的である。より多くの政治的自由を求める中間層がいるかもしれないが、彼等は政治改革を求めて現在手に入れているものを失うことは望まない。

また共産党の中には幾つかの党派があり、政治的課題について議論が行なわれている。

同氏は「中国がある日民主主義になるだろうというのは、政治システムの進化に関する西洋的な概念の産物だが、今のところ総ての証拠はその説が間違っていることを示している」と結んでいる。

☆   ☆   ☆

中国共産党を事実上の一党独裁を続けた日本の自民党との対比で考えるのは、政治学のプロから見ると笑われるかもしれない。だが幾つかの共通点はある。つまり国が高度成長時期にある時、出現した中間層は政治よりも豊かな消費生活を求めた。経済成長は様々な矛盾が政治的イシューになることを防いだ。

もっとも国や企業の幹部の人事権を握る中国共産党の支配力は自民党のそれよりはるかに強大である。

以上のように考えると、中国の経済成長が続く限り共産党支配が持続する可能性は高いと判断するべきだろう。逆に共産党支配が終わる時があれば、それは民主主義へのトランジションではなく、カオスへの転落ではないか?と私は想像するがそれは直感の域を出るものではない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾、ミサイルで存在感を訴えるも半分失敗

2011年01月19日 | 国際・政治

今夜(19日)ワシントンでは胡錦濤主席を国賓とする晩餐会が催される予定だ。その前日台湾は久しぶりに、19発の空対空及び地対空ミサイルテストを行なった。その結果は19発の内、6発は目標を外すというもので、馬英九総統は結果に不満で軍部に訓練の改善を求めた。

馬総統は「ミサイルテストは胡錦濤主席の訪米とは関係ない」とコメントしているが、額面どおり受け取る人はいないだろう。FTは台湾海峡問題のエキスパートの「これは台湾が未だ存在し、一つの要因であるという政治的なサインだ」という言葉を紹介している。

台湾は今回のミサイルテストを踏まえて有効な抑止力を保つためには米国の支援が必要だと今後主張することが予想される。

そういう意味では軍事的には失敗だが政治的にはそれなりの意味があるテストだったのだろうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカ人は中国をどう見ているか

2011年01月18日 | 国際・政治

今日(18日)胡錦濤主席が訪米する予定だ。前回彼が訪米したのは2006年。この時米国は胡錦濤主席の訪問を公式訪問(official visit)として取り扱ったが、今回は国賓としての訪問(state visit)として取り扱う。Official visitとState viitで待遇がどれ程違うのか知らないが、金融危機以降米国にとって中国の重要性が大きく増したことの表れであることは間違いない。

Pew Researchが胡錦濤主席の訪米を前にして、米国人が中国をどのように見ているかを調査していた。日本の重要なパートナーがどのような考え方をしているか、理解しておくことは大事なことだと思うので、幾つかのポイントを紹介したい。

【アメリカ人の半分は中国に好意的だ】

2010年Pew Researchが行なった調査によると、アメリカ人の49%は中国に好意的で、36%が非好意的である。この調査によると中国に対して最も非好意的な国は日本で69%の人が非好意的で、好意を持っている人は26%に過ぎない。因みに中国に対し非好意的な主な国は次の通りだ。韓国(非好意の割合56%)、ドイツ・トルコ(共に61%が非好意)、フランス(同59%)、インド(同52%)。

一方好感が非好感を上回っている国はケニヤ(好感の割合86%)、パキスタン(同85%)、ロシア(同60%)、インドネシア(同58%)。欧州では英国(同46%)やスペイン(同47%)では好感する人の方が多い。

【中国は世界一の経済パワー】

アメリカ人の47%は中国を世界一の経済パワー国だと見ている。2番目は米国で31%の人が自国を世界一と見る。3番目は日本。9%のアメリカ人は日本を世界一の経済パワー国だと見ている。そしてEUは4番目。

一方軍事力については、自国が世界一だと思うアメリカ人の割合は67%で、中国だと思う人は16%に過ぎない。3番目はロシアで5%だ。

【中国を脅威と考える人は2割】

中国はアメリカにとって一番脅威国だと考える人は20%で、北朝鮮(18%)、イラン(12%)、アフガニスタン(10%)を上回る。ところで脅威国調査で面白いのは、米国自身を最大の脅威国と考える人が4%もいるということだ。4%という数字はパキスタンと同じで、日本を脅威国と考える人(1%)の4倍である。

Pew Researchによると過去アメリカ人が中国に最も脅威を感じたのは2001年で、31%の人が中国を最大の脅威国に上げている。この年の4月に米中軍用機の接触事件があり緊張が高まった結果である。

ところでPewの過去の調査を見ると、1992年には日本が米国の最大の脅威国だった。31%の人が日本を1位に上げていた。この年の2番目はロシアで13%。ロシアが米国の最大の脅威だったのはソ連が崩壊した1990年(それ以前の調査は不明)で、32%の人が第1位に上げていた。

【中国は容易ならない問題だが、敵対視する人は2割】

現在中国を敵対視する人の割合は22%で、シリアスな問題だが敵対視はしないという人が43%で、シリアスな問題ではないとする人が27%だ。この数字は若干の変動はあるものの、比較的安定している。

☆   ☆   ☆

中国に対するアメリカ人の見方は、その時々の経済・政治・軍事イベントで変化している。だが基調として日本の中国に対する見方よりかなり好意的であることは十分留意しておくべきだろう。

軍事力については、Pew Researchの調査時点では、中国の地対艦ミサイルDF-21の脅威が広く知られていなかったのではないだろうか?もっとも現在でも広く知られているかどうか不明だが。

この地対艦ミサイルは中国本土から太平洋上の米空母を攻撃することができる弾道ミサイルで、イージス艦の防空網をかいくぐる能力があると推測されている。つまり圧倒的な米国の軍事力にとって最大級の脅威なのだがまだそれ程知られていないのだろう。

それはさておき「アメリカの世論が中国をどう見ているか?」ということを念頭に置きながら、米中首脳の外交劇を眺めてみたいと思っている。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする