「金は天下の回り物」というが、投資家の資金はめまぐるしく世界を回っている。
昨年5月に米連銀が債券購入プログラムの縮小を示唆してから、それまでエマージング市場に流れ込んでいたホットマネーが流出し、新興国の株式パフォーマンスは先進国に比べて大きく悪化した。また今年に入ってアルゼンチンのペソやトルコリラが急落したことも痛手になっている。
日本株も年初来12%ほど下落しているが、その大きな理由は外国人投資家が日本から資金を引き揚げていたことによる。日本株は中国など新興国経済の代理指標になっているのだろう。
だがCNBCによると目端のきいた投資家は再びエマージング市場に資金を戻し始めている。キャピタルエコノミストによると、先月4月は過去1年間で初めてエマージング市場のETFと投資信託で資金流入がプラスになった。
資金はエマージング市場全般に流れ込んでいるというよりは、インドやインドネシアなど特定の国に流れているようだが、それでもエマージング市場全体のパフォーマンスは先進国のそれと拮抗してきた。
もっとも中国経済にはハードランディングするリスクがあるので、大方の人はエマージング市場全体が先進国のパフォーマンスを上回るとは考えていない。
日本株については、4月の消費税引き上げによる景気減速が予想より少ないのではないか?という見方広がりつつある。日銀のインフレ予想は市場予想より強気で今のところ2015年に2%の目標を達成することに自信を持っていると思われる。
とすれば早期にこれ以上の金融緩和が行われる見込みは高くないが、仮に特別の支援なく消費税引き上げを乗り切ることができるとすれば、長期的に投資家にはプラスの話であろう。
金は再び日本にも戻ってくるかもしれない。
杏と上川隆也が主演する日テレのドラマ「花咲舞が黙っていない」をほぼ毎回見ている。どこかで「その業界にいる人は業界もののテレビドラマを観ない。たとえば警察官は警察ものは見ないし、新聞記者は記者ものを観ない。それはリアリティの欠如にイライラするからだ」という趣旨の随筆を読んだことがある。この仮説?が正しいとすれば、私は「花咲舞」を観ないことになるが、実際のところは、結構楽しみながら番組を観ているのである。
この番組の人気の一つはオチの予想のつき易さと水戸黄門的勧善懲悪に視聴者がカタルシスを感じるからである。これに加えて私はリアルと誇張の程よいバランスを上げたいと思っている。
数回前の話はあるベテランテラーが支店長のパワハラを告発するため、店頭で現金を過払いしたように見せかけ、実は札束を一つ(100万円)を隠し持ってしまうというものだった。現金不足を解消できない支店長は次長と語らって自腹を切って100万円を埋める。自腹で銀行の不足資金を埋めることは重大なルール違反。やがてこのことが発覚して支店長は更迭されるというものだった。
さてこの話のリアリティについて検討してみよう。既に時効になっている話だろうから、自分の経験を語ると私が15年ほど前に支店長として赴任したN支店は営業成績はそこそこ良かったが、内部管理面では最低ランクだった。その理由は直前の事務検査で早期改善が求められる最低点になっていたからだ。事務検査で大きなマイナスとなったのは、現金の入った手持ち金庫をカウンターの内側の棚に放置したまま店を閉め、翌朝抜き打ちの検査部検査でそれが発覚したことにある。そして手提げ金庫の放置はテラーのうっかりミスではなく、検査部検査で罰点を食らうことを狙った故意の行動だったのではないか?という噂が残っていた。なぜ検査で罰点を食らうようなことをしたか?というと前支店長のテラーたちの接客業務に対する無理解とパワハラにテラーの一部が反旗を翻したという解釈が噂されていた。
その後、前支店長は別の少し大きな店に転出したのが「花咲舞」と違うところだが、私が行員たちの不満を聞いて、モラール改善に努力したから検査部検査の罰点もそれなりの意味があったのかもしれない(笑い)。
現実の世界は複雑なもので、一つのマイナスだけで支店長が降格されるとは限らない。
ということで「花咲舞」の話は出来過ぎの感はあるが、支店長の理不尽な行動に行員が故意に重大なルール違反を犯し、検査部等本部の注意を引くという行動にでるということに私はある程度リアリティを感じている。
ついでにいうと「花咲舞」には自分の出世のために、平気でウソをつき、部下を踏みつけるような上司・支店長が頻繁に登場するが、このような例は枚挙にいとまがないほど多い。つまりこちらはもっとリアリティが高いということだ。
リアリティが高いから視聴者は「お言葉を返すようですが」から始まる花咲舞の決め台詞にカタルシスを感じるのだろう。
ぺんてるのAirpenが格安で売られていたので、衝動的に買ってしまったことは以前ブログに書いた。そのAirpenの一つの使い方として思いついたのが、「山の写真から鳥瞰図を手書きする」というものだ。
添付ファイルは世界最高峰のエベレストの手書き鳥瞰図である。もとの写真でWSJに載っていたもので、地名は英語、高さはft表示である。この写真をパソコンに接続したAirpenでなぞりながら、手書き鳥瞰図にして山名をカタカナにしてみた(半出来だが参考までに)。
このように写真をもとに手書きのイラストを作り、そこに文字を書き込んでいくというような場合にAirpenを活用することができそうだ。
もっともこのようなneedsがどれ位あるかはわからないが。
ロイター等によると先週金曜日(5月23日)40歳の中国人女性Wang Jingさんが、4月の大規模雪崩事故以降初めてエベレストに登頂した。
Wangさんは雪崩事故でルートが破損して通行できなくなっているクーンブ氷河を避けて、ベースキャンプからキャンプ2(標高約65百メートルほど)までヘリコプターで登り、そこから登頂したという話だ。
キャンプ2といえば昨年三浦雄一郎さんが下山時にふらふらになりヘリで下山した場所だ。
ネパール政府は緊急時を除いてヘリコプターの利用を環境保護の観点から禁止している。しかしロイターによるとネパール観光局のDependra Poudel氏は「Wangさんは今シーズン初めてのエベレスト登頂者になった。これは歴史的な登山だし、ネパールの登山ツーリズムにとってポジティブな出来事だ」「これは雪崩事故の後エベレストが閉ざされていないということの証拠だし、今後もエベレストは閉ざされないだろう」と述べている。
もしPoude氏の発言が観光局の公式発言だとすると、今後はベースキャンプからキャンプ2の間の危険なアイスフォール帯の通過を避けるべく、ヘリ利用が一般化する可能性が高いことを示唆するし、シェルパのエベレスト登山ボイコットで外貨獲得源に悩むネパールにとって一つのソリューションを提供するかもしれない。
今年4月18日の雪崩事故では13名のシェルパ(シェルパ族のガイド)とシェルパ族以外の3名のガイドが死亡・行方不明になった。その後シェルパたちは仲間を弔うため、あるいは政府の補償に対する不満等から今年のエベレスト登山へのガイドをボイコットした。今やシェルパのガイドなしでは外国登山隊はエベレストに登ることは不可能だから、必然的に今年のプレシーズンの登山隊はエベレスト登山をあきらめた。
そんな中突然飛び込んできたWangさんの登頂ニュース。記事によると5名のシェルパが同行したという。多くのシェルパが今年のエベレスト登山をボイコットする中でなぜ5名のシェルパが中国人登山者に同行したか記事に説明はない。説明はないが、彼らがなんらかの理由で現金を稼ぎたかったことは容易に推測できる。エベレストに行くとシェルパはガイドとして1シーズンに5,000ドルほど稼ぐことができると言われている(ベースキャンプのコックでも2,500ドルは稼ぐという)。これはネパール人の平均年収が700ドル程度であることに較べれば大変な現金収入だ。
もう一つ着目しておくべきことは、シェルパの死亡事故がベースキャンプとキャンプ2の間で非常に高いことである。つまり危険なクーンブ氷河のアイスフォール帯のルート工作と荷揚げで雪崩に巻き込まれたり、氷河の崩壊で落命するシェルパが非常に多いということだ。
エベレスト登山が始まった1921年以来265名がエベレストで命を落としていて、シェルパとその他ポーター等の落命者は104名。シェルパたちの最大の事故原因は雪崩である。一方登山者の最大の死亡事故原因は滑落で、高所では死亡事故に占める登山者の割合が圧倒的に高い。また凍傷・疲労で死亡したシェルパはわずかに1名だが、登山者は42名が死亡している。高所民族のシェルパは高度に強いのである。
つまりキャンプ2まで登ってしまうとシェルパにとってはエベレスト登山のリスクは大幅に減じると判断したのではないか?と私は考えている。
ネパールのGDPの4%を担うと言われている登山収入の確保はネパール政府にとっても大きな課題だ。その点からエベレスト登山にヘリ利用を利用する、という方法が広く導入されるという可能性があると私は推測している。
しかしそれが良いのかどうかは悩ましい問題だ。一つは環境保全の問題でもう一つは登山者の安全の問題だ。登山者の安全というのは高度順化の問題である。いきなり標高65百メートルから登山を開始すると高山病にかかる可能性大だ。このレベルの標高に達すると一度ベースキャンプに戻り高度順化をする必要があるからだ。(Wangさんがどのようにして高度順化したか興味のあるところ)