金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

日本株、まだ外国勢は腰が入らず

2015年03月18日 | 投資

相場の格言に「節分天井彼岸底」という言葉があった。これは米相場から来た格言で2月始めに天井をつけた相場は3月の彼岸には底まで下落しているというものだ。今のところこの格言は今年の日本株相場には当たっていないようだが、ひょっとすると、3月下旬頃までに少し下げる局面があるかもしれないという気がしないでもない。米連銀の政策金利引き上げ見通しが引き金になるか?日銀の追加緩和見送りが引き金になるか?何が引き金になるかは分からないが・・・・個人的には少しポジションを軽くしておこうと思っている。

今年に入って相場を大きく牽引してきたのは、GIPFなど年金基金の現物株買いだった。一方外国勢の現物株買いは少なく、彼らはもっぱら日本株の先物買いで様子を見ている。

みずほ総研の武内浩二シニア・エコノミストによると2月に外国勢は2.1兆円近い日本株の先物を買ったが、現物の買いは1,900億円にとどまるという(CNBCによる)。

そこで「外国勢は腰が入らず」とタイトルをつけた次第。すばしっこい外国勢は昨年10月の日銀の追加緩和に機敏に反応して、日経先物に巨額の買いを入れたが、12月には素早く利食った。それが相場観なのかヘッジファンドの決算に絡むものなのかは分からないが。

外国勢が大きな現物株買いに動かないのは、まだ日本のデフレ脱却に懐疑的だからだろう。

一方アナリスト達は総じて日本株に強気だ。日経平均の次のターゲットは2000年4月20日に高値をつけた20,884円だという。また今年年央には21,000円に到達すると期待するという声も聞かれる。だが果たして相場はそんなに一本調子に上がるものなのだろうか?

相場には天井が近づくと天井が低く見え、底が近づくと底が深く見えるという性質があるという。もしこの言葉が正しければ、天井が低いと感じ始めた時は要警戒なのだが・・・・

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

相続争い(争族)とオレオレ詐欺、日本の特徴?

2015年03月17日 | 投資

来月早々「円満な相続を進めるポイント」というスピーチをするので、日本の相続(争族)問題のことをあれこれ考えていたら、ふと「争族問題とオレオレ詐欺の間には、ある日本固有の財産意識があるのではないか?」という気がしてきた。

日本固有の財産意識とは何か?というと、「親の財産の相当部分は相当子どもや孫に相続される」という意識である。その意識は当然ながら、民法が定める法定相続分に由来する。配偶者が亡くなった時、相続人がもう一人の相続人(生存配偶者)と子どもであれば、生存配偶者が半分、残り半分は子どもの頭数で均等配分するというのが、法定相続の考え方だ。

子供たちは、親の遺産に対して法定相続分は受け取れるという期待権を持っている。だから何らかの理由で「長男が遺産の分け前を沢山取ろうとした」などということが起きると相続争いが発生する訳だ。

オレオレ詐欺についていうと、「親や祖父母たちの中に、自分の財産は自分が死んだら、子どもや孫に行くのだから、子や孫が困っている今お金を出してやろう」という気持ちが親は祖父母の間にあるのだろうと私は推測している。

さて相続争いやオレオレ詐欺が米国など諸外国でもあるのかどうか調べてみた。まずオレオレ詐欺についてはほとんどニュースで見かけないので、まず日本固有の現象だと判断した。これは日本が未だ現金取引の多い国であることや高度に発展したATM・銀行送金システムが悪用されているという面もありそうだが。

相続争いについては、諸外国でも時々話題にはなっている。ただし争点は「遺言書が本人の自由意思で作成されたかどうか」という点が多いようで、分け前争いがトピックになることは少ないようだ。

訴訟社会の米国でも相続争いが活発化しているとは聞かない。その理由の理由は幾つか考えられる。一つは「遺言書」(正確にいうとその変形であるLiving Trust生前信託)が一般化していて、相続財産の配分を巡って相続人が争う余地がほとんどないからである。

また米国では一般的には(州によって異なるが)。子どもに法定相続権はなく、配偶者は共有財産として、亡くなった配偶者の財産は自動的に自分のものにすることができる、ということが争う余地を少なくしているのだろう。

さらに踏み込んで考えてみると、英米ではキリスト教の影響で「人の財産は一代限りで消滅し、その財を為した人はその財産について完全な支配権を持つ」という考え方があることに気がつく。だから事業で財を成した人は、慈善事業にポンと大金を寄付するのである。

良し悪しは別として、農耕社会が長かった日本では、田畑は重要な生産手段で、分けることはもっての外。子々孫々引き継がれるべきものという考え方が根本に残っているため、「子や孫は親や祖父母の財産をあてにし」「親や祖父母は子や孫が自分の財産をあてにしていると考える」のであろう。

そしてそれが相続争いとオレオレ詐欺の大きな背景になっている、というのが私の仮説である。そしてもし相続争いとオレオレ詐欺を減らそうと思うのであれば、財産を挟んだ世代間のもたれ合い意識を改善することに鍵があるのではないか?と考えている。やや論理は飛躍しているかもしれないが。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

所得格差解消は企業固有の「お作法」改善から

2015年03月17日 | 投資

IMFは今月15日にHow Inclusive is Abenomics?というワーキング・ペーパーを発表した。

「アベノミクスはどの程度包括的な経済成長に寄与しているのか?」という内容である。IMFはまとめとして「日銀のインフレ2%ターゲット政策は平均的な所得の増加にポジティブな影響を与えるが、所得格差の均衡という面ではネガティブな影響を与える。平均的な所得の増加と所得格差の均衡化という二つの政策目標を達成するには、労働市場の改善等の構造改革が必要である」と結論付けた。

労働市場の改善については、後程私の個人的見解を述べるが、その前にワーキングペーパーから幾つかグラフを拾ってみた。

 まず日本はどれほど格差社会であるかを示すG7諸国とのジニ指数比較である(出所OECD)。

 

上のグラフは「マーケット・インカム」(市場所得 税金・社会保険料控除前の所得)の不均衡さを示すグラフである。

25年前(2010年から見て)の日本のジニ指数は0.35とG7に較べて相当低かったが、現在は0.5とほぼG7諸国と同じになった。

社会の格差を図る尺度としては、ジニ指数の他相対的貧困率という尺度がある。相対的貧困率というのは、所得レベルの中央値の半分以下の所得層が全体に占める割合を指す。

日本の相対的貧困率は約16%で、1位の米国とほぼ並ぶ水準で、G7の平均12%より4%高い。

もう一度ジニ指数に戻って、税金・社会保険を控除した所得再配分後すなわち可処分所得後のジニ指数を見てみよう。

厚生労働省のデータを基にした上記のグラフは「所得再配分前と後の高齢者のジニ指数」だ。このグラフは所得再配分前は0.7と極めて格差が大きい高齢者の所得格差が、所得再配分により0.35程度まで下がり、高齢者層では格差が緩和されていることが分る。

下のグラフは勤労者層の所得再配分前と後のジニ指数のグラフである。勤労者層においても所得再配分効果でジニ指数は低下(すなわち格差は是正)しているが、その度合いは高齢者層に較べると小さい。

IMFが示唆する日本の労働市場を改善する方策は、女性の雇用機会拡大と労働市場の二重性(正規社員と非正規社員の存在)の改善だ。だが二重性の改善への具体策まで提案はしていないようだ。

そこで私が働いていた経験を踏まえて、どうすれば労働市場の二重性を改善できるか?言い換えると何が労働市場の流動性を妨げているのか?ということを考えてみた。その要因は色々あるが、ここではまず「企業固有のお作法」ということを考えてみた。

「企業固有のお作法」とは、それぞれの企業が持っている意思決定の仕組み、コミュニケーションルール、文章作成基準などである。

どこの国でも「企業はそれぞれのお作法」を持っているが、私の経験では「日本企業のお作法」は他の国に較べて、個別性が強く、お作法になれるのに時間がかかるのである。

具体的な例を2,3挙げてみよう。例えばこれは私が実際経験した例であるが、私が昔勤めていた会社では部長クラス以上は別としてそれ以下のクラスでは「名前で呼ぶ」というのが一般的だった。ところがある日同業との合併が起こり、新しい仲間と一緒に働き始めた時、部下の人間を名前で呼んでいると「私、何か大きなミスでもしたのでしょうか?」と言われたことがある。どうもその会社では「名前+肩書」で人を呼ぶのが、お作法で「名前だけで呼ばれる」のは譴責される時という習慣があったようだ。

その他に箇条書きを作る場合の番号の付け方、決裁印の並べ方(右に起案者が来るか?左に起案者が来るか?)など色々細かいことが、企業によって異なるのである。

就業規則などというのも企業の個別色が強い。

このような「企業のお作法」が一つの見えざる壁になっているのではないか?と私は考えている。もしこれから日本企業が海外からの移住者を含めて、多様な労働力を活用することを本気で考えるなら、まずお作法の見直しを考えるべきだろうと感じているのである。

以上のことは、私が非常に保守的で古い会社に勤めていて感じたごく個人的な体験によるもので、若くて新しい会社では、そんなことはとっくにやっています!というご批判・ご反論があれば、それは非常に心強いことだと思う。

★   ★   ★

最近出版した電子本

「インフレ時代の人生設計術」 B00UA2T3VK

「人生の山坂の登り方・降り方」 http://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00LYDWVPO/

「英語の慣用表現集」 http://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00LMU9SQE/

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガーラ湯沢でロッカースキーを楽しんできました

2015年03月17日 | 

昨日(3月16日)日帰りでガーラ湯沢に行ってきました。通勤電車の中をスキーを担いで行くこともできませんので、靴・板・ストック3点セットをガーラで借りることにしました。同じ借りるなら日頃使っていないタイプの板を!ということで、ロッカースキー(サロモンBBR)を初めて履いてみました。

ロッカースキーのrockerとは、Rocking chairのrockです。つまり両端が反ったものを指します。

サロモンBBRの特徴は、魚の頭のような大きなトップ。新雪や深い雪で浮力を発揮しそうです。

このところのガーラはあまり雪が降っていないのか、南コースの非圧雪バーンにも新雪はなく、雪はくさって重たくなっていました。

普通のカービング板なら、トップがくさった雪に刺さる懸念があるのですが、トップが反ったロッカー板では、そんな懸念はなく、非圧雪を比較的楽に滑ることができました。ただ借り板は169cmといつも私が履いている板より10㎝ほど長いのと不慣れなので、最高の滑りができたとは思いませんが。

サロモンBBRの印象をざっと述べると次のような感じです・

・普通のカービング板に較べてかなり軽い。良く言うと持ち運びが楽。悪くいうとチープな感じ。

・大回りは楽。回転外足荷重を意識すると気持ちよく回ってくれる。ただし長い斜滑降や直滑降では少し不安定。

・小回り。私は小回りが苦手なので、正しい評価かどうか分りませんが、小回りは私のカービング板(アトミック)の方が楽。

ということで、オールラウンドに使うなら、普通のカービング板に軍配を上げますが、非圧雪や新雪を滑るなら、ロッカースキーが楽しそうです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃金格差の原因は企業規模の違い?

2015年03月15日 | 社会・経済

エコノミスト誌にThe bigger, the less fairという記事が出ていた。

記事の要旨は次のとおりだ。

・エコノミスト達は、長い間規模の経済により、大きな企業の方が小さい企業より、生産性が高く、従って賃金が高いと認識してきた。しかしこのことは理論的には、企業の中の賃金格差に結び付くものではない(つまり小企業の社長も職員もともに大企業の10%低い報酬を得ていると仮定すれば)と考えれれてきた。

・だが最近発表された"Wage inequality and firm growth"(著者H.Mueller他)によると、企業規模が大きくなるにつれて、トップ層と中間層以下の賃金格差が拡大していることが、英米の実例から明らかになった。

・論文の著者はこの現象について2つの説明ができると示唆している。一つは大きな企業は小さな企業より、仕事の自動化が容易であり、非熟練労働者からの賃金引上げ要求に抵抗し易いというものだ。それに加えて、賃金レベルで中位層の新入社員が大企業での低賃金を受け入れる傾向があることも説明材料だと述べている。なぜなら長期的に見れば、大きな企業の方が小さな企業より昇進・昇給する可能性が高いと考えているからである。

・世界規模の大企業を経営するのと、小さな企業を経営するのでは、異なった(そしてより希な)才能が求められるため、大企業の上級職のみが高い給料を享受することができる。

・著者は1981年から2010年にかけて、OECDの中の15か国について最も大きな企業群と賃金格差の相関関係を調べ、そこに強い相関関係があることを確認した。

・総てのエコノミスト達がこの現象を忌まわしいことだと考えている訳ではない。より大きな企業の方が小さな企業より、設備投資比率が高く、経済成長に貢献するからだ。

この記事は日本のことに言及していないが、日本も同じ傾向にあることは間違いない。

以上のような新説の紹介を行った後、エコノミスト誌は「もし各国政府が大企業が助長している賃金格差を是正しようとして、労働市場の改善を試みるなら、それは功を奏しないだろう。むしろ中小企業による市場参入障壁(特に銀行融資の障壁)を減らすことで、競争を高めることが、所得の不均衡と経済成長を同時に達成する道だ」と結論付けている。

この結論はもっともらしく聞こえるが、私は今の日本にはどうも最適の処方箋ではないと思われる。

むしろ今の日本で必要なことは「同一労働・同一賃金」の考え方を徹底することが、賃金格差是正の基本だろうと考えている。つまり雇用形態が正規社員であれ、派遣社員であれ、同じ仕事をしているのであれば、同じ賃金が支払われるべきだという考え方だ。

「同一労働・同一賃金」ルールは欧州ではかなり徹底していると聞く。まずこの考え方をベースに置かないと日本の場合は賃金格差は是正されないだろう。次に業種によっては既に大企業間で過当競争が起きている分野が多い日本で中小企業の参入障壁を下げることが、企業内の賃金格差是正に有効かどうか疑問である。

むしろ日本の場合は「同一労働・同一賃金」ルールにより、雇用形態の影響を抑制し、人材の流動化を促進することで、企業再編を促進する方が先ではないか?と感じているのである。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする