金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

日本人はM&Aに不向き?

2017年06月18日 | ニュース

昨日M&Aに関する2つのニュースがあった。

一つはアマゾンが自然食品スーパーのホールフーズを買収するというニュースで、もう一つは日本郵政が野村不動産HDの買収を白紙撤回すると発表したニュースだった。

マスコミによると「野村不動産の株価急騰で買収条件が合わない」ことが白紙撤回の理由だそうだ。

野村不動案の株価は5月中旬の買収ニュース以降急騰している。

これは当たり前の話でM&Aでは買収される企業の株価は平均3割程度上昇するという。一方買い手企業の株価は低下かフラットにとどまる。

なぜなら買収した企業は買収プレミアムを回収しないといけないからだ。

買収プレミアムの回収には、シナジー効果の発揮や買収企業による強力なてこ入れが必要だ。

アマゾンのホールフーズ買収ではアマゾン・ホールフーズの株価とも大きく上昇したが、これはシナジー効果が高く評価された結果で例外と考えるべきかもしれない。

今年4月に豪州の買収子会社の業績不振から減損処理を強いられ赤字転落した日本郵政はM&A下手を露呈した。

押しなべて考えると日本企業はM&A下手だろう。海外企業との比較データは準備していないが、日本企業が海外大型M&Aで失敗したケースは多い。

なぜ失敗するのか?理由はいくつかあると思うが「戦略面での詰め不足(なぜその会社を買収するのか?)」と「戦術面での買収企業統制能力不足」が大きな原因だと私は考えている。

世界的にみてもM&Aというのは、必ずしも成功確率が高いわけではない。なぜなら企業買収で高いプレミアムを被買収企業の株主に支払うからだ。確実なコストを支払い、シナジー効果などという不確実な成果を期待する取引だからだ。

つまり「手持ち現金が潤沢だから」という程度の理由で仕掛けては、うまく行くはずがないのがM&Aなのである。

日本郵政という会社も学習効果の上がらない会社である。

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三菱UFJ1万人人員削減計画、早期退職で加速が好ましい

2017年06月18日 | 金融

3日ほど前ブルンバーグが「三菱UFJグループが今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった」と報じていた。

削減する1万人の中には昨年平野社長が発表した傘下銀行での採用抑制や自然退職による人員減3,500人も含まれているという。

1万人と3,500人の差の6,500人についてどうするのかは明らかにされていないが、早期退職制度等を導入すると推測される。

もし早期退職制度を導入するのであれば、早めに導入して、少し多い位の早期退職者を出す方が良いのではないか?と私は考えている。

その理由は幾つかある。

まず銀行業の将来という点から考えてみよう。

第一に日本の銀行は銀行数・店舗数・従業員数とも総て多過ぎる。IT時代に対応してないという以前に人員面で昔の預金吸収・貸出型のビジネスモデルから脱却できていないところが多いと私は考えている。

それは従業員の数の問題だけではない。新しい金融モデルに対応する従業員の教育・養成プログラムや人事制度に問題があるのだ。

例えば今後銀行が生き残ることができる分野の一つに「資産運用部門」を上げることができるが、資産運用部門で求められる人材・スキルは預金吸収・貸出型と全く違う。これを同じ人事システムで処遇しようとすると資産運用部門の優秀な人材は退職し、外資系の資産運用会社に移籍する可能性が高い。

つまり銀行は総人員を減らすだけでなく、専門分野で活躍する人材を長期的に育成・確保する必要があるのだ。そのためには人事制度の改革と大胆な人減らしが必要なのである。

次にフィンテックと銀行という観点で考えてみよう。

フィンテックという概念は広くて分かり難いが現時点での代表的な例は「ビットコイン」に代表される仮想通貨と「オープンAPI」だろう。APIはApplication Programming Interfaceの略で「自己のソフトウエアの一部を公開して、他社のソフトウエアと共有することができるようにする」仕組みのことだ。

三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)は今年3月にMUFG{APIs}プログラムの説明会を行っている。将来的にはMUFGと提携する先がそのプラットフォームから、銀行取引内容の照会や送金などの取引を行うことが可能になりそうだ。

仮想通貨についてはMUFGは独自の「MUFGコイン」を発行する予定を立てている。

このようにフィンテック分野でMUFGは日本の先端を走っていると私は考えている。だがフィンテックが進むということは、店舗を介在した金融取引が不要(少なくとも大幅削減)になることを意味する。

つまりMUFGがフィンテックを推し進めれば、自らの店舗や従業員が余剰になってくることを意味するのだ。

その次に預金者(消費者)目線で銀行を考えてみよう。私は賢い預金者(消費者)になるには、いかに銀行の窓口に行かないで用事を済ますか?ということを考えるのが一番だと思っている。簡単にいうと窓口で送金を依頼するよりは、ATMで送金をする方が手数料は安いし、インターネットバンキングを利用する方が更に安い。将来的には仮想通貨を使うともっと手数料が安くなる可能性もあるだろう。

つまり大部分の預金者(消費者)にとって銀行窓口は高コストチャネルなので、できれば避けるべき場所なのだ。

最後にMUFGの従業員の立場から早期退職を考えてみよう。

これからの社会は元気な人は70歳くらいまで働くことが期待される社会になる。70歳くらいまで働くとすれば、第二の職場に移るのは早い方が良い。

最近ある不動産会社の社長と話をしたところ「ホテル業界はマネージャー不足で新しいホテルの建築に二の足を踏んでいるところがある」という話だった。これは一例だが色々な方面で人手不足の話は聞く。人手不足が経済成長のボトルネックになる可能性は高い。

長期的にみれば銀行の人員余剰感は拡大こそすれ、減ることはないと思う。レッドオーシャンの中で椅子取り合戦に汲々とするよりは、ブルーオーシャンに飛び出して、腕を振るう場を探しては如何だろうか?

天下国家論的にいうと、元気の良い優秀な人材が銀行界から別の分野に供給されることで、日本の経済は活性化する。

天下のMUFGであれば、日本経済の活性化という視点で優秀な人材を気持ちよく送り出すパッケージを作る度量があっても良いと私は思っている。

 

 

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アマゾン株は「ど素人銘柄」?

2017年06月17日 | ライフプランニングファイル

本棚を整理していると数年前に買った「老後のお金」(文芸春秋編 文春文庫)という本がでてきた。

パラパラめくってみると橘怜さんが「シニアにもできる『正しい投資法』と『ど素人投資法』」という話を書いていた。

ポイントは次の通りだ。

正しい投資法とは、インデックス(市場平均)に投資することだ。でもそれでは面白くないという人は「株のことなどなにひとつ知らないど素人に投資対象を決めてもらうことだ」と橘氏はいう。

「ど素人に投資対象を決めてもらう」というのは、無茶苦茶な話に聞こえるが、これは一種のレトリック。もう少し読むと「スマートフォンの一覧からみんながアイフォンを選べば、アップルの株を買う」「スターバックスが一番人気ならスターバックスの株を買う」と書いている。

つまり投資家目線ではなく消費者目線で銘柄を選択するという訳だ。そして「バカバカしいと思うだろうが、この「直観的」な投資法は実際にやってみると、投資のプロはもちろん市場平均おも上回ることができるのだ」(ゲルト・ギーゲレンツァー「なぜ直観のほうが上手くいくのか」)と説明している。

私はその参考図書を読んだことがないし、特段読んでみようとも思わない。そもそもある投資手法が他の方法より当たるということを実証することは極めて難しい。

チャーチストは株価チャートがこのような形になれば買いのシグナルだとか売りのシグナルだとかいう。そして幾つかの実例を示して「買い時だった」とか「売り時だった」と教えるのである。しかしそれは後講釈というものだ。なぜなら同じようなパターンがチャートに現れてもその後の相場展開は違うことが多いからだ。つまり説明する人は自分の理屈にあうパターンだけを示しているのである。

橘氏の例も然り。アップル株はその後市場平均を上回るパフォーマンスを上げているが、スターバックス株のパフォーマンスはダウ平均を下回っている。

「ど素人の直観的な投資方法が市場平均を上回る」という説は眉唾物だと考えてよいだろう。

ただし投資のプロ中のプロと言われているウォーレン・バフェット氏がアマゾンやグーグル(アルファベット)の株を持たなかったことを残念がっているのも事実。アマゾン株にひと財産を投資していた人がいるとすると、バフェット氏が目をむくような成果を上げている。

アマゾン株というのは、PERなど従来の投資尺度では投資しにくい銘柄なのだ。「アマゾンが本を買っている」「キンドルで本を読んでいる」「音楽も聞く」「なんでもすぐ配達してくれるからアマゾンが好き」「アマゾンはなにか大きなことをやりそうだ」という「直観的な判断」で買われてきた株なのだろう。

もっとも潤沢なキャッシュフローは新しい投資や積極的なM&Aを可能にしているから、「従来の投資基準では投資しにくい」という投資基準を見直す必要があるかもしれないが。

★   ★   ★

そもそも正しい投資方法って何なんだろう?

私は世界的な経済成長の分け前に預かり、長期金利を若干上回るリターンを持続的にあげる投資と考えている。それはグローバルな株式・債券のバランス運用によってのみ可能なのだろう。

可能だけれど、この手法は退屈で面白くないことも事実。そもそも投資はばくちではないから退屈なものなのだ。

そして退屈しのぎに損をしても困らない範囲で「素人的に好きな銘柄」を買うことは悪くないと思う。株を持っているとその会社のことを調べ、その商品やサービスを調べ、業界を調べ、経済を勉強する機会が増えるからだ。ただ投資結果については淡々とするべきだろう。

アマゾン株を持っていて高いパフォーマンスを上げている人は運がよかったと考え、持っていなかった人は運がなかったと思えばよい。

世界は広いから、次のアマゾンに巡り合うチャンスはあるだろう。

 

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アマゾン、ホールフーズ買収。ライフスタイルが変わる?

2017年06月17日 | 投資

ハイテク株の低迷が続く中で、アマゾンが長打を打った。

昨日(6月16日)アマゾンは自然食品スーパーマーケットチェーン・ホールフーズマーケットを137億ドルで買収すると発表した。

ホールフーズは、今年に入って8%の株を取得したアクティビスト株主から買い手を探すようにプレッシャーを受けていたそうだが、アマゾンは予想されていたパートナーではなく、小売業界には衝撃が走った。

アマゾン株は23.54(2.44%)は急騰する一方、ウオールマート株は3.67ドル(4.65%)急落した。

アマゾンのホールフーズ買収は色々な意味で興味深い。

ホールフーズは自然食品のパイオニア的存在で、都市富裕層を中心に有機野菜等の販売で売上を伸ばしてきた。自然食品の伸びは食品全体の伸びを上回っている。しかし近年はウオールマートやクロ―ガーなど大手スーパーがこの分野に進出し、ホールフーズの既存店売上は減少傾向にあった。

その最大の理由は価格面で大手スーパーチェーンに較べて劣後していたことによる。

ところでホールセールには、ユニークなレジがあるようだ。それはInstacart(インスタカート)という配送専用レジである。インスタカートは2012年にサンフランシスコでスタートした「買い物代行業」的会社でホールセール専用ではない。しかしホールセールは同社の最も早い時期のパートナーで5年間の配送契約を結んでいるという(2年経過)。

従ってアマゾンがすぐに独自の配送ネットワークにホールフーズで購入した食品の配送を乗せる可能性は低いかもしれないが、数年後には確実に食品購入やその配送のスタイルが変わっている可能性が高い。

思うにアマゾンは本格的な食品小売業進出でライフスタイルの変化を提案したいのではないだろうか?

つまり消費者にアマゾンのプライム会員になることで、スーパーに行かずともオンラインで食品を注文し配送して貰える。消費者は浮いた時間を使ってアマゾンプライムでビデオや音楽を楽しむことができる・・・という具合にだ。

アマゾンの食品小売業進出は、既存スーパーの売上に影響を与えるにとどまらず、消費者のライフスタイルを変える可能性があると私は感じている。

 

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【イディオム】Engaged at work 仕事に没頭する人は6%しかいない日本?

2017年06月16日 | 英語・経済

Engageは一般に「仕事に従事する」という意味だ。

ギャラップのThe World's Broken Workplace(世界の破たんした職場)という記事に次の一文がでていた。

A staggering 94% of Japanese workers are not engaged at work.この文章をグーグルの翻訳で訳してみると「日本人労働者の94%が仕事に就いていません。」という訳が出てくる。どういう訳かstaggering(驚くべきことに)は訳出されないが。

しかしこれでは意味は通じない。意味の通じる訳は「驚くべきことに日本の労働者の94%は仕事に没頭していない」だろう。

これは日本では6%の人しか仕事に没頭していないということを意味する。ギャラップがどのような方法で調査を行ったのか分からないが、フルタイムで働いている人について、全世界ベースでは仕事に没頭している人は15%で米国では30%だとギャラップは報じている。

これに較べて日本の6%という数字はいかにも低いし、多くの読者の方の共感を得る数字ではないだろうと思う。

ただそのことはここでは取り上げない(取り上げたくても反論するデータがないので)。

ここではギャラップ(書き手はJim Cliftonという人)の「世界的な一人当たりGDPや生産性の低下傾向の原因は仕事に没頭する従業員が少ないことで、その原因は団塊世代とミレニアル世代(1980年~96年に生まれた世代)の間の上司に対する考え方のギャップである」という主張を見てみたい。

Clifton氏は「世界中で仕事場は劇的に変化しているのに、マネジメント慣行は30年以上凍結されたままだ」という。

同氏はアメリカの「団塊世代(ベビーブーマー)にとって仕事は仕事。家族を持ち、自宅を構えることがアメリカンドリームだった」が「ミレニアム世代にとって、仕事は家族同様にそして時には家族より重要だと考えている」と述べる。

ミレニアム世代は「意味のある仕事をして、自分の成長と発展を生み出す何かを職場から引き出したい」と考えているという。

若い世代が期待しているのは「命令・統制型」の上司ではなく、「好業績の上げ方を教えるコーチ型」の上司だというのだ。若い世代の人の中には、会社そのものに対する失望ではなく、上司に対する失望から離職する人も多いようだ。

昨日トランプ大統領は「徒弟制度を促進する」大統領令に署名した。徒弟制度の中にはコーチ型の上司が含まれると考えると興味深いアプローチだと思う。

日本の職場も同じような問題を抱えているのだろうか?

もし同じような問題を抱えているとすれば、上司の在り方を変えることで、若い世代のやる気を引き出し、Engagedな社員を増やすことで生産性を高めることが、労働力が減少する中で喫緊の課題だと思う。

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