昨日(8月16日)クリミヤ半島北部で起きたロシア軍の弾薬庫爆発についてウクライナ・ロシア双方がウクライナの破壊活動によるものと認めた。
軍は自軍の損失を過少に発表する傾向がある。自国民を落胆させ、厭戦気分を高めないためである。典型的な例はミッドウェー海戦で、日本軍は空母4隻を撃沈されながら2隻の損失だったとウソのニュースを流した。
このシナリオを沿えばウクライナの反撃により占領地域を攻撃されたことを認めるのはロシアとしては辛いことだったろうが隠蔽できる状況ではなかったということだろう。
さてこの破壊活動についてWSJはThe blasts were set off by Ukrainian saboteurs, according to a senior Ukrainian government official. 「爆発はウクライナの破壊行為により起きたとウクライナの政府高官は述べた」ということだ。ちょっと興味を引くのはsaboteurというフランス語を使っていることで日本語ではサボタージュである。サボタージュというと日本語のサボるのもとになっているように怠業という意味で日本では使われるが英語では怠業の意味はない。
Saboteurは「サボタージュ(圧制者に対する破壊活動)を行う人」という意味で正規軍ではなく、個人や民間団体が行う破壊活動を指すようだ。
記事がそのような意味でサボタージュを使ったとすれば、クリミヤ半島の弾薬庫爆破はウクライナ軍によるミサイル攻撃ではなく、ゲリラ活動のようなもので起きたものとウクライナ・ロシア双方が認めていることになる。
ただしWSJは別の記事で「ハイマース(高機動ロケット砲システム)がロシア軍を撃退している」という述べている。私はこの弾薬庫爆発もハイマースによる可能性もあるだろうと推測しているがそれを裏付ける報道は目にしていない。
ハイマースはピンポイントで戦略上重要な拠点(橋、弾薬庫など)を攻撃し、敵の反撃を受ける前に高速車両で移動するロケット発射システムで、この戦争のゲームチェンジャーになる可能性があると言われている。
もしロシア軍の弾薬庫がハイマースに標的とされ、防げなかったとすると士気喪失につながるのでロシア側は認めたくないだろうなぁ、と思いながら幾つかのニュースを私は読んでいる。
孫子がいうように「兵は詭道」であり、戦果や被害の発表も絶えずフィルタリングして読む必要があることは何時の時代でも必要なことだ。