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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

餃子騒動を越えて

2008年02月08日 | 国際・政治

中国製殺虫剤入り餃子問題について日本のマスコミがややエキセントリックな取り上げ方をしていることに私は少々苦々しい思いで見ていた。マスコミというものは断片的事実を、センセーショナルに取り上げ読者にこびるようなものであってはならないはずだ。
あたかも中国の食材が総て危険だといわんばかりの表現は一流のメディアが行うことではない。日本の食糧自給率は4割(カロリーベース)で、あとは輸入に頼っている。その内約17%は中国からの輸入だ。輸入量の多さを考えると殺虫剤の一件をもって中国食材が総て危険だというようなイメージを読者に与えるようなことは避けるべきだろう。

殺虫剤が混入された原因については日中の警察当局が原因解明中だが、私は誰かが故意に殺虫剤を混入した可能性が高いと感じている。
もしそうだとすると、餃子の製造・出荷工程が相当きっちりしたものであっても、悪意を持つ犯罪者であれば毒物を混入することは可能なはずだ。それをもって中国の食品業界はレベルが低いと決め付けることは危険だろう。

むしろ今回のことで目がつくのは、中国政府の迅速な対応である。中国が迅速で極めて日本に協力的な態度を取っている背景には北京オリンピックと日中関係の改善意欲がある。中国政府が北京オリンピックを前にして国際的にイメージを悪化させたくないと思っていることはたやすく理解できる。
日中関係の改善については、東シナ海の海底油田問題で中国が大きな譲歩を示してきていることからも中国の意欲が見て取れる。

東シナ海の海底油田問題とは日本と中国の排他的経済水域に関する意見の相違から、中国が海底油田に対する権益を主張していたことによる。しかし最近のFTは中国は歩み寄りを見せ、海底油田開発に関する協定書が4月に予定されている温家宝首相の来日に合わせて調印される可能性が高いと報じている。

中国が歩み寄りを見せた背景はうがった見方をすると、東シナ海の海底油田の石油埋蔵量はそれ程多くなく、経済的にうまみの少ないプロジェクトだという判断があるかもしれない。だが素直に中国が小泉首相時代に冷え切った日中関係を改善しようとする日本政府の姿勢に歩調を合わせてきたと判断するべきだろう。

日本が中国と関係を改善することは、短期的長期的に経済メリットが大きい。短期的には公害防止、環境保護、省エネルギー等日本が得意する分野で中国に輸出を伸ばすことができる。長期的にはアジアにユーロのような単一通貨圏を作るということだ。

余談になるが、先ほど引用したFTの記事の中に餃子が英語のdamplingと合わせてgyozaとして載っていた。
ギョーザという発音は中国山東省の方言らしく、中国ではJiaojiというそうだ。また日本の餃子の特徴は、ニンニクを 沢山使っていることと、薄い皮をかりっと焼くところにある。中国の餃子と日本の餃子では同じく餃子といってもかなり違う。餃子は中国、日本、韓国それぞれの国で特徴を出しながら 広く食べられている食品だ。餃子を縁に日中の信頼関係を改善したいものである。
日本のマスコミはいい加減にポピュリズムな報道から卒業してもう少し目線を高くするべきだろう。

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ニューヨークタイムスのヤマネコ話

2008年02月08日 | うんちく・小ネタ

米国大統領予備選挙の状況はニューヨークタイムス(NT)のウェッブ版で見ることが多い。
NTは太っ腹で無料で閲覧することができる。ついでに他の記事を読むこともあるが、これが中々面白い。 2月6日には日本のイリオモテヤマネコの話が書いてあった。

話のあらすじは次のとおりだ。「絶滅に瀕しいてるイリオモテヤマネコは20万年前からこの島に住んでいるが捕まえにくいので、1967年まで発見されることがなかった。イリオモテイヤマネコはアジア大陸に棲息するレオパルド・キャットの仲間と信じられている。つまりその昔西表島は大陸と繋がっていた」
他の資料で見るとイリオモテヤマネコはベンガルヤマネコの仲間ということだ。
「ヤマネコの専門家オカムラさんは多くの人はイリオモテヤマネコのような肉食獣が食物連鎖の頂点に立つには島は小さ過ぎると信じてきた。従ってこのような小さい島にヤマネコが20万年も生きてきたことは奇跡以外の何者でもないという」
「西表島の住人は2,325人に過ぎない。しかし人口が減少する他の日本の田舎と違い、過去10年で住民は22%増加している。旅行者は過去5年で33%増え、昨年の旅行客は40万人に達した。旅行者が増え、車の交通量が増えたことで自動車に轢かれるヤマネコも増えてきた。そこで島ではヤマネコ生息地域の舗装道路をデコボコしたをシマウマ状の減速道路してドライバーの注意を喚起するなどの工夫を行っている」

NTは小さくて孤立して壊れやすい豊かな生物多様性を持つ点で、西表島をガラパゴス島に比肩すると紹介している。

キーワードは生物多様性、バイオダイバーシティBiodiversityという言葉だ。これは「地球環境を保全するための必須の条件として生物の種を維持して絶滅させないこと」だ。因みにグーグルで生物多様性を検索すると75万件のヒットがあり、Biodiversityを検索すると1千万件のヒットがある。
欧米人という人種は一足先に文明の利器を手にして、獲りたいだけの動植物を獲り、環境を沢山破壊してから「やれ希少動植物保護だ、やれ環境保護だ」と騒ぐので身勝手だなぁと思うことがある。

もともと日本には「山川草木悉皆成仏」という思想があった。これは日本の天台宗の根本教義の一つで「総てのものに仏性がある」と いう考え方だ。その哲学的深みをバイオダイバーシティと並べると日本仏教界の方々にはお叱りを受けるかもしれないが、自然との共生という行動面の共通性は極めて強い。
山川草木悉皆成仏という思想は、思想である前に豊かで美しい自然に囲まれていた日本人の直感的洞察であったはずだ。

今その日本が生物多様性の重要さを外国人に教えられる(ヤマネコの記事は日本人特派員が書いたものだろうが)とは、なさけない話である。

それにしてもニューヨークタイムズは選挙記事も面白いが、色々な話題で盛り沢山だ。日本のマスコミを見ていると中国餃子の話ばかり(それはそれで大事ではあるが)でうんざりする。マスコミの話題の多様性ということは世論形成の上で大事なことだと思った次第である。

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