最近のエコノミスト誌は毒入り餃子問題からスタートして、日本の勤労者の意識変化を論じていた。
その中で餃子はgyozaとして紹介されていたから、その内「系列」「過労死」などとならんで英語として定着するかもしれない。さてエコノミスト誌のポイントは次のとおりだ。
- 過去数週間で7百人以上が殺虫剤入りの中国製餃子を食べて病気になっている。
- しかし食の安全性が脅かされたのはこれだけでなく、ここ数ヶ月間日本企業で幾つかの事故があった。賞味期限の過ぎた商品を販売した事例などで、一般大衆は怒ったが誰も病気にならなかった。
- 表面的にはこれらのことは日本人の特に食に関する潔癖さを際立たせている。そして同時に日本の食品検査官の非効率性、高い食品価格、低賃金、麻痺した経済、手抜きといった問題をあぶりだしている。
- 食の安全に関する問題は内部告発者により明らかにされている。内部告発は2006年4月1日に公益保護法が施行されてから急増している。
- 混ぜ物をした牛肉販売が暴露されてから、それまで月100件程度だった農水省のホットラインへの電話は700件に急増した。
- 内部告発が急増した理由は正社員が減り、パートタイムや派遣社員が増えたことである。正社員は武士道の残骸である雇用制度に守られていたので、企業の不正な行為を社員が見逃す傾向があったが、不正を暴いたところで失うものがないパートタイマー達により不正が暴かれるようになった。
- 毒入り餃子問題は日本の食のナショナリズムを高めている。昨年日本は中国から80億ドルの食品を輸入しているが、中国からの食品は突然人気がなくなった。おかけでスキャンダルまみれだった日本の食品会社が思わぬ利益を得ているようだ。
正社員をパートタイマーで代替させているのは、食品業界だけではない。銀行などもそうだ。このために基本動作が欠落したテラーもどきに顧客の応対をさせている銀行があることは誠に嘆かわしい。例えばある信託銀行の窓口で数十万円の現金を引き出したことがあるが、カートンにポンと入れて渡すだけである。銀行員の鉄則は「現金その場限り」であり、必ず顧客の前でお札を勘定して確認してもらわなければならない。このような基本動作が欠如しているのだ。私は正社員だパートだといった雇用形態について云々する積もりはないが、基本動作の欠如やその原因である管理・指導不足には憂慮するべきものがあると思っている。 実は色々な業界における規律の弛緩、基本動作の欠如、さらには品質管理に関する不正、不正の隠蔽などはかなり前から日本社会の中に蔓延りつつあったのだろう。それが公益保護法の施行に伴い、気楽に訴え出られるようになったので、告発された不正が増えたのである。