12月のデータによると日本の賃金は過去3年半の中で一番早いペースで下落した。中小・中堅企業がオイル・原料高を吸収できず冬の賞与を減らしたことによる。冬の賞与は3.6%下落している。
日本は賃金上昇を伴わない経済回復を6年間行ってきたが、今後世界的な景気低迷が起きると「輸出頼り」の日本経済の片肺飛行は一層傷つきやすくなるだろうとエコノミスト達は警告を発する。
FTによると日銀の早川名古屋支店長は「(名古屋圏では)トヨタの成功で景気のミニ・ブームをもたらしているが中小企業は一般的には賃金を上げることができない。原料高を消費者に転嫁できないので、特に過去半年間利益率は著しく低下している」と言っている。
グローバル化の結果、大企業の株主には外国勢が増えている。これは株主の高配当要求につながり、従業員の賃料引き上げが犠牲になっているという構図だ。
労働需給も緩んできた。私の会社では昨年秋中途採用を再開した。再開してしばらくは良い応募者がほとんどいなかったが、12月に入ると急に応募者が増えて生きた。これは転職者が冬の賞与を貰ってから辞めるという季節要因もあるが、ノンバンクの破綻やリストラが活発化したことが大きいだろう。実際数ヶ月前は求職者100に対して仕事が106あるという状態だったが、12月には98に下がっている。
私はオイル・原料高は日本を悪いサイクルに押しやると見ている。企業特に中小・中堅企業あるいは競争の激しい食品業界などは原料高を消費者に転嫁できない。何故なら一般消費者は賃金が上がっていないので、財布を紐を緩めないからだ。大手スーパーはプライベートブランドで価格競争力を維持しようとするから、食品業界は本当に大変だろう。そこで企業はマージンの低下を人件費の削減でカバーしようとする。するとまた購買力が低下するという悪循環が続く可能性が高い。
原料高の悪影響は特に中小・中堅企業に強く出るので、ますます所得格差が拡大する可能性がある。この問題の簡単な解決策はないが、一つは円高政策を取る(少なくとも円安政策を取らない)ことである。円高は日本経済を牽引する国際優良企業には痛手だが、輸入物価の上昇を食い止めることができるので、一般消費者にはプラスの策である。
しかし景気が悪化すると益々日本への投資魅力が減少するので、遠からず円安時代に戻りそうである。難しい時代になってきた。