先週末(2月15日)ウオールマートがHD-DVDプレヤーを6月までに撤去すると発表したことで、第三光ディスクを巡る争いはブルーレイの勝利に決まった。これを受けメディアは「東芝がHD-DVDから撤退するだろう」と報じた。これに対し東芝は18日日中「当社として決定したという事実はない」と発表している。しかしこれはこのような場合の
常套句的発言と解するべきだろう。抜け目のない株式市場は東芝のHD-DVDからの撤退を好感して、同社の株価は上昇していた。
HD-DVDのHDはHigh Definition 高画質の意味だ。東芝は過去2年間、多額の資金を投入してHD-DVDのついたラップトップパソコン等を生産してきたが先月ワーナーブラザースがブルーレイを支持すると発表してから敗色が濃くなった。業界筋では東芝は技術で負けたというよりもハリウッドの支持を得られなかったことで負けたという声が多い。
もっともあるブログでは「HD-DVDという長い頭文字の羅列より、ブルーレイ(青い光線)という名前の方が前向きに見えるから、勝ったのではないか?」という意見を発表している。
ところで消費者はハードメーカーの熾烈な戦いを冷ややかに見ていたとFTは報じている。何故ならディスクに映像をストックしなくても、将来インターネット経由で映像をダウンロードできるようになるので、消費者はブルーレイを飛び越してしまうのではないか?と観測しているからだ。
もっともFTは「大部分の米国の消費者は高画質映像をデジタル・ダウンロードするインフラを持っていないので、ブルーレイのようなパッケージ・メディアを支持するだろう」とも述べている。この点について私は短期的には同感する。私は少し前にOCNシアターというインターネットを利用して、映画をダウンロードするサービスに入ったことがあったが、「映像の画質が悪い」ということと「コンテンツが貧弱」という理由で止めてしまった。高画質の映像をインターネット経由でダウンロードするのはもう少し先になるだろう。とは言うものの私は今のDVDレコーダーを直ぐにブルーレイ・レコーダーに換えるかというとコストパフォーマンスの点からそれ程強いインセンティブも起きない。少し待てばもっと安価に高画質のコンテンツを見る方法が開発される・・・と期待して余り高価なプレーヤーなどを揃える気が起きないということも事実だ。
FTは業界観察者は「ハードウエアが直ぐに時代遅れになる時代にどうしてソニー・東芝という日本のメーカーがハードウエア戦争に熱中するのかという疑問を禁じえない」と結んでいた。
私は日本のメーカーには「日本人はハードウエアの性能に固執する」という思い込みがあるのかもしれないと考えている。しかしこの既成概念が変化しているということを合わせて考えないといけないだろう。
今量販店では華碩電脳(アスーステック)やレノボなどが、5-6万円のノートパソコンを販売し人気を博している。NEC等日本メーカーは価格競争に巻き込まれて「利益なき戦い」に喘いでいる。
日本市場は特別という時代は終わったのかもしれない。企業で使うパソコンがシンクラアント化(クライアント側のパソコンを軽くして、アプリケーション・ファイルなどをサーバー側で管理するシステム)するように、映像等のコンテンツも光ディスクにストックするより、インターネットを経由して観たい時にダウンロードするという時代が早晩来るだろう。そう考えると光ディスク戦争の勝者も泡沫(うたかた)の夢を見るだけかもしれない。