金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ブルーレイ、勝っても長続きしないか?

2008年02月18日 | デジタル・インターネット

先週末(2月15日)ウオールマートがHD-DVDプレヤーを6月までに撤去すると発表したことで、第三光ディスクを巡る争いはブルーレイの勝利に決まった。これを受けメディアは「東芝がHD-DVDから撤退するだろう」と報じた。これに対し東芝は18日日中「当社として決定したという事実はない」と発表している。しかしこれはこのような場合の
常套句的発言と解するべきだろう。抜け目のない株式市場は東芝のHD-DVDからの撤退を好感して、同社の株価は上昇していた。

HD-DVDのHDHigh Definition 高画質の意味だ。東芝は過去2年間、多額の資金を投入してHD-DVDのついたラップトップパソコン等を生産してきたが先月ワーナーブラザースがブルーレイを支持すると発表してから敗色が濃くなった。業界筋では東芝は技術で負けたというよりもハリウッドの支持を得られなかったことで負けたという声が多い。
もっともあるブログでは「HD-DVDという長い頭文字の羅列より、ブルーレイ(青い光線)という名前の方が前向きに見えるから、勝ったのではないか?」という意見を発表している。

ところで消費者はハードメーカーの熾烈な戦いを冷ややかに見ていたとFTは報じている。何故ならディスクに映像をストックしなくても、将来インターネット経由で映像をダウンロードできるようになるので、消費者はブルーレイを飛び越してしまうのではないか?と観測しているからだ。

もっともFTは「大部分の米国の消費者は高画質映像をデジタル・ダウンロードするインフラを持っていないので、ブルーレイのようなパッケージ・メディアを支持するだろう」とも述べている。この点について私は短期的には同感する。私は少し前にOCNシアターというインターネットを利用して、映画をダウンロードするサービスに入ったことがあったが、「映像の画質が悪い」ということと「コンテンツが貧弱」という理由で止めてしまった。高画質の映像をインターネット経由でダウンロードするのはもう少し先になるだろう。とは言うものの私は今のDVDレコーダーを直ぐにブルーレイ・レコーダーに換えるかというとコストパフォーマンスの点からそれ程強いインセンティブも起きない。少し待てばもっと安価に高画質のコンテンツを見る方法が開発される・・・と期待して余り高価なプレーヤーなどを揃える気が起きないということも事実だ。

FTは業界観察者は「ハードウエアが直ぐに時代遅れになる時代にどうしてソニー・東芝という日本のメーカーがハードウエア戦争に熱中するのかという疑問を禁じえない」と結んでいた。

私は日本のメーカーには「日本人はハードウエアの性能に固執する」という思い込みがあるのかもしれないと考えている。しかしこの既成概念が変化しているということを合わせて考えないといけないだろう。

今量販店では華碩電脳(アスーステック)やレノボなどが、5-6万円のノートパソコンを販売し人気を博している。NEC等日本メーカーは価格競争に巻き込まれて「利益なき戦い」に喘いでいる。
日本市場は特別という時代は終わったのかもしれない。企業で使うパソコンがシンクラアント化(クライアント側のパソコンを軽くして、アプリケーション・ファイル
などをサーバー側で管理するシステム)するように、映像等のコンテンツも光ディスクにストックするより、インターネットを経由して観たい時にダウンロードするという時代が早晩来るだろう。そう考えると光ディスク戦争の勝者も泡沫(うたかた)の夢を見るだけかもしれない。

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中国の土地所有権問題

2008年02月18日 | 国際・政治

50年来の大雪など話題に事欠かない中国だが、土地所有権を巡る紛争については余り日本のマスコミで取り上げられていないようだ。しかし私はオリンピックが開催される今年この問題は大きくなると考えている。それは「食の確保」という問題を通して日本にも少なからぬ影響を持つものだ。

「土地を農民へ」という言葉は1924年に孫中山(孫文)Sun Yat Senが使って以来、中国革命のスローガンだった、とエコノミスト誌は現在の中国における土地紛争問題を書き出す。そして昨年後半中国共産党にこの約束を守れという声が中国各地で農民から上がっていると報じる。

中国の憲法は農村の土地は集団所有されていると規定する。しかし誰がこの集団を代表するか明らかになっていない。この曖昧さがここ数年の農村地域における騒乱の最大の原因になっている。地方官僚は、地方時自治体として金を稼ぐことに熱心であると同時に私財を肥すことにも熱心でしばしば農地を収用しては開発業者に売却している。

地方官僚の不正に対し、黒龍江省などで激しい抗議が起きている。檄文は「現在の集団的土地所有スキームは農民を農奴にしてしまう仕組みで農民は収容される土地に対し、農民は価格交渉権を持つべきだ」と主張する。

土地の所有権に対する各地の動きはすぐに弾圧された。今年1月には黒龍江省の二人の農民リーダーは強制労働キャンプ送りと判決された。

中国の土地問題は難しい段階に差し掛かっている。中央政府による公共事業促進に貢献して点数を稼ごうとする地方官僚は農民の土地を強制収用しようとする。また目端の利いた農民の中には、正式な開発許可を得ていない開発業者に自分の土地を売却して現金を得ようとする者がいる。(中国で農民は土地の利用権は認められているが、売却したり、抵当権を設定することは出来ないので、この話は奇異な感じもするが、闇では売却可能ということだろう)

これらのことから農地が減少して「食の安全」が危うくなることに中国政府は懸念している。

中国の歴史を見ていると、王朝末期には土地の所有権を求める農民集団が巨大化して王朝を倒すケースがある。現在の中国政府は過去の王朝末期の政府よりはるかに有能であるので、そのような懸念は少ないだろう。しかし現実に対する絶望感が一定レベルを超えると、過激な原理主義が出現する可能性が高まる。それは社会に不安定さをもたらすものだ。中国農民の土地所有権争いは着目しておくべき重要なポイントだろう。

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