先週末G20が終了した。採択された声明によると、先進国は2013年までに財政赤字を半減させ、16年までに国債残高のCDP比率を安定させることを目指す。これは明確なデッドラインというよりは、一種の期待目標を示したものだ。国内資金への依存率が圧倒的に高い日本についてはこの目標に合致することを望まないと明確に記載された。
ブルンバーグによると菅首相は「新内閣が定めた新成長戦略や財務運営計画が歓迎するという形で積極的に受け止めてもらった」と評価していた。財政赤字削減目標については日本、米国、インドなどが反対し、結果的には「各国それぞれのやり方に任せる」ということになったので、G20が日本の財政運営を積極的に受け止めたかどうかは私には分からないが。
日本の財政運営が評価されたかどうかは市場に~しかも今の市場だけではなく将来の市場に~聞くしかないだろう。
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ニューヨーク・タイムズにGeorge Mason大学のTyler Cowen教授が面白いエッセーを寄稿していた。それによると米国では「大きな政府」への反発が強く、ハイエクの「隷属への道」がアマゾンのノンフィクション分野でベストセラーになっている。ハイエクは経済面の統制は全生活に及ぶようになり、選択の自由は失われると警告を発している。財政タカ派に支持されるゆえんだろう。しかしCowen教授は「心配しなくても米国はこれ以上大きな財政支出を続けることはできない。政府は支払勘定がたまっていることを認識しているからだ」と述べる。つまり高邁な経済理論より、金があるかないかが現実の政策を規定するということだ。
G20で日本は財政赤字目標削減の足かせをはめられなかった。だがこれはG20の他の国が「日本の赤字は日本国民が背負っている。当面日本の財政赤字が国際資本市場のかく乱要因にはならないから眼をつぶっておこう」という話である。財政赤字を放置すればやがて日本がギリシアになることは避けられない。
財政赤字の延長線で今後脚光を浴びてくる(既に十分問題になっているが)のが、各国の公的・私的年金の問題、特に債務超過の問題だろうと私は考えている。幾つかの理由がある。まず先進国が財政支出を見直す中で、公務員年金の水準や拠出金額が問題になってくる。次に財政健全化が優先されるので、経済成長率や長期金利の水準が低下する。このことは運用収益の低下と年金債務の現在価値の拡大により、年金財政を大きく悪化させる。また平均寿命が延びているので、年金債務が拡大していることも大きな問題だ。
日本はG20で例外扱いされたことで一息ついている余裕はなさそうだ。