今日(18日)の日経新聞朝刊は「楽天がフランスのネット通販会社を2億ユーロで買収する」という記事が出ていた。三木谷社長によるとこのフランスの会社を核に英国やドイツにも進出するという話だ。
楽天の海外進出はインドネシア最大のメディアグループ・Global Mediacomとのジョイントベンチャーや米国の小規模電子取引サイト・buy.comの買収でアジアや米州では始まっている。楽天が海外進出に力を入れる背景は何だろうか?
6月10日のエコノミスト誌は「日本におけるイーコマースの離陸」というタイトルでその背景を考察していた。エコノミスト誌はマッキンゼー社の作成した予想をベースに次のように解説している。
その予想によると2005年に111兆円だった小売店頭販売は2015年に90兆円に縮小するが、2005年に1.8兆円だったオンラインショップは2015年に5兆円に拡大するというものだ。総務省が発表してる「商業統計」によると、2007年の通信・カタログ販売は4兆170億円であるから、このチャンネルの中でもオンラインショップの比率はまだ高くない。ただし楽天はオンラインショップの3分の1近いシェアを握っている。
エコノミスト誌は、日本のオンラインショップが欧米に比べ相当遅れていた理由は、日本人は携帯電話でネットサーフをするが、携帯電話の画面はPCよりもネットショッピングに向いていないので店頭で購入することを好んだのだろうと述べている。
この点について私は一部そのような理由はあるかもしれないが、大きな理由は米国などに較べて日本では通信販売が普及していなかったことだと考えている。
ところが消費不況の中、オンライン商売が堅調に伸びているので、大手小売業者が本格的にネットショッピング市場に進出し始め、楽天の仮想モールではなく、自社サイトへの消費者の誘導を始めた。
大手小売業者のネットショッピングの状況について詳しく調査をしていないが、例えば検索エンジンに「ネットスーパー」とか「ネットデパート」と入力すると大手小売業者のポータルサイトが沢山出てくる。
このような状況下楽天は二つの戦略を取り始めた。一つは自社オリジナル商品を楽天モールに投入し始めたことでもう一つは海外進出である。
楽天の海外進出が成功するかどうか?
それを直ちに判断する材料は持ち合わせないけれど、楽天が日本で成功した理由を考えると判断材料は出てくるだろう。楽天が成功した理由は、仮想モール内のどのショップでも使うことができるポイント制で消費者のロイヤリティを掴んだこと。もう一つは日本の非常にキメ細かい宅配サービスだ。それと日本の複雑で非効率な小売業システムの盲点をついて安く商品を提供したことだ。
エコノミスト誌は海外の小売市場には日本のような非効率性はないのでその盲点を突くことはできないと解説している。
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ところでここに来て消費税引き上げの話がかなり具体性を帯びてきた。私は消費税の引き上げが行われると、消費者はますます価格意識が高まり、小売業者間の競争がますます激化すると見ている。国内のネットショッピング市場は拡大しそうだ。だが大手小売業者がその市場で利益を上げることは難しそうだ。
小さくなった池の中で魚を取り合うより、大きな池を求めて海外へ出る楽天が大きな獲物を獲る可能性はある。だがそのためには徹底した現地化が必要。楽天の試みには注目しながらしばらく様子を見たい。