コロナウイルス感染拡大防止に都市封鎖政策を取る隣国が多い中で、封鎖政策を拒絶してきたスウェーデン。スウェーデンの戦略は「市民の6割が免疫を保有する」と考えられる「集団免疫」Herd immunityをワクチンではなく、自然体で達成しようというものだ。
このスウェーデンの状況について、同国の公衆衛生局の主任疫学者Ander Tegnell博士がCNBCのインタビューに答えていた。
記事はSweden resisted a lockdown, and its capital Stockholm is expected to reach'herd immunity' in weeks.である。
記事のポイントは次のとおりだ。
- Tegnell博士によると(人口が密集している)首都ストックホルムでは数週間の内に「集団免疫」状態に達する可能性がある。
- スウェーデンのコロナウイルス感染者数は15,322名で、隣国デンマークの8,108名やフィンランドの約4千名に較べる多い。だがスウェーデンの人口は1千万人で、デンマークやフィンランドの倍なので人口比で見た感染者数ではほぼデンマーク並である。
- コロナウイルスによる死亡者数はスウェーデンが1,937名でデンマークの370名やフィンランドの141名に較べると相当高い。これはスウェーデンの死者の半分以上が老人ホームに入っている高齢者であることに密接に関係がある。
- スウェーデンの戦略は「コロナウイルスの緩やかな広がりを容認することで集団免疫を作り出す」ものだったが、高齢者と既往症を持つ人々が犠牲になったので「ルシアン・ルーレットだ」と批判する公衆衛生の専門家もいる。
スウェーデン政府が取っている政策は「可能であれば在宅勤務を行うことを推奨し」「不必要な旅行と高齢者に対する社交的接触を避け」「バーやナイトクラブでの立ち飲みを禁止し」「50名以上の集会を禁止する」というものだ。これは日本政府や自治体の要請より相当ハードルが低い。
ではスウェーデン方式は成功しているのか?あるいは成功するのか?
まずコロナウイルスによる死者の数(人口比例ベース)を隣国と比較するとスウェーデンはかなり高い。だがフランス・イタリア・スペインなど他の欧州諸国に較べると半分程度と少ない。
コロナウイルスによる死者の数は都市封鎖政策の採用の有無にかかわらないところも多いので単純比較は難しい。専門家の中にはスウェーデン方式が良かったかどうかは1年先の結果を見ないと分からないという人がいる。
日本の現状を考えてみよう。テレビを観ても新聞を観ても「外出自粛」一辺倒であり、外出して万一コロナウイルスに罹患するととんでもない悪者扱いにされる可能性がある。
だが日本の政策が、特に東京など大都市で採用する方式を何の疑いもなく、全国に敷衍させようという政策が正しいのかどうかは少し落ち着いて考える必要がある。少なくとも識者と呼ばれる人は「集団免疫が達成されないとコロナウイルス問題は片付かない」という論点にもう少し言及するべきだ。
もしスウェーデン方式でコロナウイルス危機を乗り切ったとすれば、経済活動と人々のQOLが維持されたことでスウェーデン方式が賞賛される可能性もある。無論逆の可能性も高いのだが。
ただ自分がやっていることは間違いがない、などという夜郎自大にならないことは必要だろう。