金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

もの凄く遅れている日本の電子図書館

2013年01月25日 | デジタル・インターネット

PewResearchを読んでいたら、米国の電子図書館に関する調査がでていた。それによると16歳以上の電子書籍を読む人の12%が昨年図書館から電子書籍を借りた経験がある。

米国で電子図書館が始まったのはWikipediaによると1998年のことだ。そして2010年には公的図書館の66%が電子書籍の貸出を行なっているという。米国には約9千の公的図書館があるから、ざっと見積もって6千位の図書館が電子書籍の貸出を行なっている計算だ。

日本で電子書籍の貸出を行なっている図書館の数を調べてみたら、たったの12である(電子書籍図書館推進協議会HPによるhttp://www.bmehw.org/elpc/activity.html

試しに図書館で電子書籍を借りてみたいと思っても、電子書籍の貸出を行なっている図書館のある行政区に在住または通勤していないとだめなので、無理である(東京の場合は、千代田WEB図書館のみhttps://weblibrary-chiyoda.com/

もっとも図書館の電子書籍の貸出が進んでいる米国だが、まだ6割以上の人がそのサービスを知らない。Pewの調査によると、62%の人は地域の図書館が電子書籍貸出サービスを行なっているかどうか知らなかった。22%の人は地域の図書館が貸出サービスを行なっていることを知っており、14%の人は自分の地域の図書館は電子書籍の貸出サービスを行なっていないことを知っていた。

電子書籍の普及は図書館が購入する本を決める方法を変えてきた。現在アメリカの大学図書館などで広がっている方法がPDA(Patron Driven Acqusitions)と呼ばれる利用者主導型購入方式だ。これは図書目録カードをオンラインで掲示しておき(この電子的目録をOPAC=Online Public Access Catalogと呼ぶ)、一定数のアクセスが合った場合に自動的に購入する仕組みだ。

IT技術の進展は、公共サービスの利用方法を民主的でユーザドリブンなものにする一例だ。

余談だがPDAのPはPatronのPだ。パトロンは有力な後援者という意味で使われることが多いが、レストラン等の常連客もパトロンと呼ぶ。図書館の利用者もパトロンと呼ばれるが、それは常連だからパトロンと呼ぶのか、図書館の起源がおそらくパトロンが本や建物を寄贈し、そそて利用したことによるのかは知らない。暇な時に調べてみたいものである。

パソコンやタブレットなど電子デバイスの普及は進んでいる日本だが、コンテンツを活用するという点では非常に遅れていると感じたトピックだった。

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2013年米ドルは堅調という予想

2013年01月24日 | 金融

先日瞬間的に1ドル90円にタッチした円は若干買い戻されて今日は88円台半ばで取引されている。90円に手が届きそうになった時は、欧州の中央銀行筋から通貨安戦争を引き起こすのか?というブーイングの声があがり、国内の経済閣僚からは行き過ぎた円安は日本経済に好ましくないというコメントがあった。これらの政治的な動きと早すぎる円安に投資家が懸念を示した結果円安にブレーキがかかった、というところだろう。

さてこの先ドル円為替がどうなるのか?というのは気になるところだが、円の為替レートについては政治的要因によりかなりボラタイルになるだろうと市場は見ているし、私もそう考えている。

FTにUBSの外国為替戦略部門の責任者Mohi-uddin氏がDollar to emerge stornger in new policy eraという寄稿を寄せていた。

それによると現在は主要国の中央銀行の基本政策の転換点にあるという。方向転換の先駆けとなったのはカナダとスイスの中央銀行だった。09-09年の金融危機の後、カナダの中央銀行は特定の経済目標と政策金設定を関連付けたし、スイスの中央銀行はスイスフラン高を抑制することをメインターゲットとした。

次に欧州中銀はコンバーティビリティ・リスク(通貨転換リスク)を避けるため、ユーロ圏内の問題国の国債を購入すると宣言し、米連銀は失業率が6.5%に低下するまで超低金利政策を続けると述べ、バンクオブイングランドの次の総裁予定者は消費者物価だけをターゲットにするのではなく、名目GDPもターゲットにするべきだと述べている。

Mohi-uddin氏は世界の中央銀行はオーストラリアやスウェーデンの中銀のように伝統的なインフレターゲットをマンデートとする中銀と米連銀、日銀などそれ以外の政策目標を掲げる中銀に分かれてきた。

このことは為替相場に次のような影響を与える。一つは米国であれば失業率、英国であれば名目GDP、ユーロ圏であれば国債の利回り格差などが、中央銀行の政策決定に強い影響を与える。

次にスイス中銀の経験からみると、最初は中銀の緩和政策で通貨安が起きるが、時間の経過とともに、経済成長が回復する結果、資本流入が起こり再び通貨高になる。

最後は金融政策の不確実さは為替のボラティリティを高める、とMohi-uddin氏は述べ、わけても円は金融政策の変化の影響を受けやすいが、米ドルは相対的に堅調だ。なぜなら景気回復とシェールガスの開発により、連銀の量的緩和政策はそれほど長続きしないと述べていた。

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局長の事務奮戦記~マクロ押印を作る

2013年01月23日 | デジタル・インターネット

相続学会事務局(といっても事務員は私だけなのだが)で、年会費を払って会員になった人に「入会手続きの完了」案内を電子メールで発信することになった。

Ouinn

このプロセスをシステム的に処理するには、次の3工程を検討する必要があった。

まず「パソコン内の文章に学会印を押印する」というプロセスである。無論プリントした紙に押印してスキャナーで取り込むことも考えられるが、会員氏名・登録番号毎にペーパーを打ち出すのは無駄だし、非効率すぎる。

そこで「ワードの差込印刷機能」を使ってパソコン内のワード文章に「会員氏名」「登録番号」「入会金支払日」をデータベースから自動入力し、ワードの「メール送信機能」で電子メールを発信することにした。「ワードの差込印刷機能」の中に「データベースで指定先に連続送信する」機能があるのだが、こちらは使いこなせず、ここは個別発信とした。時間が押しているので機能を勉強する余裕がないので、手作業でさばいたということだ。

さて「マクロ押印」について簡単に説明しよう。マクロとは連続する処理をパソコンに覚えさせて、次回以降はごく簡単な操作で連続処理を行う機能だ。

パソコンでのマクロ押印には次の作業がある。

1.紙に押印した印影をスキャナーで取り込む。後々の処理を考えるとJPEG形式で保存するのが良い。

2.取り込んだ印影をトリミングして、パソコン状で押捺しやすいようにしておく。

3.ワード(私の場合は2007版)を開く。マクロ機能を使うためには「wordのオプション」をクリックし、その中の基本機能をクリックして、「ツールーバー」に「開発」がでるようにしておく。

4.「開発」をクリックし、「マクロの記録」をクリックする。これ以降の作業は「マクロの終了」をクリックするまで自動的に記録される。

5.いよいよ印影の挿入だが、まず印影を入れる四角い枠を作る。具体的には「挿入」→「図形」→四角形を選択し、ワード上で印影よりやや大きい形にしておく。

6.次にワード上の文字に重ねても文字が隠れないように「順序」(四角形の中でダブルクリックするとでてくる)の中の「テキストの背面へ移動」を選択する。

7.次に四角形の枠線を消すため、6.と同じ作業で「オートシェープの書式設定」から「線の色を消す」を選ぶ。

8.「テキストを挿入」を選択して、印影をコピーして貼り付ける。これで終わりだ。ここでマクロの終了を押す。

9。マクロ開始時点でマクロの名前を登録しているから、押印したい時は「開発」→「マクロ」でマクロ名を選択し、「実行」を押す。そうするときれいな印影が現れる。

この印影は最初に作った透明の枠ごとドラッグすることができ、ワード上の文字を乱すことなくオーバーレイすることができる。

まあ、芸というほどのことはないがちょっとした小技だった。ところで「芸は身を助ける」という言葉があるが、私は小技は仕事を増やすのみで見を助けるには至らず、と考えている。

多少パソコンをいじることができると「またお願いしま~す」などということになり、無報酬の雑用が増えるだけなのである。

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スペインの10年債起債は好調

2013年01月23日 | 金融

昨日(1月22日)行われたスペインの10年債入札は好調だった。FTによると70億ユーロの起債額に対して入札額は230億ユーロだった。この入札額は史上最高とのこと。世界最大の債券ファンドマネージャーのピムコは、スペインは非常に上手くやった、と褒めていた。

半年前には経済と財政に対する懸念から投資家、特に海外の投資家が敬遠していたスペイン国債だが、昨日の入札者の6割は海外投資家だったとスペイン政府は述べている。

過去数年にわたるスペインの金融システムの問題は、スペイン国債の主要な投資家が国内の銀行だったことだ。この銀行と国の強いリンクはスペインの財政の悪化=国の信用低下が、銀行の信用低下に直結し、信用不安を引き起こしたことにある。スペイン国債市場に海外勢が戻ってきたことは大いに評価できる。

スペイン国債が信用力を回復した背景は欧州中銀が救済を求める国の国債市場に介入すると約束したことだ。この「プラス効果の伝播」によりポルトガル国債の2010年9月以降最低レベルまで低下している。

スペインの実体経済の回復が遅いことに懸念を示す投資家もいるが、今のところ欧州中銀は成果を上げている。

さて昨日インフレ目標を2%に引き上げた日銀。欧州の政府・中央銀行の評判は悪い。ドイツ与党幹部Meister氏は、来月来日して日本政府幹部と合う予定だが、他のG20メンバーの協力を求めながら日本に政策変更を求めると述べている。

バンクオブイングランドのキング総裁も世界的な為替安戦争を引き起こす可能性があると懸念を示している。

通貨安のみに経済成長の道を求める政策は相手国の同意を求めることが難しい。国内の構造改革、市場活性化、自由化促進などcomprehensiveは経済政策の中でデフレから脱却する過程で円安方向への是正が起きる・・というのが望ましいのだが。だが私は今の安倍政権に痛みを伴う強い改革ができるかどうかという点では懐疑的である。

スペインの本当の課題が経済の立て直しであるように、日本の課題は高齢化で縮む国内市場をいかに活性化するかということなのだが・・・・

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独連銀総裁、中銀の独立性侵害による通貨戦争を懸念

2013年01月22日 | 金融

FTによると昨日(1月21日)ドイツ連銀のワイドマン総裁はフランクフルトでの演説で、世界中の中央銀行で独立性が侵害されており、貨幣価値の切り下げによる通貨戦争が起こるリスクがあると懸念を表明した。

そしてハンガリーや日本で新政権が政府が中央銀行の管轄事項にまで踏み込み、中央銀行の自治権を終わらせようと脅迫していると警告した。

それが意図的なものであれ非意図的なものであれ、一つの結果として為替レートの政治問題化につながる可能性が高いと同総裁が警告する。

★   ★   ★

ワイドマン総裁の懸念は正しい、と私は思っている。ただし演説の中でワイドマン総裁が述べていたような中央銀行が独立性を保ちながら、低インフレが持続した1980年代や90年代のような大平穏期great moderationには中々戻らないような気がする。

その大きな要因の一つは中国など発展途上国の影響だ。発展途上国は安価な労働力を提供することで先進国の一部の仕事を侵食し、旺盛な資源・エネルギー需要で資源価格に上昇圧力を加えている。先進国がこれらの問題に対処するには、中央銀行のマンデートを拡大する必要があった。例えば米連銀は物価安定と完全雇用の達成をマンデートとしている。

だが大規模な金融資産の購入を伴う積極的な金融政策はかなりの劇薬。名医が限定的に使えば劇薬は効果的だが、使い方を誤ると体を壊してしまう。通貨価値の腐食もその弊害の一例である。

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