金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

82%の退職者が老後の生活資金に自信あり~米国の話だが

2019年04月25日 | ライフプランニングファイル

Employee Benefit Research Institute(EBRI)という非営利団体の調査によると、82%の退職者が快適な老後生活を送ることができると楽観的に考えていることが分かった。これは昨年の75%を上回り、1990年の調査開始以降で2005年と2017年に匹敵する高い水準である。

ちょっと日本の同様の調査と比較してみよう。

日本FP協会が昨年11月に発表しているレポートによると、60代で老後の暮らしに「安心している・どちらかといえば安心している」と回答した人の割合は37.5%で、70代では44%だった。大雑把にいうと日本の退職者で老後に安心している人の割合は米国の半分程度である。

現役世代については、米国で退職後の経済面の見通しに自信を持っていると回答した人は67%で昨年の64%より上昇している。また極めて自信を持っていると回答した人は23%で昨年の17%から顕著に増加した。

日本FP協会の調査では30代、40代、50代で老後の経済面の見通しに自信を持っていると回答した人は各々15%、16.5%、21%に過ぎなかった。

日本の現役で経済面で老後の生活に自信を持っていると回答した人の割合は米国の1/4~1/3程度に過ぎない。

共通点は現役世代の方が退職者よりも将来の経済面に対して自信を持っている人が少ないことだ。

これは「将来の不確実性」を反映しているからである。

EBRIによると「経済が好調で多くの人々がより貯蓄を増やすことができることが自信につながっている」と述べている。

ところで日米で老後の経済面の自信にこれほど大きな差があるのか?を推測してみた。

・第一に国民の気質の違いがある。総じて米国人は楽観的だが、日本人は将来について慎重な見方をする人が多い。少なくとも「楽観的である」ことを公表するのを憚る人が多いのではないだろうか?

 また日本では資産運用業者が株式・投信投資に消費者を誘引するため、過度に老後の資金面の不安を煽っている可能性がある。

・第二に日本では「長期雇用制度と定年制度の弊害」が顕著になっていることだ。長期雇用制度は人材の固定化につながり、ダイナミックな産業構造の変化についていくことができない。米国では年齢による差別禁止の観点から定年制度そのものがない。職業能力がある限り働き続けることが可能だ。

・第三に日本では「賃金の上昇率が低い」ことだ。リーマンショック以降日米とも企業業績は回復しているが、日本の場合勤労者の賃金は総じて低いレベルに留まっている。

・第四に資産運用環境の違いである。米国では株式相場は最高値の水準(もちろん今後急落する可能性は否定できない)。また老後資金の積み立て向けの非課税措置などが充実している。

以上のような日本の問題は歴史的な積み重ねの結果なので短期間で是正することは困難だ。

しかし我々の人生は限られている。限られた人生を自信をもって生きていくには「自分なりの長期収支見通し」を作成してフィナンシャルプランを作成することだ。また「投資」を広い範囲で考える必要もある。「投資」は株を買うことだけではない。

スキルアップや人脈拡大のための投資も有効な投資だ。また健康維持のための投資も重要な投資だし、フィジカル・メンタル面での健康を維持するための趣味への投資も重要だと私は考えている。

 

 

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ソフトバンク孫氏、ビットコインで145億円損失。ニュースの裏には?

2019年04月24日 | ニュース

ソフトバンクの孫氏がビットコイン投資で1億3千万ドル(145億円)の損失を出したというニュースが日経新聞などで流れているが、元ネタはWSJである。

145億円というと普通のサラリーマン40~50名の生涯賃金に匹敵する額なので大変なことだが、個人資産2兆円超と言われている孫氏にとっては1%弱なので大した痛みはないのだろう。むしろWSJが述べるように「孫氏はほとんど気が付かないだろうが、この投資の失敗は彼の辛抱強くかつ予言力があるという名声を傷つける」ことの方がダメージだろう。

WSJによると、孫氏は2017年2月に買収したフォートレス・インベストメント・グループの共同経営者ブリガー氏の勧めで2017年後半にド高値でビットコインを買った。ビットコインは2017年12月中旬には2万ドルまで急騰したが、その後急落した。急落後孫氏はビットコインを売却したが145億円の損失を出した。

ソフトバンクはコメントを差し控えているが、WSJは「世界で最も洗練されたそして最も富裕な投資家の一人といえども過熱マーケットには捕まることを示している」と述べている。

まあ、このあたりは常識的なコメント。私はむしろ孫氏が素早く損切りしたことを褒めても良いのではないかと思う。人間の将来の予測には当たり外れがあるものだ。予想が外れた時に損切りできるかどうかが一流とそれ以外の分岐点なのだ。

ところでWSJの記事を読み進むとソフトバンクが買収した米国第4位の携帯電話会社スプリントの苦境が浮かびあがてくる。

先週WSJは「スプリントと第3位の携帯会社T-Mobileの合併話について米司法省が異議を唱えている」と報じている。合併は競争原理を脅かしかねないという理由だ。

合併を希望するスプリントは提出書類の中で「スプリントは非常に困難な状況にあり状況は悪化の一途である。スプリントは持続的に競争を続けられる状況にはない」と述べていた。

以下は私の全くの推測であるが、WSJの記者はスプリントの合併問題を追いかける中で孫氏のビットコイン損失問題を嗅ぎつけたのではないだろうか?

そして予知能力のあるスマートな投資家といえど仮想通貨で大きな損失を出したように携帯電話会社でも損失を出す可能性があると言いたかったのかもしれない。無論T-Mobile・スプリントの合併話がどうなるか分からない中でそのような憶測を書く訳はないが。

 

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S&P500、ナスダック高値更新

2019年04月24日 | 投資

昨日(4月23日)米国株市場は好決算を受けて好調。S&P500、ナスダックは新高値を記録した。

S&P500は昨年9月20日から146日ぶりに高値を更新し、2,933.68ポイントで引けた。

今年第1四半期の米国株パフォーマンスは過去20年で最高だった。

市場を牽引しているのは、テクノロジー・産業・一般消費財といった景気敏感銘柄だ。

これまで第1四半期決算を発表しているS&P500の100社の内8割弱の会社決算がアナリストの事前予想を上回っている。

皆ハッピーな状況なのだが、易経の「亢龍悔あり」という箴言に従えば、上り詰めた相場はいずれ下落する。

もっとも経済や株式相場は永続的なものなので下落の次には上昇がある(特に米国の場合は)から、「亢龍」の箴言は相場全体に当てはまるものではないが。

もし亢龍悔ありの箴言から何かを学ぶとすれば、昇りつめて下落した後、反発力のある強い市場にコミットするべきで、反発力のない市場にはコミットするな、ということだと私は考えている。

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FANG銘柄カムバック

2019年04月23日 | 投資

連休明けの昨日(4月22日)の米国株市場は小動き。ダウは48ポイント(0.18%)下落したがS&P500とナスダックは各々0.1%,0.22%上昇した。ナスダックが堅調だったのは、フェイスブック(1.77%上昇)、アマゾン(1.38%上昇)、アルファベット~グーグル(0.99%)とハイテク・インターネット関連が好調だったからだ。

フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルつまりFANGが再び市場を牽引する様相を見せている。

FANG銘柄は昨年の秋から年末にかけての株価急落時に9,450億ドルの時価総額を失ったが、今年に入ってその9割以上を回復している。

株式市場のセンチメント改善に伴いFANG銘柄を買い増すファンドマネージャーが増えている。

WSJによると、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが今月行ったファンドマネージャー調査で総額5,470億ドルの資産を運用する180以上のファンドマネージャーが、欧州株をショートしながら、FANG銘柄やそれに続くアリババ、バイドゥといった中国ハイテク銘柄の買いましを検討しているということだ。

ファンドマネージャーは一般的に人気沸騰銘柄を敬遠するものだが、バンク・オブ・アメリカによると、FANG銘柄に対するあローケーションは過去2年の水準に較べて低いという。

企業全体の成長速度が鈍化する中でFANGの売上予想は強い。

ゴールドマンサックスはS&P500全体の今年の売上高増加率が3%に留まるのに対し、フェイスブック・アマゾン・アルファベットは20%以上の増収が見込めるとしている。

FANGは利益率の面でも堅調だ。ゴールドマンサックスはS&P500の予想純利益率が11%に留まるのに比べ、フェイスブックは34%、アルファベットは23%の利益率が見込めると予想している。なお新規投資が先行するアマゾンの場合、利益率は今年5%から若干改善して8%に留まると予想される。

もちろんモルガン・スタンレーのようにFANGへのエクスポージャーは限定するべきだと警鐘を鳴らす専門家がいることは確かだが、WSJはあるポートフォリオ・マネージャーのIn a low-growth world,growth continues to command a premium(低成長の世界では、成長銘柄がプレミアムを集め続ける)という言葉で記事を結んでいた。

 

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「ファクトフルネスを読み進む」(4)~単純な二元論を否定する

2019年04月22日 | ライフプランニングファイル

「ファクトフルネス」を読み進めている。

週末にはバックカントリースキーに行ったりしているので進捗ははかばかしくないが、それでも6割ほど読み終えた。

この本の根底を流れるのは「単純な二元論に陥るな」という主張だ。

我々はモノゴトを二つに分けて考えることに慣れている。例えば「先進国」と「発展途上国」という具合に。

だが著者はそのような分け方はモノゴトを見誤らせるという。著者は総ての国を所得水準で4グループに分けて考察する方が良いと主張する。

どうして我々はモノゴトを二つに分けて考えるのに慣れていて、モノゴトをグラデーションの中で見ることが苦手なのだろうか?

思うにモノゴトを二つに分けて考える方が楽だからである。

「味方と敵」「男と女」「上司と部下」「金持ちと貧乏人」「善人と悪人」などだ。しかしこの中で「男と女」以外は単純に両極に分かれないものの方が多いだろう。例えば金持ちと貧乏人という極端な分け方よりも、所得階層は5分位で見る方が問題点をとらえやすい。

池波正太郎は「人は悪いことをしながら時々良いこともする」という人間のとらえ方をベースに多くの小説を書いているし、そのような見方に共感する読者も多いはずだ。

著者は「自由民主主義が国の統治制度としては最高のものだと信じているが、証拠はこの立場をサポートしない」と述べ「経済と社会の長足の発展を遂げた大部分の国は民主主義国家でなかった」「民主主義は経済成長や国民健康改善のために必要な手段ではなく、社会の目的と主張するべきだ」と述べている。

以下は筆者が述べていることではないが、一神教は二元的だと私は考えている。つまり「天国と地獄」といった両極から人を見る。

ところが多神教であるヒンドゥ教では六道輪廻で生前の行為はグラデーション的に判断される。つまり極悪人もいれば極楽に行くほどの善人ではないが、地獄に落ちるほどの悪人でもないという中間層が存在する訳だ。

モノゴトを単純に二分して考えるのは、論点を浮き彫りにする上では都合が良い。また外部に敵を作り出すことは内部(国、会社、家族などあらゆる集団)の結束を高める上で有効な手段だ。だが極端な二元論は事実認識をゆがめ、ゆがんだ事実認識があらゆる集団の進路を誤らせてきたことは歴史の教えるところである。

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