金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

どちらにしても行けなかった今年の安比高原スキー

2021年02月20日 | うんちく・小ネタ
 朝グーグルカレンダーからメールが届いた。「安比高原スキー」と。
 2月に安比高原に行くのは恒例になっていて、今年もカレンダーに登録していたのだ。
 だが今年は新型コロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言を受けて安比行きは中止していた。しかしカレンダーから予定の削除はしていなかったのだ。
 いつも一緒に安比に行く若い友人からフェイスブックに投稿があった。
 「先週の地震で東北新幹線は一部不通でどちらにしても計画を強行しようとしても無理でした」
 世の中にはどう転んでもできなかった、ということがあるようだ。
 こんな状況を説明する格言はあるのかな、とふと考え、インターネットでしらべたところ「神は人間の計らいを笑う」という諺がロシアにあるそうだ。
 正鵠を得ているとは思わないが関係のある話だと思った。
 安比に行くことができなかったのは、実のところはコロナと地震という二つの出来事が重なったということで、確率的には極めて低い事象が偶々発生したに過ぎない。
 我々は確率を頼りに生きているが、時々外れることがある。天気予報では80%晴だったのににわか雨にあったとかだ。
 80%晴ということは20%は晴以外の天気になる確率があると言っているに過ぎないのだが我々は晴る方に過大な希望を持ちすぎるのかもしれない。
 「確率的に安全性が高い」ということは「確率的に低いけれどリスクがある」といっているのと同義だが我々は前者を信じすぎるのかもしれない。

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ウォールマート平均時間給15ドルへの引き上げの意味するところ

2021年02月19日 | 投資
 昨日米国最大の雇用主ウォールマートは42.5万人の時間給労働者の平均賃金を時間給15ドルに引き上げると発表した。
 時間給15ドルというとバイデン大統領が発表している2025年までに最低時間給を現在の7.25ドルから倍の15ドルに引き上げるという提案を思い出す。
 ただしWSJはウォールマートの発表が最低時間給引き上げ支持派にも反対派にも論拠を与えるだろうと分析している。
 支持派にとっては新型コロナウイルス感染拡大の中でも企業には賃上げ余地があるという論拠を与える。一方反対派にとっては政府が最低賃金を引き上げなくても、自由市場の競争原則に委ねれば、景気が良くなると賃金は自然に上昇していくという主張に論拠を与える。
 私は米国の最低時間給は11年間7.25ドルという先進国では極めて低い水準に据え置かれているので引き上げるべきだと考えている。
 ところで実際の小売業の非監督者時間給の平均時間給は18.17ドル(米国労働省2021年1月)である。またアマゾン、ターゲット、コストコの最初の時間給は最低でも15ドルである。
 ウォールマート自体の最低時間給は11ドルで平均時間給は14ドルだから平均時間給を15ドルに引き上げるということは数字が持つイメージほど大きな話ではないかもしれない。もっとも実際の金額では約7百億円相当の人件費アップとなるので大きな話であることは間違いないが。
(1ドル×8時間×200日×42.5万人×為替レート)
超党派の議会予算局の試算では、最低賃金を15ドルに引き上げると27百万人で時間給が上昇し、90万人のアメリカ人が貧困ラインから抜け出すことができる。一方140万人が職を失うと想定されている。
 雇用の面で強く影響を受けるのは体力の乏しい中小企業だ。現在の最低時間給でやりくりしている中小企業にとって最低時間給の引き上げは死活問題になるだろう。
 最低時間給の引き上げは一方で小売業のカウンター業務の自動化を推し進めるに違いない。日本の食品スーパーではまだまだレジでオペレーターが商品をスキャンして現金を受け取る風景が一般的だ。だが数年すると世界的には牧歌的風景と揶揄される可能性がある。
 アメリカにはファックスマシーンが見たければ、スミソニアン博物館か日本に行け、という言葉があるそうだが、やがてレジ打ち風景や現金払い風景を見たければ日本に行けと言われるかもしれない。
 最低時間給の引き上げがあらゆる業務の省力化を加速し、省力化は企業規模拡大のドライビングフォースになるだろう。
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「待つのも相場」今週の米国株市場は今のところ静かだ

2021年02月18日 | 投資
 昨日(2月17日)の米国株はダウは高値を更新したが、アップルなどの売りでナスダックは値を下げ、S&P500も僅かながら値を下げた。
 全体として方向性は乏しく、投資家は株価の動向を示唆する手がかりを求めている状態だ。
 今日新規失業保険申請数が発表される。ダウ・ジョーズの事前調査では申請数は773千件で前の週より若干少ない。
 アメリカの猛烈な寒波の影響でガソリン価格が上昇し、エネルギー株が活況を呈し、反面クリーンエネルギー株が売られている。
 まあこの辺りは私は長期的トレンドから見るとノイズのようなものではないか?と考えている。
 相場の格言に「待つのも相場」という言葉があるが、誰で彼でも待つだけで成果を得られるという意味ではないだろう。
 多くのノイズの中から中長期的な相場の方向感を嗅ぎ分ける力を持っているものにとって「待つのも相場」だと私は考えている。
 

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"FIER"に対する”汽水域”(セミリタイアメント)という考え方

2021年02月18日 | ライフプランニングファイル
 今書いている途中の「ライフプラン本」は、シニア層やこれからシニアになる人の色々な不安を軽減し、豊かな人生を設計するための手助けになることを目指して書いている。
 主に想定している読者は50代後半から70歳未満のオフィスワーカーだ。
 それより若い人にはもっと選択肢がある。またこれより年を取っている人は既に多くの困難を乗り越えられているのでアドバイスはあまり必要ないかもしれない。
 オフィスワーカーはサラリーマンといった方がピンとくるかもしれないが、これは男性名詞の和製英語なので「勤め人」という意味でオフィスワーカーとした。
 オフィスワーカーについては政府の昨今の流れを見ると70歳まで働きなさいという要望が高まっている。一方世界に目をやるとアメリカなどでは1,2年前からFIRE Financial Independence Retire Earlyという言葉が40歳位の人の一部で流行っている。
これは40歳位までに食べていくのに困らない資産を形成して早めに退職して自由に生きるという生き方だ。
 Retire Earlyに人生の最大の目標にする点について私は多少異見がある。
もし仕事を辞めて全力を挙げて取り組まなければならない目標があるのであれば、早期に仕事を辞めることは良いことだと思う。
 しかし「のんびりしたい」「毎日会社に行くのは嫌だ」ということで完全に仕事を辞めてしまうのはいかがなものか?と私は思う。
 というのはコロナで在宅勤務をされて感じられた人も多いと思うが、会社は仕事をするだけの場所ではない。仲間たちと一緒に仕事をし、意見を交換する中で我々の社会的欲求は満たされるからだ。
 仕事を通じて収入があるということは、Financial Independence経済的独立性を支え、仕事を通じて多少なりとも社会に貢献しているという満足感は尊厳欲求を幾分か満たしてくれる。
 多くのホワイトワーカーにとって仕事以外でこの二つの欲求を同時に満たしてくれる方法はない。
 年金収入や配当収入を利用すれば、長期的な経済的独立性が維持できる場合はフルタイムで働くことはないと私は考えているし、実際そのように行動してきた。私はこれは汽水域的な生き方と呼んでいる。
 シニアになった時「やりたい仕事があれば働くことを続けるけれど、もし気に入った仕事がない場合はしばらく様子を見る」という選択肢を持てる程度の経済的独立性の確保を目指したいと思う。そのためには遅くとも50代前半から準備に取り掛からないといけないが。
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認知症患者の預金引き出し、限定的に親族も可能に~全銀協案

2021年02月17日 | ライフプランニングファイル
 今日(2月17日)日経新聞朝刊(私はネット版で読んだ)に「認知症患者の預金引き出し、代理権ない親族も 全銀協案」という記事が出ていた。
記事のポイントは次のとおりだ。
  • 全国銀行協会(全銀協)は認知症患者の預金の引き出しについては、成年後見制度の利用を「基本」としつつも、代理権がなくても「極めて限定的な対応」として、預金の代理出金を認める方向だ。
  • 全銀協は考え方を18日(明日)公表する
  • 2025年には認知症患者は700万人前後になるという推計がある。(筆者注:推計の根拠になっている2012年の認知症有病者数は462万人)
  • 今は本人の財産保護のため認知能力が低下すると預金引き出しに応じない銀行が多いが、預金を引き出したいという家族のニーズは高まっている。
  • そこで全銀協は成年後見制度など法的な代理権を持っていない親族でも「預金の引き出しが本人の利益に適合することが明らかな場合に限り」依頼に応じることにした。
  • 家族関係を示す戸籍謄本などで家族の本人確認を徹底する。
 正式なコメントは全銀協の正式発表を読んでから行いたいが、予備的に次のことをコメントしておきたい。
  • 厚生労働省が発表している「成年後見制度の現状」によると「成年後見制度」の利用者数は210,290人(内成年後見が165,211人、任意後見は2,516人)である。仮に現在の認知症の有病者数を500万人程度とすると利用率は4.2%、つまり100人に4人程度しか成年後見制度は利用されていない
  • 成年後見制度は法律により、認知症などで財産管理能力を失った人の財産を保護するための制度であるが、家庭裁判所への後見開始の申立てなど所定の手続きがありまた費用もかかる。
  • 成年後見開始の申立て動機としては預貯金等の管理・解約が圧倒的に多い。
  • 銀行側の論理を考えると「銀行は正当な債権者(預金者)に預金を払い出す」ことで預金債務を弁済することができる。逆にいうと真正な権利を有していない者に預金を払いだした場合、銀行は正当な預金者から債務不履行で訴えられる可能性がある。今回銀行協会はこの問題をどう整理したのか興味があるところだ。一般に代理については「顕名説」と「代理権説」がある。代理権説では代理権の授与が代理の成立要件だが、本件の場合代理権の授与はないので代理権説を根拠にはできない。根拠になるのは顕名説的な考え方、つまり代理人が本人のために行うという意思表示が重要な根拠となる。「本人の利益に適合することが明らかな場合に限り預金の払い出しに応じる」というのはこのことを指していると考えられる。
  • 対応する銀行の窓口は払い出しを請求してくる人の本人確認や本人との関係確認あるいは資金使途の確認等に手間取ることが多くなるだろう。
  • なお本件と直接関係はないが、インターネットバンキングが普及してきたので、本人が認知症になる前に家族に自分の銀行口座へのアクセス方法(パスワードやトークンなど)を伝え、本人が行為能力を失った後、家族が本人口座からインターネットバンキングを使って預金の引き出しを行うことは十分考えらえることだ。
  • 認知症患者の増加とインターネットバンキングの拡大は新たな問題を生み出しつつある。
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