金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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北朝鮮、リスクは原爆よりも崩壊

2006年10月11日 | 国際・政治

北朝鮮が10月9日に核実験を行なったと報道されている。正確には北朝鮮は「核実験に成功した」と報道しているが、その爆発規模が小さい(広島に落とされた原爆の数%とWSJは報じていた)ので核を取り巻く起爆用の火薬だけが爆発したのではないか等々の分析があるが真相解明には少し時間がかかる様だ。仮に北朝鮮が核実験に成功して原爆を持つことが出来たとしても、ミサイルや爆撃機を使って攻撃するにはまだ時間がかかるので軍事的に喫緊のリスクが高まった訳ではない。無論核拡散のリスクは高まったが。

この様な判断が働いたのか、核実験の当日に2.4%下落した韓国株も昨日は少し値を戻した。日本株も昨日小高く引けている。香港株は大幅上昇。つまり誰も差し迫った戦争のリスクを感じていないということになる。

では今回の核実験が招く本当のリスクは何なのだろうか?それは経済制裁の強化などで北朝鮮の金正日政権が崩壊することである。金政権が崩壊した時、朝鮮半島はどうなるのか?その時日本はどうなるのか?日本株は買いなのか?などということを研究しておくことは無駄なことではないだろう。核実験で北朝鮮崩壊のリスクは高まったと私は考えている。ウオール・ストリート・ジャーナルは「北朝鮮の隣国は崩壊の可能性を恐れている」という記事を出しているので、そのポイントを見ながら幾つかの基礎データもチェックすることにした。

  • 中国と韓国にとって北朝鮮に核が拡散するリスクよりも金政権が崩壊するリスクの方がより不安定で直接的な影響を持つので、彼等は現状維持のインセンティブを持っている。北京とソウルは北朝鮮の混乱が彼等の国民経済に重大な影響を与え、軍事的な摩擦や極東アジアのパワーバランスを予想できない方向に動かすことを恐れている。
  • 非営利団体の国際危機グループのコリアスペシャリストは「金政権の崩壊で事態は悪化する可能性が極めて高い。もっとも高い可能性は軍事政権の出現である。」と言う。軍部や他の指導層との間で内戦が起きる可能性もある。そしてそれが中国と韓国の介入を促す可能性がある。その介入が後継政権をサポートするものであれ、暴動を沈静するものであれだ。
  • 米国の軍事専門家は中国軍は北朝鮮に進攻し、緩衝地帯を築き難民が中国に流入することを防ぐと予測する。米軍のプライオリティは北朝鮮の核物質や大量破壊兵器を獲得することにある。韓国は北朝鮮と中国の反対が予想される中秩序回復を目指し米軍のサポートを受けた部隊を北朝鮮に進出させるだろう。
  • 北朝鮮が崩壊すると2百万人以上の北朝鮮人が中立地帯を越えて韓国に流入することを韓国政府は恐れている。これにより金融市場は動転し、物価が急上昇すると韓国政府は予測する。危機管理コストだけで65億ドルになると予想される。ワシントンのコリア専門家マーカス・ノーランド氏は南北朝鮮の統一の費用は最初の10年で6千億ドルになると推定している。
  • 幾人かのアナリストは南北朝鮮の統一はドイツの統一よりも困難だと主張する。というのは北朝鮮の人口は23百万人で韓国の人口48百万人に較べて相対的の数が多い。北朝鮮の交通、エネルギーシステム、工場等のインフラストラクチャーの改良には多額の資金を要する。
  • 経済問題以外の大きな問題は50年間の分裂~技術的には1953年の休戦状態が続いている状態~の結果、文化と生活様式の格差が広がっていることだ。このため北朝鮮からの亡命者は韓国での生活に適応できないという問題が起きている。中国もまた北朝鮮の崩壊に伴う難民の流入に伴う経済面と無形のコストに悩んでいる。
  • 中国と韓国の宥和策に対する批判は「北朝鮮を緩やかに変化させることは、突然の過去との断絶よりもはるかにコストがかかる」「スローなアプローチは北朝鮮の一般の人々に生活物資の欠乏と政治的抑圧が持続することを運命付ける」「現在の体制のもとでは投資を行なってもその成果は極めて少ない」というものだ。

ここでCIAのファクトブックで南北朝鮮の基礎データをチェックしておこう。まず国土面積は北朝鮮が12万平方㎞、韓国が9.8万平方㎞。人口は北朝鮮が23百万人、韓国が48.8百万人。GDPは北朝鮮が推定値400億ドル、韓国が9,653億ドルいずれも購買力平価ベース。一人当たりGDPでは北朝鮮が1,700ドル、韓国は2万ドルである。発電量は北朝鮮が187.5億kWH、韓国は3,421億kWH、固定電話は北朝鮮が98万台で韓国が2,659万台。軍事費は北朝鮮が50億ドルで韓国が210億ドルである。北朝鮮はGDPの12.5%を軍事費に充て、韓国はGDPの2.2%を軍事費に充てている。

この大まかな数字だけでも如何に北朝鮮の経済規模が小さく、インフラの整備が遅れ、軍事予算が突出しているかが分かる。又統一のための支出が両国の経済規模に較べて如何に大きいかが分かる。

さて金政権の崩壊は日本にどのような影響をもたらすのか?以下は大胆な個人的予測を述べよう。

  • 北アジアの緊張持続は、安倍政権がへまをしない限り安部政権への求心力を高める。つまり安倍政権の掲げる改革路線の推進がスムーズに進む。
  • 金政権崩壊後米国・中国・韓国等の協力がスムーズに行き、南北朝鮮の統一が進む場合は、日本は大きな無償援助を求められる可能性は高いが、車両・機械等資本財の輸出の大きなチャンスを迎える。つまり日本経済は朝鮮動乱特需の様な状態になる。その反動は怖いがこれは乗らねばならない大きな相場である。
  • 問題は金政権の崩壊後統一が簡単に進まない場合である。これは北朝鮮を米国との直接対決を避けたいと考える中国が何らかの傀儡政権を作る場合等に起きる。この場合は極東アジアに軍事的緊張が持続する可能性が高く日本経済にはプラス要因にはならない。

しかし後者のシナリオは中国にも大きなリスクをもたらす。中国は経済発展を通じて抱える問題を解決するより方法がなくなってきているはずだ。従って中国が冷静に判断する限り、条件付にせよ南北朝鮮の統一をサポートすることになる。中国は新しい国が出来るだけ中国より、少なくとも中立的であることを求めるだろう。もし中国寄りの新朝鮮が誕生した場合、日本は中国の脅威ともろに対峙することになる可能性が高まる。アメリカはこのあたりまで予測して米軍の再編を行なっていると判断する。

このような判断から生まれてくる投資判断は

  • 日本株は生産財メーカーなどコアとなる大手優良企業に傾斜しておく。
  • 韓国リスクは敬遠し、中国についてもダイレクトリスクは抑制して香港経由の間接的リスクとする。
  • 米国とEUへのリスク分散を図っておく。

という極当たり前の分散投資ということになるが、もっと緊張が高まる場合は米国債等への逃避も考えるべきかもしれない。いずれにしろ北朝鮮の動きは要注意だ。

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