金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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朝鮮半島を巡る幾つかのタブー(1)

2006年10月13日 | 国際・政治

北朝鮮が主張する「核実験の成功」以来、中国と朝鮮半島の問題に対する私の関心が高まっている。その主な理由はビジネスと投資において的確な判断を行なうため北アジアの情勢をきちんと押さえておきたいということであるがと、補完的に知識人として隣国の歴史を理解しておきたいという知的欲望もある。考えた上での投資でも成功することもあれば失敗することもあるがそれは恥ずべき程のことではない。恥ずべきことがあるとすれば、無知のまま金儲けをしたいと思うことである。

さて朝鮮半島を巡る第一のタブーは諸外国特に中国、アメリカ、韓国の間で「金正日政権の崩壊」を語ることだろう。

次のタブーは国としての朝鮮の起源である高句麗の所属を議論することだろう。そしてその次が「朝鮮動乱」の発生原因を明らかにし、北朝鮮と中国の貸借を明らかにすることだろう。最後のタブーについてはユン・チアンの「誰も書かなかった毛沢東」が極めて斬新な見方を示しているので次回紹介することにして、2つの点について調べてみよう。

さて第一のタブー「金正日政権の崩壊」についてである。中国は「北朝鮮をどう扱うか」というアメリカとの討議の中で、強調していることは北朝鮮の政権交代を語ることはタブーということだ。もしこのような話が北朝鮮に漏れると中国に対する信頼と対話による解決の可能性は破壊されると中国は懸念している。

しかしこの点についてエコノミスト誌は10月12日に「現在討議されている制裁が金政権の妥当を目指すものであるにしろないにしろ、金政権はいずれにしろ崩壊するかもしれない。もっとも信頼できる統計データなしに確かなことは言えないが」と言っている。その根拠は非営利団体の国際危機グループは昨年の豊作で現在食料の供給は安定しているが、予測可能な将来において北朝鮮が穀物を自給することはできないと強調する。外国からの食料援助の半分は中国と韓国から来ているが今は恐らく減少していると思われる。北朝鮮が経済的に崩壊すると内戦が起きる可能性すらある。

中国と韓国が金政権の崩壊を恐れる理由の内共通するものは「難民の流出」と「現在享受している経済的権益の保持」であろう。中国は鉱物資源確保のため北朝鮮への投資に熱心であり、中国のメディアによれば鉄鉱石の鉱山開発のために8億8千万ドルの投資が提案されたということだ。

一方崩壊を恐れる理由の内異なるものは次のことだ。中国と韓国の間はここ数年急速に改善され、韓国は日本に次ぐ中国への直接投資国(シェア8.5%強)になっている。しかし中国は「統一朝鮮」は扱いにくい相手だろうと悩んでいる。一方多くの韓国人は中国が日本に対する緩衝地帯として朝鮮半島を占拠しようとしているのではないかと懸念している。

ここで第二のタブー、高句麗の起源の問題が出てくる。高句麗(英語ではKogoryoまたはGoguryeo)は伝承では紀元前37年から668年にかけて満州から朝鮮半島北部に存在した王国で新羅・百済とともに三韓時代を形成していた。因みにKoriaの語源がKogoryoから来るという説もある。この高句麗を朝鮮では朝鮮国の前身と考えているし、中国も伝統的には朝鮮の一部と見なしてきた。しかし最近になって中国は「高句麗は自国内の少数民族で高句麗史は中国史の一部」というプロジェクトを進めている。このことは中国が朝鮮半島の北部に対する野心を持っているのではないかという懸念を高めている。

エコノミスト誌によれば10月13日に盧武鉉大統領が北京を訪問するそうだが、この古代王国の件もテーマになっているということだ。

以上の様なことを見るだけでも、金政権の崩壊が大変な混乱を朝鮮半島と中国にもたらすことは予想できる。しかし金政権を放置しておいて段階的に北朝鮮の経済復興を図るということはもはや不可能な状態になったきたのではないだろうか?私はどこかでアメリカと中国が秘密会議を持ち、金政権崩壊後の体制について合意を進める時が近づいていると考えている。その時までに日本はもう少し隣国のことを勉強しておくべきだろう。

コメント
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