金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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MBO、日本で急拡大

2006年10月26日 | 社会・経済

日本人の一つの面白いところに、外国人からハッパをかけられると遮二無二走り出し、後で気が付くとハッパをかけた外国人より前を走っているということがある。ブロードバンドもその例だ。5,6年前日本のブロードバンド環境は先進国に劣り料金も高いといわれていたが、その後のADSL更に光ファイバーの普及で今や世界で最も安くブロードバンドを利用できる様になったのではないだろうか?

さて企業経営の世界にもこの法則が当てはまるかもしれない。それは日本で急速にMBO(Management Buy Out)が盛んになっているという話だ。ウオール・ストリート・ジャーナル紙によれば今年日本で53件のMBOがありその金額は32億ドル相当である(トムソンファイナンシャル調べ。ただし金額に買収会社の借金は含まず)。これは昨年の33%増で2001年の6倍以上の数字である。勿論これは同時期の米国の112件630億ドルに較べると小さいが、ドイツの33件59百万ドルなどよりははるかに大きい。

日本では企業は株式上場を望んでいたので、MBOは比較的新しい手法であるが、経営者達は敵対的買収やものを言う株主の増加につれて株式公開のメリットを再考している。(つまりこの問題についても過去の常識は急速に陳腐化している)

ウオール・ストリート・ジャーナル紙はスカイラークとクレーンメーカー・キトーの二つの例をやや詳しく紹介している。

  • スカイラークは若年層の減少のため、純収入は1999年から昨年の間に121百万ドルから57百万ドルに減少した。昨年秋同社の株価は過去3年で底値をつけていた。
  • 150の不採算店を閉鎖して高級店化するためのリストラを計画した同社の横川社長は5万人の株主がリストラ実施の2年間を待てない株主のことを悩み、MBO専門家達と相談して今年6月にテンダーオファーを行ない、上場を廃止した。この時株式パートナーになったのが、ロンドンのCVCキャピタルパートナーや野村・プリンシパル・ファイナンスだ。前者はスカイラークの35%、後者は6%の株式を保有し、残りは経営陣や従業員が保有している。
  • キトーは2003年にカーライルグループを頼りMBOを実施した。カーライルはキトーの9割の株式を保有している。カーライルはコアビジネスのクレーンに集中することを急がせ、遊休不動産や不採算の倉庫を売却させた。これによりキトーのオペレーティングキャッシュフローは2倍になった。カーライルは他の6社にも投資している。

冒頭の議論を繰り返すならば、日本人は欧米人にハッパをかけられ、やれ「敵対的買収だ」「防衛のためのMBOだ」などといっている内にいつの間にか米国の次の買収・合併王国になっているのかもしれない。しかしその時一番ハッピーになっているのは誰だろうか?買収を仕掛けたファンドや仕掛け人の投資銀行だけがハッピーということでなければ良いのだが・・・と危惧する次第である。日本の会社や従業員もハッピーなウィン・ウィンの関係を築けると良いのだが。

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