先般自民党の中川昭一政調会長が「核保有の議論があっても良い」という発言をした。もっともその後内外の激しい批判を受け、事実上発言を撤回したが。私がここで批判したいことは核保有の議論の是非ではなく、国防の要は情報・諜報活動であるということの認識が政府・自民党・マスコミ等に全く欠如していることである。「北朝鮮が核実験をしたので、日本も核武装を」というのでは、全く第二次大戦前と同じである。そこには日本が第二次大戦で敗北した手痛い経験が全く生かされていない。日本が第二次大戦で負けたのは、何よりも基本的な情報・諜報活動がなかったからである。今日本に必要なことはまず諜報活動を強化するということなのだが、もし政府与党の幹部にこの認識が欠けているなら全くリーダーの器でない。
二千五百年前に孫子はこう喝破している。「爵禄百金を愛(おし)しみて敵の情を知らざるものは、不仁の至りなり、人の将にあらざるなり。主の佐(たすけ)にあらざるなり、勝の主にあらざるなり。」
さて17日のウオール・ストリート・ジャーナルは北朝鮮の再度の核実験の可能性について次の様に報じている。
- アジアを取り巻く諸国の軍事情報機関や外交官は米国のライス国務長官がアジアを訪問して北朝鮮への制裁強化を討議するのに合わせて、更なる核実験を行なうのではないかと見守っている。
- 米国政府は衛星写真から北朝鮮のトラックの動きやその他の動きから、再度の核実験の準備が行なわれている可能性が高いと報じた。
- 幾つかの近隣諸国の政府代表は、米国がその諜報レポートを提供したと述べた。
諜報活動とは政治的・軍事的目的で相手国の情報を収集して分析する一連の活動である。諜報活動というと、スパイを使った秘密情報の収集というイメージが強いが米国の諜報機関は「有効な情報の8割は公開情報にある」と喝破する。例えば上の例でライス国務長官がアジア諸国を訪問するというのは公開情報であり、衛星写真で北朝鮮のトラックの動きを捉えるのはスパイ活動(より専門的にはIMINT: Imargery Source Intelligence)で得られた秘密情報である。
この秘密情報と公開情報を組み合わせて分析することで、ライス長官の活動を妨害しようとするのではないかという北朝鮮の動きがシナリオとして見えてくる。
つまり諜報活動とは公開情報と秘密情報を組み合わせて、相手国の行動シナリオを想定するという活動でありこれが日本に欠けているということだ。日本人は核武装にしろ、防衛ミサエルにしろハード面の武器を偏重する傾向があるが、相手国の分析が不得手だ。識者やマスコミはもっと警鐘を鳴らすべきであろう。