金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ディールで勝つにはまず金だろうね

2006年11月09日 | 金融

ある業界紙に「日本は何故金融でアメリカに勝てないのか?」ということを数度に分けて論じてきた。特定の読者層を対象として雑誌なので、やや婉曲な言い方をとっているがずばっと一番の核心をいうと「役職員への報酬が違う」という点だ。特に投資銀行というのは桁外れた報酬を払う。これは戦国時代でいうと豊臣秀吉が戦陣で金貨銀貨を積上げて、手柄を立てたものに目の前で配ったのと同じ方法だ。戦国武士へのインセンティブは恩賞だけではないが、恩賞が最も分かりやすいモチベーションの高め方であることは事実だろう。秀吉の日本統一は気前の良い恩賞の賜物である。

さて11月7日付のウオール・ストリート・ジャーナルは以下の様な記事で投資銀行のボーナスが上がったことを報じていた。

  • 株価が高値新記録を更新し、企業業績も好調なので投資銀行の利益は過去6年で最高になった。これは投資銀行業務のバンカーやトレーダーが前年より10%から20%高い年末のボーナスを受取ることを意味する。
  • ゴールドマン、メリル、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザース、ベア・スターンズの5つの投資銀行の純利益はこの9ヶ月間で34%増加している。伝統的に投資銀行は純利益の半分を報酬として支払ってきたが、近年コスト抑制を図る企業も出てきたので企業収益の伸びに報酬はついていっていない。また従業員数が増えているので一人当たりの報酬増加額は企業収益ほどには伸びない訳だ。
  • 典型的なインベストメント・バンカーの年収は次のとおりだ。

   投資銀行部門の全世界のトップ:1千万ドルから1.2千万ドル、投資銀行部門の部門長(MD):2.2百万ドルから3.8百万ドル、投資銀行部門の新人アナリスト:13万ドルから15万ドル

1.2千万ドルというと約15億円だ。中々のものである。なお地理的にはアジア地区のボーナスの伸びが一番で欧州、米国の順。つまりM&Aなどの増加率が高い地域程報酬も高くなっている訳だ。

日本でも野村證券やみずほコーポ銀行などが、M&Aに力をいれてそれなりにディールを取っている。しかし彼等のバンカー(M&Aのオフィサー)はこれ程高い報酬は得ていないはずだ。だから優秀なバンカーは嫌気がさして米系の投資銀行に移るのである。

金融も野球などスポーツと同様グローバルな企業がグローバルに人材を採用する時代である。日本の金融機関の内部でだけ通用する理屈で、優秀なバンカーの報酬を押さえる様なことをしていると競争に勝てる訳がない。結局それは高いディールの報酬を外資に渡し、彼等を喜ばせるだけのことである。

ここは大盤振る舞いの秀吉スタイルが必要なのだろう。

コメント
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